NVS宇宙科学取材ノート

【レポート】イプシロンロケットで旅立つ、惑星分光観測衛星SPRINT-Aの動画と静止画、補足説明

2013/06/19 07:18 投稿

コメント:9

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画像:惑星分光観測衛星 SPRINT-A 画像提供:JAXA

6月9日に機体公開された動画と写真をまとめました。

■動画



■写真
SPRINT-A_2
写真一覧は こちら http://flic.kr/s/aHsjG9QW84

■質疑応答とまとめ
中継時にコメントで頂いた質問に対する解答です。

Q1:観測高度・軌道の決定要因について
A1:高度が低いと地球からのノイズを受ける。
  高度が高いとヴァンアレン帯からのノイズが入ってくるため、その間900~1200kmの間の軌道を選択している。
  
Q2:打上げ機がイプシロンである事でメリット、デメリットは?
A2:SPRINT-Aの観測装置は真空度を保っておく必要があるが、固体ロケットのイプシロンは打上げ3時間前まで、ペイロードへのアクセスが可能で衛星のメンテナンスができる。

■簡単な衛星と望遠鏡の構造
ここからは、動画で説明していない部分の補足となります。

今回の「SPRINT-A」は極端紫外線領域で太陽系惑星(主に木星と火星)を観測する衛星となりますが
形が、ちょっと変わっていると思う人が多いかも知れません。
実際愛称などで話題になっている名称は、まさに形から来ています。

立方体の上に、跳び箱をのせて、さらに竹筒を刺しているような構造をしていますが
大きくわけてこんなかんじです。


下の立方体部分は、SPRINTバスと呼ばれ
衛星の基本機能である電力、通信、姿勢制御、データ管理、姿勢制御を行う部分。
衛星バスというものは、通信衛星など数多く打ち上げられる大型のものでは一般的ですが、ミッションごとに特別な軌道をとったり、特殊な構造が必要となる科学衛星ではあまりありませんでした。
SPRINTバスは、小型の科学衛星も基本機能を共通化してコスト削減と
開発期間短縮をしましょうという試みです。

上の跳び箱部分が、今回のミッションを行う極端紫外線望遠鏡の部分となります。
(バス部とミッション部でサーマルブランケットの色がちょっと違うのは、製作を担当したメーカが違うため。)

さて、ミッション部分ですが、こちらも筒の横に箱が付いていたりして
一体どういう望遠鏡なのかが、ちょっと分かりずらいので、簡単に構造を示します。


筒から入った光は、跳び箱の一番下部にある主鏡で反射され
筒の横についている極端紫外線分光装置(EUV)で焦点を結ぶようになっています。

・主鏡
主鏡は口径20cmの反射鏡で、炭化ケイ素製。 これは極端紫外線を良く反射する素材のためです。 
それでも可視光領域などと比べると、反射率は低く、観測する紫外線の強さも非常に弱いため、反射回数を極力抑える設計になっています。
焦点距離が長い為、分光装置が距離の離れた先端部分についています。
(ちなみに、極端紫外線の光はどんな物質も透過しないので、凸レンズなどで集光することは出来いそうです。)

・検出器MCP+RAE
極端紫外線の分光検出する心臓部です。
QAで、観測装置を真空に必要にあるとありましたが
紫外線の検出率を高める為にヨウ化セシウム(CsI)が使用されています。
このヨウ化セシウムは極めて水分に弱いため検出器自体を真空に保つ必要があるそうです。
イプシロンロケットでは3時間前までフェアリングにアクセス出来るので、それまではずっとポンプで真空に引きます。(直前までできるので、構造を簡略に出来るメリットもあるとのこと)
検出器には蓋がついており、軌道上で衛星の残留ガスの処理をして、十分に真空になった後に開けることになります。

望遠鏡筒の部分にもホコリの侵入を防ぐ為、蓋がかぶせてあり、打上げ3時間のフェアリングをしめる際に外します。

・視野ガイドカメラ FOV
SPRINT-Aでは、木星のオーロラや火星を観測する予定ですが
姿勢制御に5秒角の精度が必要になります。
一方、SPRINTバスの姿勢制御の精度は120秒角となります。
バス部の姿勢制御装置を精度良いものにすると、それだけでコストが高くなってしまう為、
ミッション部にガイドカメラを設置。
画像分析をして、姿勢位置をバス部にフィードバックし、姿勢精度を高める仕組みとなっています。


ミッション期間は1年目標となります。
太陽が活動期の今のタイミングで開始できると、より太陽風と惑星大気、惑星磁気との関連が分かるようになるそう。
打上げ後はまず木星観測を行います。ハッブル宇宙望遠鏡との共同観測も予定されています。
次に火星、金星を観測する予定です。
ミッションを延長可能であれば、土星や水星も狙いたいと希望している研究者もいるそうです。
極端紫外線の天文衛星は世界初となりますので、見てみて新発見と言うこともありそうですね。
打上げは2013年8月22日予定、イプシロンロケット試験機で軌道に行くことになります。


■参考資料
第1回小型科学衛星シンポジウム 次世代小型科学衛星電源系機器要素技術の実証計画 http://www.isas.jaxa.jp/home/rikou/kogata_eisei/symposium/1st/koto/003_tsuchiya.pdf (注:2011年の資料です)

第14回惑星圏研究会  The Performance of the EUV Spectroscope (EXCEED) Onboard the SPRINT-A Mission http://pparc.gp.tohoku.ac.jp/collegium/proc/sps2013/sps2013_06_yoshioka.pdf
(補足:ミッション部の中や主鏡、検出器の様子が写真でわかります)

ISASニュース 2012年11月号 http://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/No.380/ISASnews380.pdf

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コメント

↑乙、よくわかったわ

No.9 139ヶ月前

こうやって凡人に噛み砕いて説明出来る人の存在は実にありがたいもんです。

No.10 139ヶ月前

なるほど、だいたいわかった。

No.11 139ヶ月前
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