ミライ: フツクロウさん。今回は、世界一わかりやすい経済活動の話、(その3)に続いて(その4)なんですが、年末ですね。今年は今回までで、新年は1月5日からです。
フツクロウ: ホじゃの。
ミライ: 例年、年末は「ゆく年来る未来」してるんですが、できませんね……。
フツクロウ: ホッホッホッ。来年「行った年、来くか未来」すればいいんじゃないかの。
ミライ: はははは。なんか間抜けですね〜。も、それは後で考えるとして、では(その4)です。価値観の異なる間での取引がビジネスになるはずなら、そういう話がもっと多くてもいいんじゃないか?ってとこまで行きました。
フツクロウ: ホウじゃったの。じゃが、どうも、同一物は同一価値という考え方がはびこりすぎて、その前提であれこれ議論されておる。
さっき紹介した経産省の通商白書2009の中の一節でも、企業の利益がゼロにならないようにするにはつぎのようなビジネスモデルが考えられるとある。
1)コア技術を押さえて高収益を得る
2)システムインテグレーション部分を押さえて高収益を得る
3)国際サプライチェーンを拡大して調達の効率化を行った上で、高収益を得る
4)歴史に裏付けされた文化や成熟した消費文化を元に、トレンド発信と一体化した世界進出を行い高収益を得る(ブランド利益モデル)
5)コピーやエレベーターなど最初に納入する価格を安くし、消耗品やアフターサービスで高収益を得る(インストール・ベース・利益モデル)
6)富裕層向けハイエンド市場を前提とした「高スペック・高価格」に加えて、「ミドルスペック・低価格」の製品・サービスを展開
もっともらしいことは書いてあるが、同一物同一価値の考えは抜けておらず、根本的には解決していない。こういうことをやっても「やった瞬間コモディティ化(価格競争に陥ること)する」という大手企業の嘆きをじかに聞いたこともある。
ミライ: ふ〜む。かといって同一物同一価値を抜け出すのも簡単ではないと思うのですが。
フツクロウ: そうじゃの。まず、最初の例では水とリンゴを交換したが、たとえばミカンとリンゴの交換を考えてみよう。ミカンの産地ではミカンはありふれていて、リンゴは貴重、リンゴの産地ではリンゴがありふれていてミカンは貴重じゃ。そういった価値観の違いは必ずある。
ミライ: はい。
フツクロウ: じゃが、ミカンの産地にリンゴが十分たくさん供給されれば、価格は限界まで下がるじゃろう。そこでたとえばいろんな質のものを用意して、いろんな価格帯を作り、贈答用には高いのを選べるようになど、お客さんが出したいだけ出せるような仕組みができあがる。
ミライ: ふむふむ。
フツクロウ: そこには、質が高いなど、合理的に思われる理由がつくこともあるが、必ずしも経済的な合理性は必要ではない。クラウドファンディングなどでは、様々なレベルのエントリーがあるが、上位の特典は名誉的なものもある。前回の伊賀市の500万円寄付で、金の手裏剣進呈に似たようなものじゃの。
ミライ: なるほど。出したい人が出したいだけ出せるビジネスの構造がいるということですね。
フツクロウ: ホウじゃ! 出したい人が出したいだけ出せて初めて、価格競争から抜け出して、雇用者に生きて行くのに必要な額以上の給料を受け取れるようになる。そうなってようやく、それぞれの人が自分たちの「他の人から見たらなんでそんなもんに出すん?」というモノにじっくりお金をかけることができる。
ミライ: 価格競争の裏には、給料競争もあるわけですね。
フツクロウ: まっことじゃ。このことから、ある重要なことがわかる。国の予算では、景気対策は難しいということじゃ。
ミライ: えええ? 突然ですね。
フツクロウ: ホウけ? 国の予算の使い方を見てみい。入札などを活用して、もっとも効率良く仕事をするものに予算が割り当てられる。
ミライ: それがもっともだという気がしますが。