日本のGDPが増えなかった真の理由がわたしたちを豊かにする(その2) の続きです。
日本のGDPは20年増えませんでしたが、それでも私たちの暮らしは便利になっています。たとえばiPhone がモデルチェンジしても値段はそれほど変わらず、また買うことができます。
それはあたかも、やがて地球に到来する人口均衡社会における、新たな経済活動の仕組みに挑戦しているようにも見えます。
でも、GDP が上がらないことに不都合はないのでしょうか。いえ、とりあえず困るように思えることがあります。
預金が増えないのは問題?
GDPが増えないということは、大雑把にいって利子がつかなくなります。つまり預金をしても、増えていってくれません。実際、銀行の預金に利子がほとんど付かなくなってもう随分になります。株も長期的には10000円と20000円を行ったり来たりしているだけですから、ただ投資しているだけでは増えません。もし、そこそこの利子や投資益を期待するなら、GDPが増えていかなければなりません。昔のように貯蓄していれば複利で利子に利子がついて、いつの間にかこんなに増えてたなんて時代を楽しみたいなら、毎年GDPが上がっていくような経済でなくてはいけないのです。
でも、よく考えるとそれに意味があるでしょうか。GDPが増えれば物価もあがります。高度成長期の時はなんかどさくさで貯蓄もどんどん増えましたが、現在のように低い成長率しか見込めない社会では、物価も金利も同じ程度に変動して、結局金利と給料が増えても、それに合わせて物価も上昇して相殺されてしまいます。
私たちにとっては、GDPが増えることと、暮らしが豊かになることとは表裏一体の関係ではないのです。
GDPが本当に増えてほしい人々
それではなぜこんなにGDPあがれあがれと叫ばれるのでしょうか。それはGDPが上がってほしくてたまらない人々がいるからです。それは資産家や金融業界の人です。
彼らは、お金でお金を増やすことを生業にしています。ですからGDPにも増えてもらいたいのです。
でも、ちょっと待て、金利があがっても、物価も上がるから相殺すると上で書いたばかりです。私たちのレベルだとそうです。
一方資産家たちはお金を増やすプロです。もしそこにお金が増えるトレンドがあるなら、彼らは、それをテコにしてはるかに効率良くお金を増やせるのです。いわゆるレバレッジというやつです。たとえば証拠金取引すれば、上昇トレンドで通常の何倍もの利益をあげることができます。
サブプライムローンにしても、不動産価格の上昇トレンドを利用して、もっと稼げる商品を作り、お金でお金を増やしていたのです。
しかし、たとえば、株価が長期的にはあがらない、まさに日本の株価のような動きをする場合、ただ投資しても増えません。そこで増やすには、低い時に買って、高い時に売るという技術が必要です。
でも、上昇していくと信頼できるものがあれば、それをテコにもっと稼ぐ仕組みを作るのははるかに楽なのです。
この人たちが GDP が増え続けることで大きく得をする人たちなのです。
0成長で資産家たちに汗をかかせる
レバレッジを効かせてお金でお金を高速に増やす、いわゆる金融手法は大いに発展したため、資産家たちはあっという間に莫大なお金を生めるようになりました。世界にお金が余っていると言われるのはそのためです。莫大なお金を生み出す力を持つ彼らと一般市民の差は広がる一方です。GDPが上がるなら莫大な利益を上げられる人がいることが GDP 成長を促そうという、強いモチベーションになるのです。
上ではGDPがあがれば金利も上がると書きましたが、現在たとえばアメリカはGDPが成長していながら低金利です。低金利にすることでGDP上昇を促すという政策を取っているからです。それは言い換えれば一般市民の利子をなくしてでも GDP をあげようというわけです。資産家たちはその上昇をテコにしてさらにお金を増やすのです。日本のニュースで景気がよくなったと言われても全然実感がわかない理由もなんだかわかる気がします。
ですから、逆にGDP0成長は、そういった格差拡大を抑制することができます。GDPが上がらないという前提では、そこで簡単にお金を増やすことができません。株で投資するにしても、ちゃんと見込みのあるところに投資しなければ儲けを出すことができません。
それは資産家たちの本来社会の中で果たすべき役割です。
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