岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/05/31
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2017/05/14配信「『HUNTER×HUNTER第1巻』解説とアルカポネ」の内容をご紹介します。
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2017/05/14の内容一覧
- 前説
- モーリー・ロバートソン、ニコ生終了
- 先週の『関ジャム』は大ハズレ
- 1920年代のSF雑誌『アメージング・ストーリーズ』
- 『HUNTER×HUNTER』連載再開
- 『HUNTER×HUNTER』に学ぶ、キャラの「起て方」
- アル・カポネが活躍した1920年代のアメリカ
- カポネがギャングのイメージを変えた
- 犯罪都市シカゴ
- 大火災でシカゴの都市化が進んだ
- 黒人大移動でシカゴの中のスラム化が進んだ
- アメリカの都市の成り立ち
- アメリカで差別されていたイタリア人
- カポネがNYをあきらめた理由
- 法律を守らないことを当たり前にしてしまった禁酒法
- ギャングの新兵器トミーガン
- トーキーの時代になってギャング映画が大成功
- 逮捕されたあとのアル・カポネ
- 来週は『HUNTER×HUNTER』の「ハンター試験」
シカゴが犯罪都市になった3つの理由
じゃあ、なんでシカゴがそんなふうになっちゃったのか?
「都市は犯罪が多い」っていうんなら、ニューヨークでも、さっき言ったピッツバーグにしてもデトロイトにしても、全部同じになってるはずだよね。シカゴだけがこれだけ圧倒的に犯罪が多いのには、当然、理由があったんだ。
その理由には、大きい流れとして、シカゴ大火災、黒人大移動、ニューヨークの差別という、この3つがあるんだけど、まずは「シカゴ大火災」から話してみるね。
これ、ちょっと見てくれる? もう本当にね、原爆が落ちた広島みたいな風景になっちゃってるよね。これが、1871年のシカゴ大火災なんだ。
「農家の牛飼いのおばさんのランプが倒れて、それが燃え広がった」って言われてるんだけども、火災発生の原因にはいろんな説があるんだ。ただ、はっきりしているのは、シカゴは別名「ウィンディー・シティー」と呼ばれるくらい風がすごい強い町なんだよね。それも、ミシガン湖から流れてくる淡水から吹いてくるやつなので、そんなに湿っていないカラッとした風が町の中でガンガン吹いているんだ。なので、一度火が出るとまったく火が収まらない。町がもう本当に丸々廃墟になってしまったんだ。残った建物は市の水道局の煉瓦造りの建物一つだけで、もう本当に町中が全部燃え落ちちゃったんだよ。家を失った人が10万人と言われているんだけど。
でも、この1871年の火事のおかげで、シカゴっていうのは、都市計画がものすごく進んだよね。というのは、他の都市ってこんなに何もかもなくなったりしないんだ。シカゴって火事で丸々町がなくなったものだから、まったく新しいところで、ゼロから町が作れたんだ。人口がある程度いる場所で、ゼロから町を作れることなんて本当にないんだよね。
その結果どうなったかというと、まず「こんな火事を再び起こしてはいけない」ということで、シカゴ市は木造住宅を禁止して、煉瓦とか石造りとか鉄を推薦したんだ。これによってシカゴっていうのは「建築家たちの実験の場」になった。
シカゴっていうのは、摩天楼っていわれるすごい高い高層ビルがあるじゃん。あれがニョキニョキ建ち並ぶめちゃくちゃ格好良い町並みなんだけども。それはなぜかというと、シカゴという町が1回きれいに焼けてしまって、木造建築が一切禁止されて、そこに建築家たちがワーッてやってきて、再建のお金もいっぱいあるもんだからさ、最新の建物がいっぱい建ったんだ。
それと同時に「どんな建物が建てるべきか?」とか、「ここに建物が建つことによって人がどういうふうに動くのか?」、「公共交通機関がどのように配置されるべきか?」という研究も進んだ。これが「シカゴ学派」という建築界の一大派閥なんだよね。今、建築雑誌を読んだら、シカゴ学派っていう言葉がいまだに出てくるんだけど、それはシカゴという町が、大火災で全部なくなって実験都市となり、最新のビルがどんどん建って、「これらにどういう働きがあるのか?」という研究がすべて残されているからなんだ。
たぶん、そんなものがちゃんと残ってる都市は、地球上でブラジリアとシカゴだけだと思う。ブラジリアは人が移住しなかったら、今は廃墟同然になってるから、「シカゴだけ」というふうに言ってもいいんだけど。
これがシカゴの始まりなんだ。つまり、火事で1回焼けて、その後、高層ビルが建って夢のような町ができた。
(中略)
でも、良いことは続かない。これらは、シカゴに住んでいる富裕層には良かったんだけども、貧富の差がどんどん広がっていった。
そこにとどめを出したのが「黒人大移動」。
半年くらい前に、ミシシッピ川大洪水の話をしたのを覚えてるかな? 1926年から27年に8か月連続でアメリカのミシシッピ川を中心とした豪雨が降った。それによって100万人が死んだという史上最大の大災害が起こったんだ。
このミシシッピ川の流域、本当にミシガン湖の辺りから南部に至るまでの土地の大体14%が水没したといわれてるんだよね。14%ってすごいよね。100万人が死んだんだよ? 水害で。その結果500万人くらいが家を失って、同時に黒人の解放も進んじゃってたものだから、もう水浸しで農地がないし、絶対にあと1年かそこらで農業の再開なんてできない。
するとどうなるのかっていうと、南部の黒人たちがご飯を食べれるような場所を探して、北部の工業地帯への大移動を開始したんだ。これがたった6か月くらいの期間で行われたもんで、シカゴの黒人人口が1年で20倍になり、その後、数100倍にまで膨らんでしまったんだ。
おかげでシカゴの中でスラム化がすごい進んでしまった。電気の力で明るくなったはずの町なのに、スラム化が急激に進んでしまって、犯罪が徐々に増えだしたんだ。
つまり、さっき話した、それまでの「犯罪というのは山賊や盗賊という町の外にいる者が起こすもの」というところから、町の中にやつらが犯罪を起こすようになった。これがシカゴが崩壊していく始まりだったんだよな。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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