岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/15
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/05/20配信「特集『かぐや姫の物語』姫の犯した罪と罰~アニメ界の怪物・高畑勲が描いた世界で最も美しい怪物」の内容をご紹介します。
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2018/05/20の内容一覧
- Amazonで動画販売始めました
- 高畑勲の演出意図は、生クリームが美味しすぎて伝わらない
- 本当はエロい『かぐや姫の物語』
- 実はギャグも多い……が、スベっている
- かぐや姫の超能力「チャーム」
- かぐや姫疾走シーンの意味
- 『竹取物語』から、女の子が主役の『かぐや姫の物語』へのダイナミックな転換
- キャラに冷たい高畑演出
- 高畑勲は泣かせようと思って作ってない
- 常に「表現の革命」を求めた高畑勲
- 『かぐや姫の物語』はどんな物語だったのか
- 『かぐや姫の物語』のテーマとは?
- まとめ
かぐや姫の超能力「チャーム」
「『かぐや姫の物語』に出てくる男って、みんなクズばっかり」と言われてるんですけど、これ、違うんですよ。
原因は、かぐや姫が魅了(チャーム)というアビリティを持っていることにあるんです。そんな能力があるもんだから、周囲の男の行動とか判断のすべてを歪ませてしまうんですね。
僕が昔、小学校の頃に読んだ宇宙論の本があるんです。図書館にあった分厚い本で、当時小学校6年生だった僕にとっては難しくて全部は読めなかったんですけども。
その本に書いてあったことの中で1番面白かったのが「重力場」の説明なんですね。
「重力場とは何かというと、ゴムでできた薄い膜が教室中の高さ1mくらいの位置に張り巡らせてあると思え」と。そこにボーリングの玉をドンと置くと、その重みの分だけ、ゴムの膜はギューンとヘコむ。
では、その周りにビー玉があったらどうなるか? ビー玉は、ゴムの膜のヘコんだ部分に向かって、吸い込まれるように転がり落ちていくだろう。ビー玉を真っ直ぐに転がそうとしても、ボーリングの玉によって作られたヘコみに沿ってギューンとコースを変えることになる。「これが、重力場というものだ」と書いてあったんです。
つまり、強い力というものは、周りの物を歪ませる効果を発生させるということです。
かぐや姫もそれと同じなんですね。人間関係や、周りの人間の欲望とか決心を歪ませる。そういった強いチャームの能力を持っている。重力場を強く発してるんですよ。
でも、この能力というのはかぐや姫のせいじゃないんですよね。だから、本人にもどうしようもできないし、制御できないんです。
これ、例えて言えば「脇の下からマタタビの匂いが出てる」というのと同じなんですよね。
もし自分の脇の下からマタタビの匂いがしてしまったら、そりゃ、猫が近くによってきて、始終ニャーニャー言いますよ。で、そんなことがずっと続いたら、猫嫌いになって当たりまえですよね。「もう、猫はクズばっかり! 私の脇の下ばっかり狙ってる!」って思って当たりなんですよ。
でも、それは猫の責任でもなければ、本人の責任でもないんです。猫はマタタビの匂いには抗えない。それと同じように「基本的に、かぐや姫の魅力には人類は逆らえない」というふうに、このアニメの中では設定されてるんです。
「理性が強かったら逆らえる」とか、そんな描き方をされてないんですよ。「かぐや姫の姿を見たり、もしくは演奏している琴の音を聴いたら、チャームの魔法に掛かってしまうし、それは地上の者である以上は仕方がない」というふうに設定されています。
このチャームの能力を証明するシーンがあります。
(パネルを見せる。かぐや姫の琴の音を聞く5人の貴族のカット)
これなんですけど、5枚同じ絵が並んでいるように見えますよね。これは、開始から1時間8分55秒のカットです。DVDを持っている人は、後で確認してください。この1カット、実に20秒もの間、このまま続くんですよ。
まったく同じで、画面に動きがないように見えますが、実は動いているものがあります。何かというと―――。
(岡田、パネルにマジックで書き込みを入れる)
わかりにくいんですけど、○をした位置に「蝶々」が飛んでるんですよ。
まったく動きが無い画面の中を、蝶々がヒラヒラと飛ぶという、それだけのシーンに丸々20秒も使ってるんです。
この蝶々というのは何かというと、これ、日本の古典とかに詳しい人だったらわかる通り、『吾妻鏡』に出てくる、「あやかし」が人を化かす時の象徴的な表現なんですね。
まあ、中国の文学では、幻想、夢幻を象徴するシーンなんですけど。
吾妻鏡によると、これは「これから何か怪しい現象が起こる」という明確なサインなんです。
つまり、高畑勲監督としては、この20秒間、蝶が飛んでいるシーンを見せただけで、「この男たちは、今、魔法に掛かりましたよ」という状況を説明できたと思っちゃってるんですよ。「そんなこと、日本人だったらわかるだろ?」とばかりに。
僕なんかは「悪いけど、高畑さん、それ、無理だから」って思うんですけども(笑)。
要するに、この瞬間、5人の貴族たちは、かぐや姫のチャームの魔法に掛かっているんです。
もちろん、噂を聞いた後、かぐや姫のところへ牛車レースで行った時は、単なるスケベ心なんですよ。ところが、かぐや姫と会えるとなって、琴の音と肉声を聴いた瞬間に、彼らは魔法に掛かっちゃった。
そして、その後は、かぐや姫から押し付けられた無理難題に、ひたすら誠意を持って答え続けるハメになります。
ある者は海中を旅をしたり、ある者は命を掛けてツバメの巣を高い所から拾おうとしたり、ある者は財力のすべてを掛けて偽物を作ろうとした。偽物を作るのは、やってることはダメなんだけど、ただ、熱意だけはものすごいんですね。
なぜ、彼らがそんなに熱意を注いだのかと言うと、かぐや姫によってチャームの魔法を掛けられてしまったからなんです。いわば被害者なんですよね。
この蝶のシーンのコンテには、「ものみなくっきりと鮮やかさを増し、まるでLSDか何かの覚醒作用が働いたかのよう」という指示が、ハッキリ書いてあるんですよ。高畑さんとしては、「ある種の幻覚作用が働いている」と描いてるんです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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