私たちの暮らしがデフレに苦しむ理由。それはみなさんが当たり前と思っている「等価交換」がはびこりすぎているからです。
景気がどこから生まれるか。実は「等価交換」とは反対の「価値観の差」から生まれます。
この話は2年あまり前
世界一わかりやすい経済活動の話(その1)
のシリーズで詳しくやりました。
その時の例を簡単に紹介すると、ミカン農家にとってミカンは豊富にあるものです。でもリンゴは貴重なもので、ミカン農家はリンゴ1個を手にいれるのにミカン3個と交換していいと思っています。
一方リンゴ農家にとっては逆です。ミカン1個を手にいれるのにリンゴ3個と交換していいと思っています。
このとき両者が直接取引きし、ミカン1個とリンゴ1個を交換するのが「物々交換」。そこに景気は生まれません。
この間を商人が取り持つと商人の手元に余剰が生まれます。これが景気の元です。その余剰が次の取引きを生み出していきます。それが雪だるま式に増えていくとき、景気が良くなります。
それをグローバル化だ自由化だと言う過程で、モノやサービスの値段を均一にしようとするから、景気が悪くなります。景気は価値観の差に注目して余剰を生むことで生まれるのであって、「等価交換」をすればするほど景気は悪くなります。
価値観の差がいかにビジネスに深く関わっているかを示す例があります。
それは家事です。
私が子供の頃は高度成長期で、家庭はどんどん豊かになり、いつか普通の家庭にはみんな家政婦が入って家事から解放されると妄想していました。
でも実際にはそうなりませんでした。
なぜか。
それはもともと家事をしていた主婦や主夫と、家事代行をする家政婦で、家事という労働の価値観があまり変わらない、むしろ悪化する方向にあるからです。
たとえばワイシャツのクリーニングは、家庭で行うのと、クリーニング屋で行うのとでは、クリーニング屋のが断然効率良くできます。家庭で数枚のワイシャツを洗って乾かしてアイロンかける手間があれば、クリーニング屋はいったい何枚のワイシャツを仕上げることができるでしょうか。クリーニング屋にとって、ワイシャツのクリーニングは、主婦や主夫に比べて、ずっとわけないことなのです。
ですからビジネスになります。
しかし、家事代行はどうでしょう。皿洗いを主婦や主夫がしようが、家政婦がしようが、たいして手間は変わりません。だから金持ちしか雇えません。あるいは家事なんて全然できない!なんて人しか頼みません。
エアコンや洗濯機の掃除であれば、道具やノウハウで素人を圧倒するプロの方が、素人より圧倒的にわけなくこなしますから、ビジネスになります。
他にも例があります。地域の道の掃除です。行政は、地域のグループにささやかな謝礼で委託したりします。それを税金でまかなおうとして人を雇ってやらせると、とても大きな負担になります。何故なら誰にやらせても手間があまり変わらないからです。であれば、自分の周りの道をきれいにしたいという、その地域の人の方がはるかにインセンティブが高く、つまりささやかな謝礼で請け負います。
将来優秀な道路清掃ロボットができて、人を圧倒する効率で道を掃除できるようになれば、すべてロボットがやるようになるでしょう。
私にとって、アイデアなんて水のようなもので、いくらでも出すことができます。やりたいことなどいくらでもありますが、その中で自分でできることはごくわずかです。つまり、頭に浮かんだだけのアイデアなんて私にはほとんど価値がありません。
去年の「いいね!」シリーズで書いた
「いいね!」(あるいはそのようなもの)がたくさんついたページの広告単価を上げる広告
というアイデアもそのすれすれです。ブログのネタにするくらいの価値はありましたが、そうでなければただの脳みその肥やしです。
ですから、「情報は『等価交換』で!」というようなお話は私には当てはまりません。アイデアだけでなく情報もいっぱいあります。もらってくれるならどうかもらってください。
しかし、グローバルな市場ではすっかり「等価交換」がはびこってしまいました。これは実は「物々交換」と変わりません。原始に逆行し、そこで働く人にもそれを扱う企業にもまったく余剰が生まれないところまで値段が下がります。
そのような「等価交換」な市場は景気には貢献しません。そこに関わる人や会社もちっとも儲かりません。
それが私たちが苦しい理由です。
それが成り立たないローカルな市場が景気を生み出します。
ぜひその点に着目し、ビジネスに活かしてください。
《ワンポイントミライ》(?)
ミライ: クラウドファンディングとか、経済のその点に着目した手法ですよね。
フツクロウ: まっことその通りじゃ。
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