結局、共和党代表選のときと同じ勢いでトランプが大統領選も勝ちました。

 ヒラリーが圧勝しないのではないかと、6週間前に話しました。

 [S] ドナルド・トランプは負けたのか  
 それでもなぜトランプ氏は共和党の代表に勝ち上がってきたのかということです。

 代表戦の時からただの威張り散らすおっさんで、「なんでこんな人が代表に勝ち上がるの???」とみんな思ったことでしょう。あのおっさんは、ずっとあの調子でも勝ち上がるのです。
 その時はなぜトランプが強いかは漠然としか分からなかったのですが、

 最近この記事を読んで「ああなるほど」と納得していました。これを読んだ時、トランプが勝利するかもしれないと心の準備をしました。

 トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実|渡辺由佳里|ニューズウィーク日本版 
 <知識層からときに「白いゴミ」とまで蔑まれる白人の労働者階級。貧困と無教養を世代を越えて引き継ぐ彼らに、今回の選挙で「声とプライド」を与えたのがトランプだった>

 私はアメリカで、この話に出てくるような田舎に住んだことはありませんが、カリフォルニア州のマリン郡という比較的片田舎に3年ほど住んでいたので、その話で描かれている情景はリアルに想像できます。

 その人たちがトランプを応援する理由は、日本の地方に住む人たちと同じだと思います。

 国政や経済政策を提案する知識人が、無意識か意識的にか、ようは自分たち知識人にとって都合のいいものを提言するからです。

 それはインテリが社会に影響力を持てるような仕組みであることです。たとえば地方分権がどんどん進んだとすると、都会のインテリの影響力は小さくなります。そういう仕組みは本能的に嫌います。

 世界的に見ても中央銀行の金融政策なんて、たいして効果があがっていませんが、インテリたちはそんなことはないと考えます。だってそうでないと認めることは、自分たちの影響力が減るということです。

 ちょっと前は「トリクルダウン」なんて言葉もありました。まず大企業が儲かれば、中小企業や市民にも波及すると。知識人はふだん大企業と付き合いますし、そういうところには自分たちの影響力があります。しかし、日本中の中小企業への影響力はあまりありません。だから、本能的に「トリクルダウン」論を好みます。

 しかし、それらの施策はことごとく効果をあげていません。特に地方に住む人にとって、国・東京・大企業がやってることなんて、全然自分たちに効いてきません。アメリカでも同じことが起こっているのです。

 トランプ氏の発言は、政治家としては呆れるものばかりで、飲み屋で酔っ払ってるおっさんとなんら変わりませんが、逆にいえば、威張り散らしているおっさんと思えば、その発言は常識の範囲内のものばかりです。彼には緻密な理論に裏連れされた政策はありません。それは知識人が作るものであって、そんなものは、地方の人には役に立たないのです。

 トランプ新大統領が今までに公約した過激な政策をどれくらい実現しようとしてくるのかはさすがにわかりません。個人的には大したことはしないんじゃないかと思うのですが、そんなことよりも大事なことは、今までの偏ったグローバル主義にははっきりとブレーキがかかるということです。

 日本政府の思惑も大いに外され、これまでの施策やこれからの施策は効果を出しにくくなるでしょう。したがって、日本でも特に地方から、中央への不信感が広がっていくことでしょう。

 日本ではどんな動きが始まるのか、これから目が離せません。


 (追記: ところでまいどのことですが真っ赤な選挙マップにうろたえてはいけません。
 [S] 今回全米が真っ赤な選挙マップを見て呆然とした人はこれをご覧ください。   )


《ワンポイントミライ》(

ミライ: 日本でもトランプさんみたいな人が出るということでしょうか。 

フツクロウ: どうかの。少なくともすでに見えてきているストーリーもあるの。ら

ミライ: え。あるんですか?