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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『火垂るの墓』というタイトルの意味とは?」

2018/05/11 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/05/11

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/04/15配信「【追悼特集】本当は千倍怖い『火垂るの墓』から、高畑勲を読み解く!」の内容をご紹介します。
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2018/04/15の内容一覧

『火垂るの墓』の本当のテーマとは?

 ということで、次はパート3、「「火垂るの墓」の意味とは?」という話ですね。

 そもそも、劇中における「蛍」というのは、どういうふうに扱われているのかというと。
 清太と節子の2人が防空壕で暮らし始めた時、夜中に上空を飛行機がブーンと飛んで行くのを見つけるシーンがあります。
 その飛行機の灯りがかすかに点滅しているのを見た清太が「特攻機や」と言う。つまり、「これから相手に自殺攻撃をかける飛行機だ」と言うんです。すると、節子が「蛍みたいやね」と言うんですね。
 このように、この作品においての蛍というのは、明確に「死ぬ直前に最後の光を放つ存在」として描かれているんです。

 清太は、節子のために、何十匹もの蛍を捕まえてきて、蚊帳の中に放ちます。
 こうやって、二人が蚊帳の中に蛍を放した後、構図がロングになるシーンがあるんですけども。これがもう、すごく意地悪なんですよ。
 穴の中に2人が立っていて、その周りを蛍が飛んでるんですけども。両脇にある柱の梁が、ちょうど斜めに掛かっていて、いわゆる葬式の時に出す「遺影」のようになっているんですよね。
 こういうふうに、この作品の中では、蛍のように光を発している時には、必ず死を暗示させるような見せ方をしてるんです。

 この蛍の飛ぶ蚊帳の中で、清太は、お父さんが乗った日本海軍の連合艦隊の観艦式の様子を思い出します。
 だけど、この夜の海上で光に包まれた連合艦隊の摩耶という船は、実は、このお話の1年近く前に沈んでるんですよ。
 つまり、この作品の中で、光るものというのは、特攻機にしても、蛍にしても、連合艦隊にしても、すべて死ぬことになるんです。「死に行くものだからこそ、光り輝いて美しい」というような描かれ方をしているんですよ。

 この蛍についても、やっぱりすごいのは、その翌朝を描いちゃうとこなんですよ。
 蚊帳に蛍を放った翌朝、清太が「何してんねん?」と言うと、節子が「お墓作ってんねん」と言います。
 「お母ちゃんもお墓に入ってんねんやろ? うち、叔母ちゃんに聞いてん。お母ちゃん、もう死にはって、お墓の中に居るねんて」というふうに節子に言われた清太は、もう号泣してしまいます。このシーン、あまりのかわいそさに泣いちゃう人も多いんですけども。
 でも、これが本当にかわいそうなシーンだとしたら、なぜそこで大量の蛍の死骸なんていう絵を見せるのか?
 これ、なぜかというと、「蛍にとってみれば、この2人の兄妹も「無慈悲で不条理な存在」だ」ということを伝えるためなんですよ。
 もちろん、蛍という生き物は、光を放ち始めたら数日間で死ぬ運命なんですけども。だからといって、自分たちの慰めのために、蚊帳の中に閉じ込めて、自由を奪っていいという理由にはなりませんよね。
 そして、「蛍、かわいそうやから、逃してあげよ」なんて発想は、別に節子にもないんですよ。

 この蚊帳の中で蛍が飛んでいるシーンは、冒頭ともリンクしています。
 これは、冒頭、幽霊となった清太と節子が、電車の窓の向こうで燃える、神戸大空襲の様子を眺めているシーンですね。
 これが「火垂る」です。「火が垂れ落ちてくる」から「火垂る」と書く。
 そして、火垂るの風景を眺める2人の中にも「ツラいね、悲しいね」という思いはないんですよ。この火垂るについても、蛍と同じく「生命が燃えていて、綺麗だね」という視点で見てるんです。
 節子と清太は、蛍を蚊帳に放ち、翌日、そのお墓を作るという、美しくも残酷な遊びをしています。この作品では「人間から見た、空襲による火垂るの風景」も、「蛍から見た、自分たちを不条理に扱うこの兄妹」も、等しく「残酷で美しい」というふうに描いてるんですね。
 だからこそ、高畑勲は何回も何回も「このアニメは戦争反対がテーマではない!」と言い続けているんです。

 じゃあ、『火垂るの墓』のテーマとは、いったい何なのか? ……というのが、パート4でのお話です。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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