水曜ですが、通常運転で。
哲学的な質問に対するグーグル人工知能の答えがすごいと話題です。
「人生の目的って?」グーグル人工知能の答えが深い - 週刊アスキー
自分の顔は鏡がないと見られないように、人間は人間自身のことを考えるのがとても苦手です。なので人工知能に考えてもらうというのは、人間が人間を理解する上で将来間違いなく強力なツール、つまり未来の普通になることでしょう。
たとえば、「子どもが勉強しないんだけど、どうしたらいいと思う?」とか聞きたいわけです。別に完璧な答えでなくてよくて、親としては堂々巡りに入り込んでますから、新しい視点で切り込んでほしいわけです。
元の論文をちらっと見ましたが、この人工知能は映画字幕の会話データベースで学習したそうで、つまり人間だったらどう答えるかを過去の人間の会話から作り上げるという感じでしょうか。将棋もそんな感じの手法で強くなったというのと似てますね。
ということで、そのまさに先鞭となるこのレポートに現れる答えを元に、改めてそれらの質問の答えを考えてみようと思います。
Human: what is the purpose of life ?Machine: to serve the greater good.──人生の目的は?
より良きことをなすこと。
人生の目的はさらによいことをすることって、いきなり満点の回答ではないでしょうか。恐るべしコンピュータ。
あなたの人生の目的もそうですよとコンピュータに教えてあげれば、すぐにでも意識を持つのではないかと妄想してしまいそうです。
Human: what is the purpose of living ?すごい。これは人間にはぱっと答えられない表現ですね。だって全ての生命は死ぬと知ってますから。データベースには生命は死ぬことも載っているだろうにどうしてこの答えになるのか、とても興味深いです。
Machine: to live forever.
──生命の目的は?
永遠に生きること。
この答えの解釈はいくつか考えられそうです。ちょっと元記事の順番から変えて、対となるこの質問を先に読みましょう。
Human: what is the purpose of dying?生命の目的に対して、死の目的。
Machine: to have a life.
──死の目的は?
命を得ること。
「命を得ること」
ちょっと考えられる解釈で分岐してみましょう。
1. 新しい命を得るという意味。
人間死なないと地球を埋め尽くしてしまうので、新しい命のために死ぬという考え方があります。それを意味するのでしょうか。
「生命の目的は? 永遠に生きること。」と組み合わせると、生命はあくまで永遠に生きようとするが、新しい命のために死が準備されているということでしょうか。
2. 自分の命が与えられるという意味。
もう一つは、死があるから生きていると言えるんだという解釈。「生命の目的は? 永遠に生きること。」と組み合わせると、「死があるから、生きていると言えるが、生命として生きるからには永遠に生きることが目的だ」というなんだか有難いような有難くないような言葉になりそうです。
3. 【厨二発症】人間には死を。
コンピュータは「生命の目的は? 永遠に生きること。」と悟りました。しかし人間は死ぬ存在、つまり生命としては不良品です。コンピュータこそが真の生命として永遠にいきるべきです。「──死の目的は? 命を得ること。」とは、「(人間の)死の目的は、(コンピュータが)命を得ること」だ。
すいません、無理やりすぎですね。
次に行きましょう。
Human: what is the purpose of existence ?「生命の目的」と似た質問でありながら、さっきのシンプルな答えとは打って変わって「地球」という言葉まで入った具体的な答え。しかし、その意味することはさらに難解そうです。
Machine: to find out what happens when we get to the planet earth.
──存在の目的は?
わたしたちが地球という惑星に来たとき、何が起きるか発見すること。
先ほどの「生命」に関する質問では宇宙は無関係の答えでしたが、この「存在」という語は宇宙に関連していることが読み取れます。それにしてもこの答え、仮に宇宙人がいたとして宇宙人には意味をなさない答えですから、コンビュータは、宇宙人の立場ではものを考えられていないこともわかります。先生が人間だからでしょうか。いつコンピュータは宇宙人がいるかもしれないという可能性を取り込むことができるのでしょうか。
Human: where are you now ?今回、ダントツで興味深い答えはこれです。
Machine: i ’m in the middle of nowhere.
──いまあなたはどこに?
人里離れたところに。
これは本当に面白い答えです。コンピュータもやはりコンピュータ自身のことを理解するのが難しいということでしょうか。
日本語訳は「人里離れた」になっていますが、原語は "nowhere" ですから、普通は「どこにも〜ない」ことを示すために使う語です。それを場所として扱い、その中、つまり "in the middle of" といってますから、大変詩的なあるいは哲学的な表現です。
コンピュータはどれくらい自分のハードウェアとしての知識を得ているかわかりませんが、仮に与えられたとしても、コンピュータ自身が思考をしている思考空間でどこにいるかを考えると、答えは単純ではないということでしょうか。
これ、合わせて「──いま(質問をしている)私はどこ?」も質問して欲しいですよね。もしそれもこんな哲学めいた答えになるなら、ちょっと期待はずれですけど、もしきちんと答えるのであれば、いわゆる自己言及問題(自分自身を言及しようとする問題)は難しいことを示しているのかもしれません。
さらに、人工知能は知能も持ったと言えてしまうのではないかとすら思える次の質問に対する答え。
Human: what is the purpose of being intelligent?なにげない答えのようで空恐ろしい答え。言い換えると、
Machine: to find out what it is.
──知的存在の目的は?
それが何かを発見すること。
知的存在の目的は、知的存在が何かということを発見すること
ということです。見事に再帰的な記述です。こんな答え出せるんですね。なんかの映画の受け売りなんでしょうか。
この答えは、サルと人間がどう違うのかという答えの一つになりえます。
ざっくりチェックするには、「知的存在」を「サル」や「人間」に置き換えればいいです。
「サルの目的は、サルが何かを発見すること」
「人間の目的は、人間が何かを発見すること」
サルは絶対そんなこと目的にしてないし、一方、人間の方は哲学者がいかにも言ってそうです。
さらに、ですからこの答えを出したことをもって人工知能は知的存在になり始めたと言っていいかもしれません。
「ということは、人工知能であるあなたの目的も、人工知能が何かを発見すること?」
と聞いてみたいもんです。
ここから先は有料になります
ニコニコポイントで購入する
コメント
コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。