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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「中世暗黒時代の終わりと精神病院の誕生」

2017/07/07 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/07/07

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2017/06/11配信「オタク文化とゴシック建築、キリスト教の共通点を語る!」の内容をご紹介します。
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2017/06/11の内容一覧

黒死病と百年戦争

 この時に、ゴシックの終わりを告げるもう一つの事件が起きます。「黒死病と百年戦争」の始まりです。

(パネルを見せる。中世のペスト医師の図)

 これ、見たことがある人も多いと思いますけど。黒死病というのは正確にはペストと言いまして、中世で何度も猛威を振った病気です。
 13世紀にフランスに上陸して、人口の半分が死んだと言われています。村によっては3分の2以上が死んだと言われていて、これによって、ゴシック建築を建てていた熟練工のおじさんたちが死んじゃったんですね。
 それだけでなく、ヨーロッパではほぼあらゆる分野を支えてきた熟練の職人たちがみんな死んでしまって、もう一度、暗黒な中世時代に戻るかというくらい、技術というのが失われてしまった。それが黒死病です。
 これは当時のペスト医師の図です。全身コートを着て、顔にクチバシの付いたマスクを被って、杖みたいなのを持っています。これらは何のためかと言うと、このクチバシの中にラベンダーなんかの香草を入れてるんですね。実はペストというのが空気感染するというのはわかってたんですけど、その理由が「ニオイ」だと思われていたんですよ。「悪いニオイを吸うと人間は病気になる。だからラベンダーなどでより強いニオイを口に当てれば大丈夫だろう」ということで、こういうふうな形になっています。この杖はなんのためかというと、実はペスト患者を動かすためなんですね。患者を押したりひっぱったり、もしくは死体置き場に引きずったりするために、手で触らないために、こういう杖を持っているんです。
 こういう職業の人たちというのは、最初は医者がやっていたんですけども、あまりに死亡率が高く、次に逃亡率が高いので、誰でもいいから金を払ってやってもらうことになったんですけど。
 この黒死病で、熟練工が一斉に死んじゃった。

 次に百年戦争。元々はフランスの王位継承戦争だったんですけども、戦場となった北フランスの農業地帯が大打撃を受けました。
 これまでシトー派の始めた農業革命によって「ゆっくりと農産物が増え、人口もそれに連れて増える」という、生産力と人口のバランスが、百年戦争によって農地が壊滅的な打撃を受けたことにより、なんせ焼かれたりしたもんですから、決定的に狂ってしまったんですね。そのせいで、これ以後のフランス革命まで、農民達は延々と飢えに困ることになってしまいます。

 次にルネッサンスとプロテスタント。さっきも言ったように、ルネッサンスというのは現実主義の復活なので「死後に天国に行く」でなく「今、生きているこの世界を楽しむべきだ」という考え方なんですね。なので、病気や貧困というのを否定した。

 おまけに、グーテンベルクが活版印刷を発明してしまったおかげで、聖書が世の中に出回りだしたんですね。それを読むと、教会で教えていたこととあまりに違うわけですよ。
 当時の教会というのは「教会貴族」という言葉が生まれたくらい、最初はゴシック大聖堂を建てるためにお金を集めていたはずが、あまりにこれが流行りすぎて、お金が集まり過ぎて、教会の司教とか偉い人が全員貴族っぽい暮らしをするようになっていました。後に「メディチ家の者しか司教として偉くなれない」とか、完全に貴族になっていたんですね。
 それに対して、聖書が普及されて読めるようになったら、「ちょっと待てよ、書いてることと全然違うぞ!」ということになったんですね。ラテン語という、わけのわからない言葉で読まれていた聖書は、あっという間にドイツ語やフランス語に翻訳されて、ベストセラーになって、中味がバレてしまいました。
 そして、これが当時の教会勢力への批判する「ユグノー派」を生み出したわけですね。
 ユグノー派のキャッチフレーズは「信仰心のみ、聖書のみ」というものだったんですよ。この「心の中でキリストを信じる」ということと、「聖書しか信じない」ということで、カソリックを批判しました。それと同時に、彼らの象徴的なシンボルだったゴシック大聖堂というのは攻撃の対象になったんですね。
 40年に渡るユグノー戦争で、ほとんどのゴシック教会というのは戦場になるし、攻撃対象にならない場合でも、カソリック派の人たちが立てこもる砦になってしまって、結果的に戦場になってしまい、大破壊されてしまったんですね。

 ユグノー派の人たちは自分たちを「プロテスタント」と名乗って、以後、大流行。
 マルティン・ルターの教えは「キリスト教の原点に戻れ」というもので、偶像も禁止するし、過剰な祈りもいらない。毎日毎日朝から晩まで祈っているなんて、それは信じているフリをして、ただ単にそういう見せびらかしをしているだけだと批判します。
 例えば、「朝から晩まで祈るのがいい」と言われても、金持ちはいくらでも祈れるけど、貧乏人は働かないといけないから祈れない。「じゃあ、祈ってる時間が長いヤツが偉いのか? いや、そうじゃないだろう。重要なのは心の中でいかに固く信じているかだ!」とルターは論理づけて書いて、それをまたグーテンベルクの印刷機でバーっと撒いちゃったもんだから、あっという間にみんなが「そうだ! そうだ!」ということになっちゃうんですね。
 なので、なんかゴシック受難の時代になっちゃったんですよ。

 さらに、その当時のヨーロッパは偶然にも大航海時代に突入しました。
 大航海時代においては、合理的な貿易をした都市はどんどん儲かるわけですね。反対に、非合理的なことや宗教的なこと、あるいは民族タブーのようなことにこだわっている都市というのは儲からない。こうして、都市の間で経済格差がどんどんできてます。さっき紹介したフィレンツェみたいな都市というのは、誰とでも商売をするから、どんどん栄える。でも、ミラノみたいな軍事に拘っている都市というのは、軍事国家という建前があるから、なかなかお金儲けだけに走れない。そのおかげで都市間の経済格差がどんどん生まれてしまったんですね。
 この状況が「より合理的な方が偉い」という風潮を生みだして、ルネッサンスを加速させた。だからといって、キリスト教は捨てないんですよ。キリスト教の中の合理的な一面ばかりが強調されるようになって、これが後に科学というのを生み出すんですね。
 キリスト教の中にあるオカルト的な一面というのをどんどん否定して、「それは迷信であり、過去のキリスト教だ」というふうに言われるようになった。ゴシックの根本的な思想みたいなものが否定され始めました。
 ゴシックの本質は不合理とか、闇とか、森への信仰であり、これらは時代遅れの迷信になっていったんですね。

 そして、その当時のヨーロッパでいっぱい生まれたのが「精神病院」です。
 精神病院というのは、精神異常者だけでなく、狂信者、神をあまりにも信じ過ぎる人も放り込まれたんですね。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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