岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/02
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/02/04配信「今夜「オカダ書店」開店!寒い冬は本を読もう!」の内容をご紹介します。
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2018/02/04の内容一覧
- 今日は岡田書店
- 年収500万同人作家よりプレゼント
- 絵本『ノラネコぐんだんパンこうじょう』
- 貴重なアンチ宮﨑の意見『私の「ルパン三世」奮戦記』
- 『紅の豚』プラモデルの説明書
- 1見開きに1回すごいことが書いてある『サピエンス全史』
- ドイツ旅行記「アザム教会の歪んだ真珠」
- ドイツ旅行記「ミュンヘン市街のなんちゃってゴシック」
- ドイツ旅行記「本当は色鮮やかなゴシック教会」
- ドイツ旅行記「ニュルンベルグ国際玩具見本市」
- ミリタリーシリーズの出来がいいブロックおもちゃ「Cobi」
- ドイツ旅行記「ニュルンベルグ玩具博物館」
- おもちゃで世界を把握する
- 捨てられないTシャツ「コスプレみたいなTシャツ」
ドイツ旅行記「ニュルンベルグ玩具博物館」
ニュルンベルクのトイショーの話題はこれくらいなんですけども、実は、今回の旅行で、僕が一番面白かったのは、同じニュルンベルクの街にあった玩具博物館なんです。
玩具博物館というのはわりと世界中にあるんですけど、僕は、とりあえず、どこかの街に行く度に、こういった玩具博物館というのに行くことにしてるんですよ。
これまでで、一番すごいと思ったのは、イギリスにあった、チャールズ王子の持っている王立玩具博物館なんですけど。ここは鉄道模型のコレクションがなかなかすごくて、「おお!」って思ったんですけども。
今回訪れたニュルンベルクの玩具博物館も、規模は大きいし、なにより並べているものが歴史的に見ても素晴らしかったので、ちょっと紹介したいと思います。
(中略)
5階建ての建物で、これはその3階です。3階にはドールハウスを展示してあったんです。
ただ、ドールハウスといっても、これは普通のドールハウスじゃないんですよ。というか、僕らが知っているドールハウスというのは、実は「省略版」なんですね。
例えば、『借りぐらしのアリエッティ』の中に、ものすごく精密で複雑なドールハウスが出て来るじゃないですか。あれを見て、僕らは「ああ、ヨーロッパの本物のドールハウスというのは、家具もわりと大きくて、一抱えくらいあるものなんだ」っていうふうに思いますよね?
だけど、「本物」は全然違うんです。『アリエッティ』の中で描かれていたドールハウスというのは、本来のサイズの3分の1くらいのものなんですよ。本当のドールハウスっていうのは、ものすごくデカいんですよ。もう、「これがオモチャか!?」っていうくらいの、ちょっと小柄な人が使えるくらいの大きさなんですよね。
この展示場には、3つ並んでいます。左から順番に、ベッドルームと、奥様の部屋と、温室です。つまり、この3つで奥さんの居住空間というのを再現したドールハウスなんですけども。この端から端までが、だいたい2mから3mくらいあるんですね。そんな、人形劇のセットくらいのものなんですよ。
まず、端のベッドルームから見ていきましょう。ベッドルームを拡大すると、こういうふうになっています。
ベッドにも1つ1つにマットレスが入っていて、その隣には化粧台とかもあるんですけど。
(中略)
要するに、僕らが知っているドールハウスというのは、鉄道模型に例えると、プラレールみたいなものなんですよ。その上には、実はNゲージがあって、HOゲージがあって、さらにデカくて精密な鉄道模型があるじゃないですか。僕らは、そういった上のグレードのものをまったく知らずにプラレールだけを見て来たんですね。本当のドールハウスっていうのは、ここまでやるんですよ。
(中略)
これが台所です。これも、幅が1.2mくらいあるドールハウスなんですけど。中央部にストーブがあって、食器が並んでます。
この中央部のストーブは、小さく砕いた石炭を入れると、本当に火がつくんですよね。その上に置いてある鍋とかも、全部、使えるんですよ。
つまり、このドールハウスをつかってのおままごとというのは、本当に火をつけて、本当に料理をして、本当の瀬戸物のカップとか皿とかに料理を並べて、また別の、本当にデカいメインのダイニングルームに料理を運ぶところまで含めて、1つの遊びなんですよ。
頭がおかしいと思うでしょ? そうなんですよ。今回の話のメインは、「ヨーロッパの本場のドールハウスはすごいんだ!」ってことではないんです。「これがオモチャだとすると、どう考えてもおかしい。たぶん、僕らの物の見方が違うんじゃないか?」という話なんです。
この台所の隣には、使用人の部屋までがちゃんとあるんです。使用人が寝起きして、洗濯して、ミシンがけをする部屋がある。この部屋まで含めて、ドールハウスなんです。
さっきの繰り返しになりますが、これで遊んでいたのは貴族ではないんですよ。ジェントリー階級という、当時の中流よりも上の人、いわゆる会社の重役さんくらいの家だったら、どこにでもあったドールハウスなんです。そして、このドールハウスで遊ぶということは、その家の使用人の仕事を簡略化して行うということなんですね。
こういった家に生まれた子供は、普通だったら、一生、自分でベッドシーツの交換なんかしないし、自分のご飯も作らないし、学校か、もしくは家庭教師に物を習って、お茶をして、噂話をして、レース編みとか本を読んだりしながら一生を過ごすわけです。
だけど、なぜか、遊ぶ時には、徹底的にその家で働いている労働者階級がやっている仕事を、これでもかというくらい真似る。わざわざ手間を掛けて、どんどん学んでいるんですね。
これは何なのか?
こういったオモチャについて、これまでは「子供のままごと遊びというのを、徹底的に高度にしていった結果、こうなった。昔の金持ちっていうのはすごかった」と解釈していました。
だけど、今回、僕も玩具博物館で見てびっくりしたんですけど、オモチャというものは、人類の歴史の中でも、かなり古くから存在しているんです。メソポタミア文明とか、エジプト文明とか、古代マヤ文明の遺跡からも、オモチャがいっぱい出てきてるんですね。
もちろん、当時のオモチャの素材は、金属でも、ブリキでもなければ、その前の鉄でもない。木ですらない。じゃあ、何で作られていたのかというと「泥」なんですよ。泥を固めて、鳥みたいな形にして、それに棒とか紐を付けて引っ張るというようなオモチャが出てきてるんです。
こういった古代のオモチャはなんのために作られたのか? 僕らは、「もちろん、子供が遊ぶものだろ」っていうふうに考えちゃうんですよ。
ところが、現代社会で作られるオモチャというのは、実は、その生産数の半分以上が大人が遊ぶために作られているんです。でも、僕らは、こういった現状を、ついつい「現代の病んだ社会特有の現象だ」って考えてしまう。「現代社会というのは歪んでるから、みんな、大人になっても子供から抜け出せずに、オモチャで遊んでる」と見ている人が大部分だし、実際にオモチャで遊んでいる僕らも、なんとなくそう感じています。
僕の考えは違います。なぜかというと、ここまでのオモチャを子供が遊べるはずがないからです。このドールハウスは「大人が遊ぶもの」として作られたんですよ。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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