日本のGDPが増えなかった真の理由がわたしたちを豊かにする(その4) の続きです。
ということで、「日本のGDPが増えなかった真の理由」がおぼろげながらに見えてきたのではないでしょうか。
一番直接的だったのは、グローバルな大企業が賃金をあげなかった(むしろ下がった)ことでしょう。価格競争に負けないためです。それに合わせてその他のグローバルでない企業もあげませんでしたから、国内消費は当然それにあわせて上がらず、つまりGDPは上がりませんでした。
そしてその状況に私たちは死に物狂いで対応しました。物やサービスの値段はあげないが、常に進化するというやり方です。私たちは20年間立ち止まっていたわけではまったくなく、その間も死に物狂いに新しい商品を生み出し続けました。私たちが本当に進化をやめていたら、iPhone の最新型など、世界最先端のプロダクトは、特権階級しか手に入れられなくなっていたことでしょう。
私たち日本人は、進化しながらも、GDPをあげない戦略で、再び国際競争力を手に入れたのです。
それはさらに様々なメリットを生んでいます。
私たちは20年間GDP0成長したことでたくさんのデータがたまり、将来の見通しが立てやすくなってきました。
たとえば、新国立競技場を2560億円で建てようとしたら「は?高過ぎ! そんなん回収できないよ」と即座に総ツッコミが入ったことなど象徴的ではないでしょうか。各地の公共事業にしても、
たとえば、大学にただ行ったからといって後で元が取れるほど給料に差がつくわけではないといったこともわかってきました。
こういった長期的な展望が必要な問題に対し、高度成長期の頃はどれだけ成長するとか良くわかりませんでしたから、まあいいやいっちゃえとなり、過剰な公共投資で私たちはそれはそれは痛い目にあったわけです。しかし、今なら成長しないとして、長期の収支を考えれられますから、まともな判断ができるようになってきたのです。
このような長期的視野が持てるようになったことで、貧困問題、財政問題など様々な問題を直視できます。今までは将来成長すればなんとかなんじゃね? とどうしても先送りしがちです。いえ違います。もう今真剣に取り組まなくてはいけない問題なのです。
しかも私たちは、この状況を受け入れることで、新たな発展を始められます。
上にも書いたように、給料の上がらない一番の理由はグローバルな大企業のせいです。彼らは「コモディティ」と呼ばれるものを作り売っています。世界中が同じような製品を作っており、今日は売れていても、明日は他の企業が同じような製品をより安く出すことで、すぐにシェアを失うような世界です。 Android はその典型です。
スマホの利益、米アップルが92%占める :日本経済新聞
という衝撃的な記事が話題になりましたが、 Android は価格競争が激しくほとんど利益があがりません。人件費は世界より多いなんてことにならないようきびしくコントロールしなければなりません。
経済学でもこの現象は良く説明されています。障害がなく、純粋に競争が行われれば利益は0に近づくと。グローバル化とIT化のおかげで理論どおりのことが起こっています。
しかし、それらはじつは景気を良くしません。昔の物々交換の世界と一緒です。去年のここでさんざんやりましたが、リンゴ農家のAさんは、リンゴはたくさんあるけど、みかんは珍しいのでリンゴ2個とみかん1個を交換する、みかん農家はその逆をする、その価値観の差から余剰が生まれ、景気が生まれます。
経済にとって、純粋価格競争しているグローバル大企業など水や空気のようなもの、あるいは社会の歯車でしかないのです。
このままGDP0成長が受け止められ、グローバル大企業で賃金が上がらないとわかると何が起こるでしょうか。優秀な人は、グローバルでない企業に活路を見出します。「コモディティ」なんか売るからそうなるのです。この商品は欲しい人はいくらお金出してもほしいという商品を作った方がよほど利益が出るのです。
そういう企業なら、それに見合った高い給料も出せます。
実際2011年ですがこんな記事もあります。
◆実は多い“大手以上に儲かっている”中小企業
そこにあるグラフで、「大企業の平均賃金38.3万円/月を上回っている中小企業の社員、19.5%」と出ています。とりあえず2012年のデータをもとに計算すると、大企業の平均賃金を上回る人は、大企業の50%として、858万人×50% = 429万人、中小企業の 19.5% として 2856万人×19.5% = 557万人
となんと中小企業の方が多いのです。
現状でそうですから、この社会情勢が認知されるにつれ、一発あてて給料たくさんほしい!という人が中小を目指す割合はどんどん増えるでしょう。
そして、そういった企業から、コモディティでない付加価値の高い商品が生まれ、経済活性化が進むことでしょう。それらは世界にも輸出されるでしょう。相変わらず世界の誰にでも得るコモディティ商品ではありません。世界のごく一部の人が欲しがる商品としてです。きっと惜しみない金額で買ってくれることでしょう。経済活性化はもはや社会の歯車であるグローバル企業が起こすものではなくなるのです。
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