ご自身そっくりのロボットを作って有名な石黒浩さんのツイートを見かけました。初音ミク「マジカルミライ2013」Blu-ray/DVD紹介映像が引用されています。
ホログラム 初音ミクは本物のアイドル.現実が研究を追い越している.https://t.co/2GmjCsiTRt
― 石黒浩 (@hiroshiishiguro) 2015, 9月 7
スクリーンに映し出されている初音ミクがアイドルとしてコンサートを行っている様子を踏まえ、「現実が研究を追い越している.」と発言しています。
なにやらすごいことを言っているようにも聞こえますが、当たり前のことを言っているようにも見えます。
実際どうなんでしょう。
まず、昔は研究といっても独立しているわけではないですから、研究、現実どっちが先かとかあまり意味があるように思えません。
だんだん社会が分化して、研究しかしない人が出てきて、初めてこの問いに意味が出てくるのかと思います。でも、世界のあらゆるイノベータたちの数に比べて、研究者の数なんてほんの一握りですから、たいてい現実がどんどん進んで、研究は後からというのがほとんどでしょう。
自動車みたいなの考えても、ほとんどの進化は、自動車メーカーの中で研究と開発が一体で行われていて、大学が研究をして、実はこんなすごいことができると証明されてから、メーカーが実現したなんて話は、ぱっと思いつきません。
そういう意味では、研究が現実より先んじるというのは昔はあまりなかったのかもしれません。
でもそういえば、物理の世界では、先に理論の予言があってから、それを実証するということをよく見かけます。ヒッグス粒子とか有名です。
さらに、私が日本に帰ってきた十数年前は、産学連携の大合唱でした。つまり、大学のシーズを実用化しなくては!というのが社会問題化したわけです。ある意味では、研究はこんなに進んでいるのに、なぜ現実にならないんだというわけです。
確かに、たとえば太陽電池は昔からさんざん研究されていましたが、日常では電卓に入っているくらいで、家庭の電気をまかなうとかは、夢のまた夢。研究者たちが思い描くような世界に、最近ようやくなってきたといえるでしょう。
なるほど、現代においては、研究より現実が進んでいる分野もあれば、研究の方が進んでいる分野もあるということでしょう。
それでは、石黒先生の分野ではどうか。ロボットやバーチャルリアリティの分野と言えますが、この世界は、「人間らしさ」が関わってくるため話がややこしくなります。
孤独を解消するロボットとして、Orihime が脚光を浴びています。
これはまさに石黒先生が作られているような本人そっくりのロボットと対極のアプローチです。もちろん後者の方が完成度は高いのかもしれませんが、一方でOrihimeは退院できない人が家に帰る手段として、いますぐ現実的な費用で始めらるという実用面では圧倒的に上回っています。
これら二つを比較すると、いったいどういう要素が「人間らしさ」を構成するのか、わけがわからなくなります。お掃除ロボルンバをペットのように可愛がる人がいるのと同じです。ロボットやバーチャルリアリティの要素技術はガンガン研究されていますが、「人間らしさ」「ペットらしさ」、言い換えると「没入感」というのは、まだあまり進んでいないのではないでしょうか。
ですから、冒頭の言葉になるのです。
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