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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「「立ち上がる人間の強さ」を描いた『10 クローバーフィールド・レーン』」

2017/09/23 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/09/23

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2016/06/19配信「枯れていくガンダムと『10 クローバーフィールド・レーン』が面白い!」の内容をご紹介します。
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2016/06/19の内容一覧

サスペンス、ホラー、SF、ものすごく怖い『10 クローバーフィールド・レーン』

 じゃあ次は『10 クローバーフィールド・レーン』。

 『クローバーフィールド』というのはどんな映画だったのか、ですね。
 『クローバーフィールド』というのはそもそも大昔に、1999年かな、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』っていう映画があってですね。
 これがホームビデオで撮った映像が、どっかで見つかって、それはブレア・ウィッチという森の中に入った大学生がホームビデオで撮って来て、そこには恐ろしい絵が映ってたんですっていうようなお話なんですよ。
 で、『クローバーフィールド』も同じ手法で、まあ2008年の映画なんですよ、古いですよね。もう8年も前の映画なんですけども。
 映画冒頭のテロップで、本編はアメリカ国防総省が保管している記録映像である。で、秘密コード名「クローバーフィールド」というふうに出てきて、そこから始まって。
 一番最初に、コニーアイランドって、アメリカのニューヨークのブルックリンにある有名な遊園地が映るんですね。
 そこで主人公のロブっていう男のお兄さんと、ロブと彼女が、すごい幸せそうな、コニーアイランドに今から電車で行くよって。
 ニューヨークのQラインって言う地下鉄かな。
 Qラインかなんかの終点なんですけど、そこで乗って行くよっていう話をしながら、「今日は最高の1日になるね」っていうところから始まる。
 何でかっていうと、この「クローバーフィールド」というのを撮影したホームビデオ全体が、ロブが彼女と一緒にコニーアイランドに行っている時のビデオを上書きして撮っていたやつなんですね。
 消すつもりなかったんだけど、友達に渡す時に、友達がバカで、ビデオテープそこらへんにあるやつ適当に入れたら、大事な大事な恋人との映像を消しながら録画してしまったんですけど。
 なので、その映像が時々入るので、お話が進行するにつれて僕らはすごい切ない気持ちになるというストーリー展開なんですよ。

(中略)

 今回の『10 クローバーフィールド・レーン』っていうのは、この話と関係ないっちゃ関係ないんですよ。
 こっから先、何々は出てこないっていう話はネタバレになるのかな? こっからの話はどう話してもネタバレになるんですけども。

 映画、今のところ見るつもりはないから、話だけは聴いてみようという人はこのまま音声オンにしといてください。
 『10 クローバーフィールド・レーン』って本当に変な映画なんですよ。
 言っちゃえば、変態男に捕まった女の人が、逃げようとする話なんですけどね。
 ミシェルっていう女の子が主人公で、ミシェルは恋人のベンっていうのと別れる。ずーっと無言で始まるんですけども。急に家の中でガーッとトランクとかに荷物を詰めると。
 前も話したと思うんですけども、トランクに女が荷物詰めてると、それは女が別れを決意してるというのがアメリカの映像表現なんですけども。
 で、まあ荷物、詰めてる。
 指輪を外して、それをテーブルの見えるところに置いて、車に乗って夜の道をガーっと走ってると。
 そしたら横からいきなり車にガンッとぶつけられて、車がガーッとなるところで、「Paramount Pictures」って。で、さらに車がガラガラガラーッと落ちながら「10 クローバーフィールド・レーン」ってですね。
 もう字体がかっこ良くて、この始まり方だけで「なにこの映画、なにこの映画」ってドキドキするんですけども。

 ここまでが外のシーンで、あとは映画は延々、室内シーンです。
 目が覚めたミシェルは、変な部屋に閉じ込められると。で、どうもそれは核シェルターみたいなやつです。
 そこで大男の、ハワードっていうやつが出てきて、まあこのハワードが怖いんですよ。

(中略)

 『10 クローバーフィールド・レーン』の見どころは、今話したような紆余曲折の展開っていうのかな。どうなの、どうなの、どうなのっていう展開というよりも、その中で出てくる心理劇とか、ミッシェルという女の子が、追われている段階からどんなに強くなっていって。
 で、一人で立ち向かうのかっていう立ち上がり方にあるんですね。
 その意味では色んな事件があって、たとえばフロリダの銃乱射事件みたいなものがあっても、必ず強く立ち上がっていくアメリカっていうお話がすごく必要とされているんですね。
 本来それは『アベンジャーズ』とか『キャプテン・アメリカ』のシリーズがやるべきことだったんですよ。
 でも、逆に言えば『X-MEN』にしても『スパイダーマン』にしても『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ』にしても、今のスーパーヒーローものっていうのはすべて、挫折して内部で対立するスーパーヒーローたちっていう、今の国際情勢の複雑さを描くほうにかまけていて、その中で立ち上がる人間の強さっていうのを描かないんですね。
 この映画の『バットマン vs スーパーマン』の敗北の原因っていうのはそこだと思うんですよ。なんで揉めるのかに力点を置き過ぎてて、でもそこで立ち上がっていて、私たちは生き続けなければいけないっていう本来、映画が伝えなければ、とくにスーパーヒーローものは絶対に伝えなければいけないメッセージっていうのを置き去りにして、リアリティと称するディティールっていうのかな、複雑さに逃げていってしまうんですね。

 僕が安彦さんの『ガンダム』の『オリジン』シリーズに持っているイライラ感もそれで、『ガンダム』っていうのは中心で何を描くのかっていうと、ロボットとか宇宙とか、そういう環境、ニュータイプを含めて、そういうふうな環境の中でいかに一人の男の子が生きていって、周りとの関係を取り戻すかっていう話のはずなのに、そこを書かずに、いかに状況がそういう戦争を生んだのかとか、そっちのほうばっかり書いちゃう。
 それは書くのは悪くないんですよ。
 リアリティっていうのを書くのは本来悪くないんだけども、そっちばっかり書いちゃうことによって見えなくなってしまうのが問題なんですよ。
 で、『10 クローバーフィールド・レーン』っていうのの面白さっていうのは、今話したような紆余曲折ですよね。ネタバレになるからもう言いませんけども。
 紆余曲折の中でどうやって立ち上がって、立ち向かっていくのかっていうのを書いていくところが面白いんですよ。
 人間性復活した話として面白いし、ホラー映画、ミステリー映画としてもかなり良い出来だと思います。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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