前回[S]でしたので、今回は水曜日ですが通常の記事です。
2011年のものですが、最近こんな記事を見かけました。
[サラリーマンは自営の気持ちがわからない]
何もしなくても会社に行けば給料がもらえるサラリーマンのなかには、という出だしで、気軽に打ち合わせをと言われるものの、交通費が会社から出るわけではなくすべて経費になるのにそれをわかっていないという問題を指摘しています。自営業やフリーランスのコスト感覚がまったくわからない人も多い。
しかしこれ、こんなサラリーマンと自営業だけの問題ではありません。この問題は日本のデフレの元凶だと思います。
たとえば250円のお弁当があります。安い安いって喜んで食べる人もいるでしょう。でもこれを売ることを考えるとどうなるでしょう。
もし、一人でこの商売をすることを考えます。東京だとサラリーマンの年収の中央値が400万円くらいでしょうか。一年でそれくらい儲けたいとします。400万円儲けるには原価や減価償却や売れ残りやいろんなこと考えて倍の800万円売り上げがいるとしましょう。
オフィス街で売るとすると、商売になるのは平日だけです。一週5日で一年50週で250日。800万円÷250円÷250日=128個。1日に128個作って売らなければなりません。一人で作って、お昼の短時間にやはり一人で売りさばかねばなりません。大変です。
もし、有機ですとか付加価値つけて500円で売れるのなら、同じ800万円売り上げるのに半分の64個でいいことになります。それでもなかなか大変かもしれませんが、まだましです。
しかし周囲との価格競争に巻き込まれ、同じ数売るのに250円にしてしまったら儲けは200万円になってしまいます。
安いということは、その裏で働く人の収入はそれだけ減りますし、かなりカツカツのところでやっている可能性が高いでしょう。
安い安いって喜びたくはなりますが、そんな無邪気でいられるのは、生産の場と消費の場が完全に分離しているからです。もし小さな街で二つの弁当屋が価格競争に入ってしまって、そこから出てくるその家の子供たちがみすぼらしい格好し始めたら、無邪気に1円でも安い方に行けるでしょうか。
上の記事でサラリーマンに意識がない人がいるという指摘ですが、もしかすると自分自身の会社のコスト構造もわかっていない可能性があります。いくらのものを何個売っていて、従業員が何人いて人件費がいくらかかっていて、ということを言えるでしょうか。もしも単純に安売りしてしまったら、自分の給料がどれくらい減る換算になるかということが計算できるでしょうか。もちろん簡単には給料減らされないかもしれませんが、それは会社が苦しくなるということで、会社そのものがなくなることだってあるでしよう。
これがデフレの原因です。自分が安いものを買うとその裏で苦しむ人がいる、自分たちの商品を安く売ると自分が苦しくなる、そういうことをあまり考えずに安い!と安いものを買ってしまう。そうしてみんなで苦しくなっていくのです。
しかも国や自治体だって足を引っ張ります。
こういう寂しい記事を見かけました。
「チョークを作り続けて82年、このたび廃業することになりました」
チョーク製造大手の羽衣文具は2015年春に自主廃業する。教壇に立つ教師からは、品質の良さで絶大な信頼を得てきた。だが、ホワイトボードや電子黒板の台頭など、時代の変化の波に逆らえなかった。その中で廃業の理由の二つ目がやるせません。
2つ目は単価の下落です。公立の学校へ納入するには市区町村の入札に参加しなければなりません。この入札額がものすごく下がっています。落札額を見ると、私どもの製造原価と同額です。同業他社はどうやって作っているのか、首をかしげたくなります。仮にこのチョークは競争力がないとして、では落札した企業はばんばん稼いでいるでしょうか。いや、どうせほとんど利益は無いはずです。そこの従業員は苦しいことでしょう。国や自治体の入札は市民を苦しめます。
以前なら地元企業を優先した入札制度がありましたが、今や価格重視です。品質は二の次。最近、電子入札が普及してからこの流れは強くなりましたね。品質では負けないモノ作りをしているので、とても残念でなりません。
自分がそんなデフレから抜け出すにはどうするか。因果応報と言いますから、自分が安物買いをなくすことです。それを提供している人は安物売りしない人で、すると安物買いをあまりしない人です。そういう安物買いしない人の輪に入っていけば、自分の商品も「最安値」でなくたって買ってくれることでしょう。自分はデフレから抜け出せるのです。
それは自分勝手な行動ではありません。一人でも多くそういう行動をすることが日本社会そのものをデフレから抜け出させる唯一の処方箋なのですから。
では安物買いから抜け出すにはどうすればいいでしょうか。
・質重視、ストーリー重視あるいは生産者の顔が見えるものを買う。
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