省エネ。1970年代のオイルショック以来研究され続け、もはや地道な努力しかないと思われていたところもありしたが、最近、革新的な方法論が確立され、省エネの分野は大きな進化を始めています。

 キーワードはエクセルギー。エクセルギーというものを考えることで、いかにエネルギーを無駄にしているかをあぶり出すことができるようになりました。エクセルギーとはいったいどのようなものでしょうか。

 うわっ……棄ててるエネルギー、多すぎ……? 電気ストーブの無駄

 電気ストーブとエアコンではエアコンの方が効率がいい、あるいは電気代が安いと聞いたことありませんか。でも電気ストーブは電気のエネルギーが全て熱エネルギーになって暖めるんだから無駄がないじゃん?という気がします。

 しかし、電気エネルギーと熱エネルギーでは、そのエネルギーを他のエネルギーに変えたい、あるいはものを動かしたいと思った時に違いが出てきます。電気エネルギーはその持つエネルギー全てを他のエネルギー、たとえば熱エネルギーに変えることができます。この他のエネルギーに変えられる部分をエクセルギーと呼びます。エネルギーのうちどれだけエクセルギーかはエクセルギー率といい、電気の場合は100%です。

 しかし、暖房で暖められた部屋にある熱エネルギーの場合、その熱エネルギーを使ってたとえば発電をしたいと思っても、熱エネルギーのごく一部しか電気エネルギーに変えることができません。したがって、電気ストーブのように単に電気エネルギーを熱エネルギーに変えた場合、その熱エネルギーを使って発電しても元の分には戻りません。図で描くと次のようになります。
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電気エネルギーと熱エネルギーはエクセルギー率が全く異なる

 電気エネルギーの持つエクセルギーの大半は失われてしまいます。そこで余分なエクセルギーを失うことなしに熱エネルギーを得られるよう考え出されたのが、エアコンなどで使われているヒートポンプという技術です。理想的なヒートポンプでは次のようにエクセルギーは失われません。
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ヒートポンプではエクセルギーは失われない

 空気を暖めるのに必要なエクセルギーは電気エネルギーから取るけど、それ以外に必要なエネルギーは電気ではなく、外気から拝借することで賄います。その結果外気は少し温度が下がります。ヒートポンプが「空気から熱を取り出す」と言われるのはこのためです。この技術によって、同じだけ部屋を暖めるのに電気ストーブの1/3から1/6の電気しか使わずに済みます。

 以上のようにエクセルギーを考えることでどのくらい効率的にエネルギーを利用しているかを分析することができます。ヒートポンプは新しい技術ではありませんが、このような考え方はヒートポンプだけでなく、あらゆるエネルギー利用の分析に使えるようになっています。

 つまり、エクセルギーという考え方ができたおかげで、どこで、エネルギーが非効率に使われているかを詳しくあぶり出すことができるようになり、さらにそれをどうすれば減らせるかを検討できるようになりました。

 つまり、エクセルギーをしゃぶり尽くすことができるようになってきたのです。

 次回はエクセルギーの考え方から生まれた画期的な省エネ技術を紹介します。

・併せてどうぞ
眠れる熱エネルギー ”エクセルギー”! で省エネ革命

参考資料

エクセルギーとコプロダクションの原理
 エクセルギーと言えば、堤先生のプレゼン。スライドなので読むのは大変。

従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される その堤先生による分かりやすい解説。