岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/01/23
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2019/01/06配信「【風の谷のナウシカ】巨神兵の強さの秘密、風使いとは何かなど、風の谷の歴史や地理をふまえて大考察!」の内容をご紹介します。
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2019/01/06の内容一覧
- 『風の谷のナウシカ』を語る
- 絵だけで世界観をわからせるアバンタイトル
- 「蟲除けの塔」から見て取れる時代背景
- 石器時代にまで退化してしまった文明
- なぜ、あえて過酷な環境に身を置くのか?
- 先人達の血と汗によって作られた「砂退けの棚」
- 風の谷は何世代も掛けて作り上げた宝石のような土地
- 風の谷の風景に、自然に出来たものは何一つない
- 幻の王蟲のセル
- 風の谷の風車に込められた「風使い」のイメージ
- 風の谷周辺の全景図
- 現代から『ナウシカ』に至る本当の歴史とは?
- 戦闘タイプの巨神兵
- 本当は10倍怖い『ナウシカ』の裏テーマ
「蟲除けの塔」から見て取れる時代背景
では、ブラナウシカ、まず第1のポイントですね。
アバンタイトルの中に「王蟲が出てきて大暴れして、襲われていたユパをナウシカが救う」というシーンがあるんですけども。……ここら辺は、もう皆さんも本編を見たと思うので、それぞれの脳内で再生してください。
王蟲に襲われていたユパは、かつての教え子・ナウシカに救われます。メーヴェに乗ったナウシカから「あっちの砂丘の上で集合!」と合図されたユパは、ナウシカの成長に驚きます。「あれはナウシカだったのか」と最初はわからなかったわけですね。驚きながらも砂丘の上に登ります。
すると、そこには奇妙な塔がたくさん立っています。これが、ブラナウシカ第1のポイント「蟲除けの塔」ですね。
ユパが登っていくと、砂丘の上に石造りの塔が立っていて、そこには奇妙な風車がとりつけてあり、ブーンという音が立てています。
(パネルを見せる)
これは、絵コンテによると「蟲除けの塔」というもので「風で風車が回転すると、蟲にとって嫌な音が発生する」というふうに書いてあります。
わかりにくいんですけど、風車の羽の真ん中に小さい穴が開いてるんですね。この羽が回転することによって、穴の中を空気が通って、ナウシカが持っている「蟲笛」みたいに、低周波の音が出る。これが蟲が嫌がる音らしいんですよ。
つまり、「腐海から風の谷に飛んでくる蟲を防ぐためにこの塔がある」という設定になっています。
まあ、いわゆるモスキートガードみたいなもんですね。なんか、乾電池1本で超音波を出して虫を寄せ付けないようにするモスキートガードという商品があるんですけど、あんな感じのものだと思ってください。
蟲除けというだけでも、まあ、結構、大変な仕掛けなんですけど。僕が思うに、この塔の役割はもう1つあって「風の強さや方向を示す」というのもあるんじゃないかな、と。
風の谷という場所がなんで存在できているのかというと、海の方向から拭き上げてくる風が、腐海から飛んでくる胞子や瘴気、つまり猛毒から、住んでいる人を守っているからなんですね。
つまり、風というのがすべてなんですよ。その風が止まったり、もしくは逆に吹いたら、すぐに村は滅びてしまうわけですね。
これについて、宮崎駿自身も「もちろん、風は時々違う方向から吹くことはあるので、それなりに生き残る術も仕掛けも彼らは考えてます」と書いているんですけど、それが具体的にどういうことなのかは説明してくれてないんですね。
だから、僕らは、この見せられてる材料の中から「もし、風の谷の風が逆流したら、どうやって彼らは生き残ろうとするんだろう?」ということを読み取る必要があるわけです。
その1つが、この蟲除けの塔なんですけど。
いくつか立っている蟲除けの塔には、ギアボックスみたいなものが付いているやつがあるんですね。つまり、風車の回転数が変わったら、すぐにわかる仕掛けになっているんですよ。
おそらく、風向きとか風速とが変わったりすると、蟲除けの音ではなくて、別の音を発する。もしくは、蟲除けの音を発しながらも別のカチカチいう音とか、もっと高い音とかを出して、風の谷にいる耳がいい人に知らせるような機能もあったんじゃないかというふうに、僕は考えています。
これは、あくまでも僕の想像なんですけども、こういう想像をまじえつつ、「宮崎駿が何を描こうとしてたのか?」というふうに風の谷の世界を読み解いていくというのが「ブラナウシカ」なんですね。
この「蟲除けの塔」という機能自体は、絵コンテに書いてある設定です。「その他にも、風の方向がわかるような仕掛けがあったんじゃないか?」というのは、僕の想像です。
次に、ここからは画面からの読み取りです。
この塔は石で出来てるんですよ。
なぜかというと、さっき「この砂みたいに見えるものは、実は砂ではない。これは錆とセラミック片だ」と説明しました。この世界には、すでに鉄なんてものは存在しないんです。
これを、宮崎駿は映画を作ってる最中に高畑勲に話してるんですよね。「この世界の砂に見えるというのは、すべてセラミックの欠片であって、もう普通の砂とか土というのは存在しない」って語ったんです。
すると、高畑勲はすごく面白がって、「ああ、そういう世界で生きている人の話なんだ! それ、すごいよ! ちゃんと描いた方がいいよ! その方がちゃんとSFになるし、そういう中で生き抜いている人達の力強さを描くというのは、意味があることだと思う!」って、大喜びで言ったんですよ。
だけど、宮崎駿は「そんなの描いてる暇ないよ。だって、2時間しかないじゃん」って言ったもんだから、もう、2人で大喧嘩になったそうなんですよね。
高畑勲は「頭の中だけで設定しても意味がないだろ! そうじゃなくて、考えたんだったらそれを描けよ!」と言ったんですけど、宮崎駿は「いや、それをやってると何も描けなくなるよ!」と。
つまり、後に『おもひでポロポロ』で、綿の花を作るプロセスを延々と描くことになった高畑勲と、「あんなの描いても仕方ない!」と怒り出す宮崎駿の差というのが、もうこの時から現れてきているわけですね。
そういった日常のディティール、「その世界に何があって、どうやって生きているのか?」というのを、まず描くべきだ。そのためには、見た目の面白さがなくなってしまうのも致し方なし、と高畑勲は考えるんですけど。
でも、『ルパン三世カリオストロの城』という、面白さの塊みたいな映画を作ったにも関わらず、その映画がコケちゃって、何年間も干されていてた宮崎駿としては、「ちょっと待ってくれ! これは俺にとって最後のチャンスなんだ! ちゃんと当てなきゃいけないんだから、面白いお話を展開させなきゃ!」という思いがあったんです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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