岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/10/17
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/09/30配信「白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側」の内容をご紹介します。
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2018/09/30の内容一覧
- ロケットオモチャの不思議
- 夢と悪夢の両方の顔を持っている『マジンガーZ』
- ロケットの歴史は「SFの父」たちの大喧嘩から始まった
- ヴェルヌとウェルズの後継者たち
- 抜け目なくロケット開発の夢を追い続けるフォン・ブラウン
- 苦労の末にワンマン体制での宇宙開発を手に入れたコロリョフ
- 報復兵器V-2号ロケット
- ホリエモンのロケットの失敗
- 「ロケットの定番の形」となったV-2号
- 未来のイメージといえばチェッカー模様
- ロケット開発の悪魔的な側面
- 「この世の地獄」ドーラ強制収容所
- 悪魔に魂を売ったフォン・ブラウン
- フォン・ブラウンのやりたかったこと
- フルシチョフの恐怖に付け込んだコロリョフ
抜け目なくロケット開発の夢を追い続けるフォン・ブラウン
ということで、これが「白い悪魔フォン・ブラウン」です。
(雑誌を見せる。ロケットのイラストと共に笑顔のフォン・ブラウンが描かれた表紙)
これは、ドイツから米国に渡ってきて、まだ40手前くらいのフォン・ブラウン。17歳の嫁を貰って、一番活き活きしていた時代です。
ドイツ人って、子供の頃に、幼馴染同士で許嫁を作ることが多いんですよ。あとは「親が決める」ということも多いんですけども。
フォン・ブラウン自身も、結婚が決まったのは、相手が11歳の時だったそうです。その時から、熱烈なラブレターを11歳の許嫁に送り続けて、彼女が17歳になった時、アメリカに呼んで結婚したそうです。
その頃にはフォン・ブラウンも40歳近かったんですけども。まあ「そういう民族だ」と言われれば、そうなんでしょう。
これが、一番イケイケだった時代の、僕が「白い悪魔」と呼んでいるフォン・ブラウンです。
フォン・ブラウンというのは、ロケット界のビル・ゲイツでもありました。
ビル・ゲイツというのは、AppleとかIBMとかと手を組むことすら恐れない男だったんですよ。
本来、マイコンとか、マイクロコンピューターをやってた人というのは、IBMに対して、恐れたり反発したりしていたんですけども、そういうところと手を組むのも恐れない。ライバルのAppleにも、平気でOSを提供する。目的のためには手段を選ばない男。それがビル・ゲイツなんですけど。
フォン・ブラウンも、それと同じなんですよね。
ドイツ宇宙旅行協会のメンバーが大反対する中、1人でナチス党に入って、強制収容所から集めた「痩せこけた奴隷たち」、ポーランド人とか、ソ連の捕虜の兵隊をかき集めて、一年中、日の当たらない洞窟の中で働かせました。
そんなふうに、もう何万人も殺して、V-2号ロケットを作ったんです。
まさに、目的のためには手段を選ばない白い悪魔、フォン・ブラウンです。
彼は、第二次大戦でドイツが降伏する前から、すでにアメリカに亡命する計画を立てて、「ドイツはもう負けるから、みんなでアメリカに亡命しようよ!」と、同僚を説得してたんです。
それも、ただの逃亡ではないんですよ。自分たちをアメリカに最大限高く売るために、ロケットの完成品数十台と、組み立て済みの部品すべて。さらには図面とか実験データの写し、などなど。それら、列車の貨車にして200台とか500台分と言われてる研究成果をすべて持ち逃げしたんです。
この辺りの戦略家ぶりというのも、ビル・ゲイツっぽいと思います。
まあ、結局「捕虜」としてアメリカに輸送されることになったんですけど。
その後も「俺達は科学者だ! 捕虜じゃない! ロケットを作らせろ!」と抗議するものの、聞き入れられず、「お前らには、もう用はない」と言われて、ホワイトサンズという砂漠地帯の中で冷や飯を食らわされることになるんです。
でも、そうなったらそうなったで、今度は時の人であったウォルト・ディズニーに接近して、彼のテレビ番組に出演して、自分が主役の科学番組のシリーズを作らせたんですよ。
ところが、最初のうちは、みんなから「ナチ野郎!」とか「この人殺し!」と言われました。
そして、この時に「俺はロケットを作りたかっただけだ! そのためなら悪魔とだって契約してやる!」と発言して大炎上したんですよ。すごいオッサンですよね(笑)。
当時のアメリカの有名人だった、ハーバード大学の教授でユダヤ人のトム・レーラーという人がいたんですけど。彼はピアノを弾き語りしながらのパロディソングを作ることで人気だったんですね。
どれくらい炎上していたのかというと、そのトム・レーラーが歌った『ヴェルナー・フォン・ブラウンの歌』というパロディソングが大ヒットしたくらいなんですよ。
「ナチスの殺し屋フォン・ブラウン~♪」とか、「アメリカ人の金を山程使ってやがる。それだけの金があったら、ああ、どれだけ貧乏な子供達が学校に行って 輝く笑顔を取り戻せるだろう~♪」というリフレインが何回も入るような悪口の歌です。そもそも、歌のタイトルが個人名なんですよ(笑)。
ただ、フォン・ブラウンにとって運が良かったことに、ちょうどその頃アメリカは「赤狩り」ブームに突入したんですよ。
つまり、かつてのナチス・ドイツという憎くて怖い国民の敵よりも、もっと怖い「共産主義者」というのが出てきた。アメリカ全体でそんな共産主義者を憎むようになったんです。
そして、ついに「いや、フォン・ブラウンって、いいヤツじゃん。共産主義者を追い詰めることをやってくれてるじゃん!」とか、「ソ連に対抗してアメリカのミサイルを作ってくれるんだよな!」ということで、フォン・ブラウンに追い風が吹き始めました。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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