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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「思想書『進撃の巨人』を読み解くための徹底ガイド」

2017/05/09 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/05/09

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2016/12/25配信「製作委員会方式が日本のアニメーターを食えなくしたその理由!緊急マンガ夜話『進撃の巨人』を徹底分解しちゃうぞSP! YouTuberは警察よりも強いというのは本当か?」の内容をご紹介します。
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2016/12/25の内容一覧

思想書『進撃の巨人』と読み解くカギ

 『進撃の巨人』は、たぶん若い読者にとってはもう思想書になってると思うんだ。たとえば今の40代くらいのSF読んでるおじさんにとっては、『銀河英雄伝説』という小説があって、それが社会を考えるとか民主主義を考える時の基本ツールになっているという部分がある。
 今の大体20代後半から30代半ばくらいの、昔、『週刊SPA』とかを読んでた人にとっては『ゴーマニズム宣言』というマンガが、マンガを含めた小林よしのりさんの活動一般が思想的な根拠になっている。
 どの時代でも思想が思想書によってもたらされることはめったにないんだよね。そうじゃなくて、その時に流行っている大衆文化っていうのをベースにしてみんな思想を組み立てたりする。たとえばある時は『沈黙の艦隊』で日本の防衛を考え、そっから先民主主義というのは何かと考える人もいたし、さっきも話した通り『銀河英雄伝説』で民主主義を考えるおじさんも多いと。
 『進撃の巨人』は、組織論とか人生論とか生き甲斐とか、かなり深くて、読者の予想の2段くらい先までが提示されているんだ。具体的な話は巻を追って、ホントにじわじわやっていくね。
 『マンガ夜話』ふうに説明すると、たとえば1巻の55ページのこの絵があるんだけども。これが『進撃の巨人』の世界観だよね。今から100年前に人類は、この壁以外は巨人に食い尽くされたというすごいショッキングな流れから始まっているんだ。これが、この設定がすべてなので読んだことある人がかなりだと思うんだけども、ネタバレにはなるかな、今アニメでこれまでオンエアされた分の流れだけで話してみるね。
 お話はこいつらについて。21巻に至るまで、裏表紙を見るとここにずーっと10人のシルエットが並んでるんだよ。このシルエットが何かって言うと、こいつら主人公が所属している訓練兵の時の仲間たち10人なんだよね。こいつらの悩みとか青春の物語みたいなものだと思えばいい。
 『進撃の巨人』は設定がすごい面白くて、大きい話だから、ついつい謎のモノだというふうに考えちゃうんだけど、基本はこの10人の心の動きっていうのをどれだけ細かくとらえるかっていう、群像ドラマの要素がすごく大きいんだ。

(中略)

 1巻は主人公エレン・イェーガーという男の子。彼はシガンシナ区というところに住んでいて、そこが巨人に襲われて壁が破られてしまう。それまで100年間破られなかった壁が破られてしまうと。お母さんが食い殺されてしまって、復讐に燃えるエレンは幼馴染のミカサやアルミンと一緒に兵団に入る。
 しかし卒業の当日、巨人はまた再び現れて塀を壊してしまうんだ。で、エレンが食われてしまう。結構ショッキングな話です。1巻のここがポイントだよなって思ったのが、このお母さんが食べられちゃうシーンだよね。
 グロテスクなシーンなんだけども、なんかね、グロテスクさを見ないでほしいんですよ。見てほしいポイントはどこかっていうと、お母さんが「私のことはいいから逃げて」っていうふうなことで子供たちを逃げさせるんだけども、それでもついね、「助けて」って言いそうになって自分の顔を、行かないでっていうのをぐっと抑えるんだよね。このあたりの、ドラマの作り方、めちゃくちゃ良いよね。
 お母さんがそれで囚われちゃうんだけども、逃げる子供に対して「行かないで」っ言うのを口で押さえる、ここまでの表現だったらばそんなにビックリしないんだけども、僕がビックリしたのは次のページの下のほうだよ、さあお母さんが結局捕まっちゃった、これから食われるというときに、この目線移動見て。
 最初、手前を見ていて、前を向く、これなにかっていうと、ああ食われるっていう時に、息子と目が合っちゃうんだよね。このまま食われたら、息子のこころに永遠に取れないトラウマを残しちゃうから、わざわざ、お母さん、目を外したんだよ。あのね、鉄道事故で運転手さんのトラウマって何かっていうと、飛び込み自殺ってあるじゃん、その飛び込み自殺する奴と目が合っちゃうことなんだって。目があった人って、ホントにもう眠れなくなるらしいんだよ。
 お母さんは自分の子供を逃がして、そのまま逃げろって言いながら、助けてって言わないようにこうずーっと口を押さえて我慢したんだけども、でもやっぱり最後まで子供を見たいじゃん、逃がした子どもを見たいんだけども、その逃げた子供が向こうのほうで安全な場所からなんだけども、自分を見てるのをわかったら、あえて最後まで、人生最後の瞬間に子供を見たいと思う心を抑えて、ふっと違う方向に目を外すという、この微妙な心の動きをね、わずか23歳の作者が描いたっていうのが、これすごいと思うよ。
 だってこれって、ほとんどの読者が絶対に気がつかないところなんだよね。そういうふうなところで愛とは何か、思いやりとは何かっていうのを作者はすごい一人ひとりの登場人物で、丁寧に丁寧に描いていくと。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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