「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その4) の続きです。

 前回は、「いいね!」(の代わりにニコ動の動画再生数)とお金(世帯所得)について、「規模別の合計」というものをグラフにして、高いとこと低いとこ、つまりいわゆる金持ちと貧乏を比べました。お金では10倍の差がありますが、動画再生数ではなんと1000倍もの開きがあったのです。

 この比にすでに名前がついているかわからないので、とりあえず「格差指数」と呼ぶことにしましょう。

 さて、格差といえば、よくジニ係数と言われるものが使われています。たとえば日本のジニ係数は、37.9%などと言われています。

 ジニ係数を調べるにはローレンツ曲線というグラフを作るそうです。

 以前から使っている世帯所得のデータでローレンツ曲線を描いてみると、
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 こんな風になります。赤と青の線で囲まれた部分の面積を求め、右下半分の直角二等辺三角形の面積0.5との比を求めると、 36% となります。これがジニ係数です。

 データが粗くて、曲線がカクカクしてますから、実際はもう少し大きいのでしょう。実際のジニ係数は 37.9% ですから、だいたい計算できていることがわかります。

 さて、では同じことをニコ動の動画再生数でやってみます。

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 うわ。これはひどい。経済学者が見たら泡吹くんじゃないでしょうか。このグラフからジニ係数を計算すると、80%です。データが粗くて線がカクカクしているので、実際はもう少し大きいことでしょう。

 ここで、世界・収入不平等指数ランキングを見てみると、格差が一番ひどいとされる、レソト、南アフリカ、ボツワナといった国々でも 63% 台です。

 もし動画再生数に比例して払われる報酬だけで人々が暮らしていたら、どんな恐ろしい世界になるのでしょうか(苦笑

 とはいえ、ジニ係数が 80% と 63% と言われても差がよくわかりません。そこで、逆にジニ係数63%だと、「格差指数」がいくらになるのか推定してみましょう。

 そのために作ったグラフがこれです。

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 これは、ジニ係数と「格差指数」との関係を表したものです。対数正規分布というロングテールの分布を持つ関数をいろいろ変化させて、そのジニ係数と「格差指数」を計算して作りました。

 例えば、ジニ係数が80%では「格差指数」は1000倍となり、ニコ動の例とよく合っています。また、40%弱で10倍となり日本の例とだいたい合っています。ジニ係数の小さい方は対数正規分布だとあんまりうまく表現できてないので、この結果はいささか怪しいです。今後の課題です。

 ということで、このグラフをみると、ジニ係数63%あたりでは、「格差指数」は100倍くらいのようです。

 日本の「格差指数」は10倍です。日本の場合、極端に所得が低い世帯と高い世帯を取り除くと、その広がりは、200万円から2000万円となり、その倍率が10倍というのが「格差指数」の意味です。所得2000万円っていうと、たとえば開業医の所得はそれよりもちょっと上でしょうか。つまり街に普通に存在する金持ちです。

 もし、日本のジニ係数が世界最悪の63%程度になると、「格差指数」は100倍となり、つまり所得の広がりは 200万円から 2億円となります。開業医は2億円所得があるような世界です。すっごい豪邸に住んで使用人も何人もいるイメージでしょうか。それが街に普通に存在しちゃう世界です。

 もしも、「いいね!」の世界のように「格差指数」が1000倍になると、所得の広がりは200万円から20億円。日本で所得20億円というと、いわゆる高額役員報酬のランキングに出てて、せいぜい一人か二人です。そんな人がたとえば開業医として街に普通にいるような社会。なんか、ちょっとぶすっと刺したくなりそうです……。

 このように「格差指数」を使うことで、格差の度合いを具体的にイメージすることができます。この指数はロングテールをいじっていれば自然に出てきます。ロングテール分布での統計解析が進むにつれ、この「格差指数」も未来で普通に使われる指標になるのではないでしょうか。
 

《ワンポイントミライ》(

ミライ: ニコ動再生数のローレンツ曲線ww

フツクロウ: これはひどいの。こんな曲線初めて見たわ。