みなさんはもう見ましたか。天皇陛下のお気持ち動画。

 私も拝見しました。さっそくいろんな解説が出ているようですが、見てません。

 このお言葉で一番力強く聞こえたのは次のところでした。
天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。
 私は、昭和63年に大学に入っています。次の年早々に平成になりました。子供時代は昭和、平成から大人というわかりやすい人生です。

 この社会の停滞というのは、実話に基づいていて、昭和天皇が体調を崩してからは、社会に自粛モードが蔓延しました。大学1年でカテキョ先の親とそんな話をしたことを覚えています。なんかお笑いとかも停滞しちゃって仕事なくなった芸人さんとかいたり、うろ覚えですけど。

 ただでさえも景気が良くならない昨今です。「私のせいであれを繰り返してはいけない」という危機感からそのことに言及されたことは、それだけでものすごい経済効果だと思います。だって、天皇自身がそれを口にしなければ、私たちは表立って議論できません。

 とはいえ、病に伏すのが「生前退位」された後だとしても、私たちはつい自粛モードになりそうですが、天皇はすでに「自粛したらだめだからね☆」ってきつく言い含めているわけです。どんだけ先回りしてんねん。

 お言葉の最後
 このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。
 私たちは、成長の社会から持続の社会を目指す中、天皇もまた持続の皇室を志向しているとまとめられています。

 「生前退位」を認めることはいろんな問題がありますから、認めない方が制度(ルール、法律)としては、ずっと楽です。でもそれでは、皇室は持続的とは言えないというのが今回の問題提起です。逆にいうと、それを考えないなら、将来皇室は国民から疎まれる存在になるかもしれないという危機感かもしれません。
 
 また「象徴天皇」についてのお考えが聞けたことは、昭和-平成世代の私にはとても嬉しかったですし、また、天皇のある種の危機感を改めて見る思いでした。

 少年時代を昭和天皇で過ごした私の目には、昭和天皇は「お飾り」として扱われていました。昭和天皇は戦争もしてましたから、目立ってはダメで、なんとなく空気のような存在でした。昭和の文脈で、憲法でいう「象徴」とは「お飾り」という意味だったのです。実際、「国政に関する権能」を全く持たない「象徴」にいったいどんな意味があるのか、続けていく意味があるのか、そんな風に感じていました。

 しかし、平成の天皇は、非常にアクティブでした。確かに、「『国政に関する権能』を全く持たない『象徴』にいったいどんな意味があるのか」と思われていたら、疎まれる存在になるかもしれません。

 昭和天皇が「お飾り」に徹することが職務だった一方、平成の天皇は天皇になる前からずっと「象徴天皇」としてのあるべき姿を考え抜き、それを28年間実践されたのだと思います。

 それを証拠に今回このお気持ちを拝見して、何一つとして「え?そうだったの?」と思うところがありませんでした。天皇陛下が実践されてきたことは、まさにお気持ちで考えられてきたことに基づいていたのです。

 わたしは、これほど言動が一致している方を他に思い出せません。

 自負もあるのです。
 これまで私が皇后と共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅(太字筆者)
 「ほぼ」と言い切れる自信。すごい。

 ちなみに「皇后」が出てくるのはここだけなのもなかなかに感慨深いのですが、それはいずれ。

 この天皇陛下の「象徴天皇」に関するお考えは大変積極的です。

 天皇陛下は、自身の地位にあぐらをかいていられるとは微塵も考えておられません。
天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。
 なので、全国回らなければいけないと考えておられます。
 こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。
 つまり、天皇はお飾りなどではなく全国回るとか仕事あるし、もう歳とって、全国、遠隔の地に行けなくて天皇としての仕事ができないから辞めるべきだと。

 ものすごく水戸黄門とダブってしまいますが、このお言葉は歴史の1ページです。繰り返しですけど、昭和天皇は戦争当事者で自身の役割の再定義はできませんでした。しかし、平成の天皇はそれを避けては通れなかったし、それを今きちんと言葉にされたのです。

 それは普段から実践されていることだったのですが。

 個人的に、今回は特別立法でかまわないと思います。戦後の天皇・皇室のあり方について、当事者の天皇が自ら気持ちを述べるのは初めてです。皇室典範やあるいは憲法の皇室に関わる部分がどうあるべきかを議論するのは、これからの天皇のお考えがもう少し集まってからでもいいのだと思います。

 皇室のルールは今のままでは持続的ではないという問題提起がなされたことそのものが、私たち日本社会が「持続的な社会」にステップに進みだした証であり、つまり、今回の「天皇陛下のお気持ち」は超未来志向なのです。


《ワンポイントミライ》(

ミライ: 難しいことはともかく! これで「生前退位」を実現できなかったら、日本は「ブラック国家」の烙印を押されること必至ですねっ。

フツクロウ: ホッホッホ。