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貿易収支赤字で日本ピンチかと思ったら、利子でうはうはだった。

2013/07/08 22:00 投稿

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 こんな記事を見つけました。

 5月の国際収支、4カ月連続黒字 - 朝日新聞デジタル 

 財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外とのモノやサービスの取引や投資の状況を示す経常収支は、5407億円の黒字だった。(中略)
 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9067億円の赤字。
 311以来、火力発電のための燃料費がかさみ貿易収支が赤字というニュースを繰り返し見てきましたが、経常収支は5,407億円の黒字とのこと。

 ちょっと中身がどうなっているのか知りたかったので調べてみたのですが、なんというか気になることはことごとく表やグラフになっていないので、結局自分でいろいろ作ることになりましたので、載せておきます。

 困ったのは、「収支」というだけあって、いろんな項目の収支はすぐ分かるのですが、内訳である収入と支出はなかなかわからないのです。 

 ということで、2012年の国際収支の収入・支出をいろんな資料から寄せ集めて作ったのが次の表。
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 いろんな資料を寄せ集めたので、足し算があわないところがたくさんあります。だいたいこんな感じということで。
 国際収支は、大きく経常収支と資本収支に分かれます。資本収支は後回しにして、まず経常収支を見ます。
 まず収入は大まかに

  ・輸出が61兆円
  ・サービスを売ることによる収入が15兆円
  ・海外投資による利子や配当が18兆円

あります。海外からの収入全体で94兆円の20%程は利子配当なのです。

 一方支出は大まかに

  ・輸入が67兆円
  ・サービスを買うことによる支出が18兆円
  ・海外からの投資による利子や配当の支払いが4兆円
 
となっています。最近は輸入が輸出より大きく、またサービスは昔から支払いの方が少し上回っています。が日本が海外に支払う利子配当はずっと少なく、支出は89兆円にとどまり、結果、経常収支全体では黒字! となっているようです。

 ここに書いた表ってこの形では簡単には見つからないと思うのですが(ぐぐり方が下手?)、作ってみたらとても面白かったです。

 ちなみに、2012年のGDPは476兆円です。海外からの収入全体は、GDPの20%くらいの額ということです。

この利子配当は安定した収入らしい

 さて、この所得収支とやらが、もし毎年変動の激しい収入でいい年もあれば悪い年(マイナス)もあるような類いであれば、全然頼ることはできません。

 が、どうやらこれは安定した収入のようです。日本はずーーっと海外に投資し続けていて、その利子配当が毎年がっぽがっぽ入っているのです。

 それを見るために、まずさっき飛ばした資本収支に目を向けます。これはおおまかにいって、海外への投資です。そして、毎年の経常収支つまり毎年稼いだ外貨は、だいたいそのまま海外への投資に回ります。
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 青が稼いだ外貨、赤が海外への投資です。2003年前後で乖離しているところがありますが、だいたい一致していることがわかります。変動は激しいですが毎年10兆円といったオーダーで海外に投資しているのです。

 さて、投資しているのですから、それに対し利子配当が得られます。しかも、毎年どんどん投資してますから、利子配当もどんどん増えます。
 すぐデータが手に入った1985年から投資がどんどん累積しているとして、その累積額(赤)と利子配当つまり所得収支(緑)をグラフにしたのが次です。
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 朝ドラ「あまちゃん」の母春子が家出した1984年頃は数兆円の利子配当収入しかありませんでしたが、春子が家出している間、日本は毎年せっせと投資し、いまや毎年14兆円もの不労収入(?)があるのです。GDPの476兆円からすれば、とてもそれだけで生活できるわけではありませんが、足りないガソリン代くらいにはなっているわけです。日本は本当に恵まれてますね。

オープンデータ時代と私たち

 今回の表やグラフは、専門分野の人のはなじみのあるものかもしれませんが、ネットの検索では見つけられませんでした。政府の発表している元々のデータでは直接項目になっていないため、滅多に作られないからだと思います。1番目のグラフは資本収支の正負をひっくり返しただけですが、「経常収支 資本収支」の画像検索で見つけられません。ひっくり返していないものはあります。

 近年オープンデータの取り組みが盛んになっています。福井県鯖江市のオープンデータの取り組みや、鯖江市が利用している linkdata.org が話題になるなど、今年あたりオープンデータ元年になりそうです。

 オープンデータが広がると、みんなでよってたかってあれこれ組み合わせたグラフがどんどん出てきます。1番目のグラフも、正しい専門用語で検索すれば今でも見つかるのかもしれませんが、素人でも検索するようにするには、素人が作るのが一番です。
 中には専門家も気付かなかったようなグラフも出てくることでしょう。

今から楽しみですね。

元データについて

今回用いた表のデータは次のものを利用しています。

(1) 国際収支の推移 : 財務省 
(2) 国際収支統計 : JETRO (1)とは集計方法が違うので収支の数値が少し異なる
(3) 所得収支(収入) 国別ランキング : GLOBAL NOTE 2011年のドル建て数値から類推
(4) 所得収支 国別ランキング : GLOBAL NOTE 2011年のドル建て数値から類推
(5) 対外・対内直接投資の推移 : 財務省 
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二つのグラフは(1)から作成しています。

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