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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「アメコミ映画『ウォッチメン』が描いた、グロテスクな正義」

2017/08/01 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/08/01

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2016/08/21配信「アニメ版ゴジラ・PCデポ情弱商法・SMAP解散を斬る!」の内容をご紹介します。
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2016/08/21の内容一覧

「象徴」としてのSMAP・SEALDs、「不平等の分配」という政治

 『ウォッチメン』っていうのは、1900年代のifの世界。もしもの世界の70年代から80年代の話なんだけども。スーパーヒーローが現実にいる世界なんだよね。
 そのなかに「コメディアン」と「ロールシャッハ」っていうヒーローが出てくんだ。
 両方とも、そのマンガの中では全然共感できるような正義の味方じゃないんだよね。コメディアンっていうのは「アメリカを愛してる」と言いながらも、ベトナム戦争に行ったら、ベトナムの女の子妊娠させちゃって、文句を言ったら銃で撃って殺してしまうし。
 あと映画版の冒頭ではケネディ大統領を暗殺したのはコメディアンってことになっていたりで、決して正義の味方としては描かれてないんだよ。
 もう一人のロールシャッハも、そうなんだよね。
 ロールシャッハっていうのは顔の模様がしょっちゅう変わるマスクを被ってる正義の味方なんだけども、あらゆる悪に対して厳しすぎる。もう反省して、罪を償った悪者でも、徹底的に殺すまで追求することをやめないし、「もし全ての人類がほんのちょっとずつでも悪いんなら、人類全員を殺しちゃおう」という考え方をする。
 「それくらい、悪というのは見逃してはいけない」っていう強迫観念を持った異常者として書かれてるんだ。
 なんで作者のアラン・ムーアっていう作家はこんなキャラクターを書いたのかっていうと、象徴であることの難しさを描くため。
 例えば、コメディアンっていうヒーローは、アメリカを象徴してるんだ。自分自身が。
 つまり、「アメリカっていうのはなんなのか?」っていうのを象徴しようとしてて、正しいアメリカを守るためだったら、今の大統領を殺してしまうことすらいとわないんだよな。
 ところが、それをやっているコメディアンっていうのは、同時に一人の人間でもあるので、当然、自分の中の矛盾がすごいわけだよ。アメリカというのを愛して、アメリカの正しさのためににずっと行動してるっていうのは、自分としては明らかに間違ったこともやらなきゃいけないわけだよね。
 たとえば公民権運動、「黒人を平等に扱え!」みたいなデモが起きると、それを取り締まるためにスーパーヒーローとして派遣され、ガス銃とか麻酔銃を水平撃ちして、人々を傷つけ始めるんだよね、コメディアンは。
 「笑うしかねえだろ? 面白えよな。一番の愛国者であるはずの俺が、政府から頼まれて、一般大衆に銃を向けるなんて。笑うしかねえ」って言いながら、まわりをバンバン撃って。
 それで「さあみんな、俺を笑ってくれよ! さあみんな、アメリカを笑ってくれよ!」って言いながら、彼は毎晩毎晩、浴びるように酒を飲んで、そして、だんだんと自分自身が崩れていくんだ。
 今コメントで、「正義なんて時代が変われば変わるもの」って流れたんだけど。それは僕らが象徴としての生き方なんていうことを求められてないからなんだよ。
 そうじゃなくて、「お前がアメリカの正義の代表だ!」って言われたらどういう行動するのかっていうと、たぶんある信念を持って行動して、そのあとやっぱり浴びるように酒を飲むというか、そんなことしか本当に選択肢としてないんだなあというのが、映画を見たりマンガを読んだりするとよくわかるよ。
 ロールシャッハのように、誰一人許せなくなってきて、そして「自分は、誰にも理解されなくてもいい!」という人になってしまうか。
 コメディアンのように「誰か俺を理解して欲しい」と言って、結局、スーパーヒーロー仲間である、シルクスペクターっていう女スーパーヒロインがいるんだけど、それをレイプして、子供産ませててしまうということをコメディアンはするんだけどさ。
 一人の人間に「正義」とか、さっき言ったSMAPの「カッコよさ」とか、あと天皇陛下でも同じなんだけど「日本という国の在り方」みたいなものを象徴として背負わせたら、絶対にその人達には想像もできないくらいのプレッシャーが掛かる。
 そして、そんなことを何年も続けていたら、どっかに無理が来ると思うんだ。

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