岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/10/24

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/10/07配信「ガイナックスの処女作&岡田の初プロデュース作品『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を「異世界間構築」の視点で語る!」の内容をご紹介します。
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2018/10/07の内容一覧


「時間の厚み」を足す

 と、まあ、ここまでは、いわゆる「普通のこと」なんですよ。
 さっき紹介した『リゼロ』にしても、他所のファンタジー系作品でも大体やってる、いわゆる異世界モノを作る際の普通のやり方なんですね。
 さっき「『王立』では「完璧な異世界」を作ろうとした」と言いました。では、完璧な異世界というのは、これら普通のやり方と何が違うのかというと、ここにさらに「時間の厚み」というのを足したんです。

 では、時間の厚みとは何か?
(パネルを見せる)
 これは、さっき紹介した文字や数字が、その形になる前の原型の紋章です。
 例えば、「三匹のサンショウウオ」とか、もしくは「彗星」とか、こういうマークまで考えたんです。この他に「神殿を作る場所を教えてくれた蟹」みたいなものもあります。
 「このような、言い伝えや伝承に由来する紋章が、それぞれの文字の原型になっている」と。こういった由来を、ほとんどすべての文字に対して考えたわけです。
 つまり、これらの文字には「もともとは象形文字だったものが簡略化されて筆文字になって、その筆文字を更に簡単に書きやすくするために活字になった」という歴史があるんです。
 なぜ、筆文字を活字にする必要があるのかというと、筆文字というのは「タッチ」とか「線の伸び」とか「太さの差」があるので、あまり印刷に向いていない。こういうものを印刷しようとすると高く付くんですね。なので、楽に活版印刷に載るように活字化されたんです。

 『王立』に登場する異世界文字には、こうやって歴史性という厚みを加えています。
 この世界の貴族たちは、こういった活字を「庶民の文字」として軽蔑していて、あくまで手書きの筆文字、または象形文字そのものを読み書きすることを好んでいる、と。
 こんなふうに「身分差」というのが発生して、彼らの階級文化というのが生まれていると設定しました。

 こういった「異世界を構成する設定の1つ1つに歴史性の厚みを加える」というのが、この作品全体に共通するルールなんです。

 例えば、『王立宇宙軍』に登場する戦闘機がありますね。こういうやつです。
(パネルを見せる)
 この飛行機のパイロットたちは、ほぼ全員「貴族階級」です。
 貴族階級なので、彼らは「18世紀までの貴族たちが戦争に参加する時は、鎧とか馬は、全部自前で用意した」というのと同じく、この戦闘機も全部、自前で買っているんです。
 なので、尾翼とか腹に、自分たちの「花押」が描いてある。花押というのは中世貴族のサインみたいなものです。

 これですね。王国側の戦闘機には腹側に花押が描いてあります。
(パネルを見せる)
 なぜ、腹に花押が描いてあるのかというと、彼らは「いつも敵の上空を飛ぶ」ということを是としており、そこに「俺の名を見たら、お前らはすぐに逃げろ!」というメッセージを込めているからです。だから、腹の側のみに識別の花押を書いてるんですね。

 それに対して、共和国側の戦闘機も尾翼に花押を描いてるんですけど。
(パネルを見せる)
 ところが、共和国側の戦闘機に乗るのは貴族だけじゃないんですね。
 共和国というのは、いち早く産業革命に成功した国です。主人公のシロツグがいる王国というのは、そうではなくて、あくまで2番手3番手の国で、いわゆる19世紀のドイツみたいな国なんですね。そして、この王国を襲っている共和国というのは、アメリカみたいな国だと思ってください。
 そんな合理化に成功した共和国では、もちろん、貴族以外も戦闘機に乗るんですよ。

 なので、貴族が乗る戦闘機には、尾翼にちゃんと花押が描いてあるんですが、貴族以外が乗る戦闘機の尾翼には、このように共通のマークが描いてあります。
(パネルを見せる)
 このマークは「官給品」ということですね。国が支給してくれた戦闘機という意味です。
 「まあ、成績優秀だからパイロットになれたんだけど、お前らには尾翼に描くようなエンブレムはないから、国や部隊の共通のマークを描いておけ」というふうに言われてるんですね。

 文字というのは、まず最初に、言い伝えを図案化した紋章があり、その紋章から象形文字が生まれて、その象形文字から毛筆文字が生まれて、次に活字が生まれる、といった時代ごとの変化があります。
 これを更に応用するとどうなるのかというと。
(パネルを見せる)
 これも、八王子で展示されている資料なんですけど。『王立』に出てきた「デジタル文字」の表ですね。王立の世界の文字を、更にデジタル機器が再現するためにドットに起こされた文字です。
 ロケット発射直前の風景として「ニキシー管」という真空管の中に細いネオンが入っていて、これの一部が光ったりすることで数字を表すデジタル機器を見たことがある人もいるでしょう。こういう部分に使いました。
 あとは、白黒の丸いモニターにロケットが映ってて、発射までのカウントダウンの数字が表示されているんですけど、こういう部分での数字として、このようなデジタル数字を使っています。

 こんなふうに、異世界の文字を考える時というのは、1つの言語やパターンを作り込んだだけで安心するのは甘いんですよね。
 日本語でも、漢字、平仮名、カタカナ、数字、アルファベットと、最低でも5つのパターンがあるんです。
 僕らの言語体系では「カタカナを使って表されるものは外来語である」とか、もしくは「アルファベットそのものを使って表現すると、ネイティブなニュアンスが強めである」というような隠れた意味がありますよね。
 『王立』という映画の世界の文字というのは、こういった、言語というものが本質的に持っている「多様さ」まで含めて考えているんです。
 「1つの文字体系が千年くらいの歴史の中で、象形文字から毛筆文字、活字、さらにはデジタル文字というふうに移り変わっていった」ということを、1つの画面内、1つのシーン内で、色々なパターンで見せることで表現しようとしてるんですね。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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