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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「LSDとドラッグカルチャーから生まれたSF映画の傑作『エイリアン』」

2017/09/25 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/09/25

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2017/09/17配信「【コヴェナント公開記念】本気でまるごと『エイリアン』大特集!!」の内容をご紹介します。
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2017/09/17の内容一覧

LSDとドラッグカルチャー

 では、『エイリアン』の話をゆっくりと始めていこうと思います。
 1979年の映画なんですけども、ごめんなさい、今日の話は、まずはその60年前の「1919年」まで遡らせてください。

 戦争が終わった翌年の1919年、その極貧のドイツで、一人の化学者が、誰も見たことのないような化学物質の精製に成功しました。
 存在自体は、それ以前から予言されていたんですけども、生成されたのは初めてです。その化学物質の名は「メスカリン」と言います。人類が初めて化学合成した幻覚剤ですね。それを摂取すると、目に見えるものが歪曲して見えて、あらゆるものが強烈な色彩に見えてグラグラし出すんですね。さらに、音に合わせて見ているものも変化するという、完全な幻覚物質です。
 ただ、これが発見された当時は「何に使えるんだ?」と。幻覚症状はあるんだけど、何に使えるのかよくわからなかったんですね。

 さて、第2次大戦が起きる1938年に、ドイツからスイスに移民した科学者アルバート・ホフマンが、メスカリンの研究の中で「LSD」を発明しました。
 そして、第2次大戦が終わった後くらいになって、ようやっとCIAが、このメスカリンやLSDに注目しはじめます。「これ、自白に使えるんじゃないか? または洗脳に使えるんじゃないか?」ということで、いろんな実験が繰り返されました。
 それと同時に、CIAが軍事やスパイ活動に使うのとは別に、「これは「平和」に使えるじゃないか?」と考えた人もいるんですね。特に、LSDは、「人類の意識を平和的な形に改造し、革命を起こす」という意味の「意識革命」という言葉が発明され、これを主張しながら、LSDやメスカリンを無料またはメチャクチャ安く配り出す団体や個人が、アメリカを中心に、世界中に山のように発生しました。
 この辺りの「薬物の存在が人類を平和に変え、それはまったくこれまでと違うものになる」ということを主張する、善意によるボランティアが一斉にいろんなことをやり出すというのは、1980年代後半から2000年代くらいまでの、いわゆる「インターネット革命」とか、シリコンバレーの感じと、ものすごく似てるんですよね。

(中略)

 その最中の1965年、フランク・ハーバードというSF作家が『デューン』という小説を発表しました。
 このデューンという小説は、遠い遠い未来に「惑星アラキス」という星で採れる「メランジ」という麻薬が元になって銀河革命が起きるという話。もう、とりあえず、「幻覚剤による意識拡張と、それによる革命運動、平和運動が起こる」という、当時の人が一番見たかったようなお話なんですね。
 後にデヴィット・リンチがすごいダメな映画を作りましたけども、その原作となった小説です。
 このデューンがアメリカ文化に与えた影響というのはものすごくデカいんですよね。
 人種差別、宇宙開発、ベトナム戦争、社会革命、幻覚剤ブームが一斉に起きて、それらが全部デューンにリンクしていたんですよ。これらの文化が、互いに影響を与え合ってるわけですね。
 さて、この時期、大学を卒業したんだけども、全然、仕事がない一人のダメ男が、南カリフォルニア大学に入ります。
 その名を「ダン・オバノン」と言います。

(中略)

 ドラッグをやりまくって、まともな仕事にもつかず、心理学とか演劇とかをやりながら、「映画作家になりたい!」と思っていたワナビーなオバノン君は、南カリフォルニア大学で2歳年下のジョン・カーペンターという映画作家と知り合いました。
 そして、その後輩のジョン・カーペンター君の卒業制作を手伝って、一緒に『ダークスター』という映画を作ったんですね。出たがりのオバノン君は、ダークスターという映画の中で、主演俳優までやります。脚本を書いて、特撮を全部やって、主演俳優もやったんですよ。
 それが、思いの外ウケて、1974年に製作費6万ドルを貰って、ちゃんとした商業映画にしたんですよ。もちろん、その商業映画バージョンも主演はダン・オバノン君ですね。こいつが相変わらず主演やってました。

 このダークスターという映画は、まさに「ドラッグカルチャーの申し子」のような映画で。
 どんな映画かというと、「地球から50光年離れた空間で、「不安定惑星」という、これから宇宙飛行の邪魔になるかもしれない惑星を、宇宙船ダークスター号が核爆弾で爆破して回る」という映画なんですよ。登場人物は4人しかいないんですけども、みんな船内でドラッグをやってるんですね。で、発射する核爆弾には、なぜか人工知能がついていて、そいつらに「行って来い」って言って発射して、爆破するというのをしてるんですけど。
 その中で、ちょっとした操作ミスがあって、人工知能が自らの存在に疑問を持ってしまったんですね。「なんで俺は発射されなければいけないのかわからない。なんで惑星を爆破しなければいけないのかわからない」というふうに言い出して、宇宙船から発射されてくれない。
 オバノン君が演じる主人公は、宇宙服を着て、ミサイルのところまで宇宙空間を歩いて行って、座り込んで、「お前は爆弾であって、道具なんだから、人の役に立たないとしょうがないだろ?」というふうに、散々、散々説得するんですね。
 そしたら、ミサイルは「うん、わかった。つまり「精神の解放」だな」なんてドラッグ野郎みたいなことを口走る。そして、「精神の解放をするのなら、今、ここで行う方が正しい。俺はこの宇宙船の中で爆発する」とか言い出したもんだから、また一生懸命、説得する……という、そんな、本当にわけがわからないSF映画なんですよ。

 この映画は、さっきも言ったように、ティモシー・リアリーとかの影響をモロに受けているドラッグ文化的な作品だったので、一部には大ウケしたんですけども、興行的には外れてしまったんですね。
 ただ、このダークスターを「すごい!」と大絶賛してくれた映画人が2人だけいたんです。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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