岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/01/17
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この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』から、一部抜粋してお届けします。
「特別」の追求には無理がある
今、「地方創生」というキャッチフレーズで、「街おこし」が盛んに行われています。その街独自の「萌えキャラ」を作ってみたり、イベントを開催したりして、「これが地方創生です!」と言うところが多いのですが、僕にはどうも違和感があるんです。
「地方」や「田舎」、「ふるさと」の一番のバリューは、「平凡だけど、自分にとっては大事」ということのはず。どうして、みんながみんな、ほかと違う「オンリーワン」を目指さないといけないのか。「どこにでもあるつまらないところだけど、自分が生まれた街」というだけでいいじゃないですか。
あなたが付き合っている彼氏や彼女は、必ずしも特別な才能を持った人ではなかったりするでしょう。だけど、「平凡だけど、私はこの人が嫌いじゃない。2年くらい付き合っているから、もうこの人でいいや」と結婚するケースがほとんどのはず。当たり前のはずなのに、あたかもそれが「諦め」と受け取られてしまう。
みんながオンリーワンを求めると大変です。
「特別に美人/イケメンだ」
「特別に年収が多い」
「特別に個性がある」
「特別な何かを持っている」
わかりやすい「特別」はオンリーワンでも何でもなくて、たんなる指標です。一番安い商品をウォルマートやアマゾンで買うのと、実は何も変わらない。
そういう単純な指標だけを目指してしまうと、ウォルマートに負けて潰れた商店だらけに
なるのと同じように、僕たちはますます生きづらくなってしまう。
じゃあどうすればいいのか?
「貧乏」を受け入れて、「安い」、「便利」以外の価値を探すのは、1つの解になるでしょう。
参考になるのは、江戸時代です。『逝きし世の面影』(渡辺京二著、2005年、平凡社)などを読むと、江戸の街はなかなか豊かだったようです。物質的には恵まれているとは言えな いし、失業率も、8割くらいとすごく高いんだけど、庶民はそれなりに楽しく生きていたんです。
たいていはその日暮らしをしていて、何かあったら適当に仕事をでっち上げたりする。近くで子供が生まれたと聞いたら出向いていって、祝いの歌を歌ったり、めでたい神様を描いた衣装を着て「おめでとうございます!」と場を盛り上げる。周りの人も家の人も喜んで、酒手、チップを弾んでくれ、そこで稼いだらしばらくは働かない。そんな生き方をしている人がけっこういたようです。貧乏ではあるけど、「貧困」ではない。田舎では無理にしても、都会であれば貧乏でも心豊かに暮らすことができました。
10年後、東京オリンピックも終わった日本は、今よりもさらに格差が明確になっているはずです。アマゾンなどのネットサービスももっと便利になって、それによって潰れる商店街や荒廃していく地方都市が増えていくのはしょうがない。便利な都市に人が集中して、そこでの貧富の格差もはっきり目に見えるようになっていく。
この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』からお届けしました。
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