岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『超時空要塞マクロス』河森正治が涙を呑んで諦めたこだわりとは？」:岡田斗司夫プレミアムブロマガ: 岡田斗司夫ゼミ・プレミアム(岡田斗司夫)

岡田斗司夫プレミアムブロマガ　2017/09/08

おはよう！　岡田斗司夫です。

今回は、2017/08/13配信「『シン・ゴジラ』2つの元ネタと、ガンダムで学ぶ科学」の内容をご紹介します。
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2017/08/13の内容一覧

『超時空要塞マクロス』のミサイルの見せ方

【全文を読む】

　『超時空要塞マクロス』の設定書って、最初、めちゃくちゃうるさいかったんだよ。
　例えば、「バルキリー」っていう戦闘機があるじゃん？　バルキリーには……みんな知ってるかなあ？　「「○」の中に斜線が引かれたようなマーク」みたいなのが、そこら中に書き込んであったのを覚えてる？　
　例えば、バルキリーっていう飛行機があったとしたら、主翼の付け根とかに、こういうマークがついてるんだよ。
　……これ、なんのためについているのかよくわからなかったので、後に出渕君がロボットのそこら中につけるようになって、以降、ロボットアニメの中でもしょっちゅうこれが描かれるようになったんだけども（笑）。
　これを初めて描いたのは河森君なんだ。

　これ、何かっていうと「ホイストポイント」っていうんだ。
　ホイストっていうのはドイツ語で「吊り下げる」っていう意味だよね。つまり、バルキリーっていうのは「飛行機」だから、翼の端っこの部分まで強度が高いわけじゃないんだ。翼の根元とか、そういうところに「構造的に強い部分」があって、そこにホイストポイントがあるんだよね。「このホイストポイントは強いので、上からチェーンをガラガラガラっと引っ掛けて、吊り上げても飛行機は壊れません」と。これをホイストポイントというんだ。
　河森君が設定したマクロスは、もう最初の内は、自分のアニメなもんだから、めちゃくちゃこういう設定にうるさくて。「バルキリーのホイストポイントはここだけですから、ここ以外の場所を掴んで動かしたりしないでください！」というふうに、まるで実機を語るかごとく言っていたんだけども。途中から、さっき言ったミサイルの時みたいに、どんどん妥協と後退を余儀なくされるようになってきて。
　まず、作画をする段階で、「実は、このバルキリーの設定通りの正確な形状をまともに描けるアニメーターが、日本国内のスタジオにすら、3人に1人もいない」というのがわかる。
　次に、スケジュールがどんどんタイトになってきて、韓国のアニメスタジオに発注するようになる。すると、韓国から納品されてきたのは……なんかもう、飛行機でもなんでもない「なにかの物質」にしか見えない絵。
　そうなると、もう、作画監督ができるのは「バルキリーっぽい模様を上から描き足して、飛行機っぽく見せる」という手段しかなくなったんだ（笑）。

　ミサイルを発射する描写についても、最初は「バルキリーには、翼のこの位置と胴体のこの位置に「ウェポンベイ」という、ミサイルとかが搭載されている部分があります」と言ってたんだ。
　だから、「なので、決して、ここ以外の、翼の端っことか、ましてや機首の部分からミサイルを撃ったりしないでください！」と散々言っていたのに、韓国から届いた絵を見ると、「とりあえず尖った所からすべてミサイルが打ち出している」感じになってきた。
　「でも、ここで怒ったってしょうがない。それだと納品できなくなる。どうしよう」と思った河森君は、「新たな設定書」を出して……これ、俺、昔、山賀と庵野に見せられて大爆笑したんだけど、「バルキリーは黒いところからすべてミサイルを出せます！」と書いてあって。
　「アハハ、河森君！　妥協した！」って（笑）。

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