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ガッツワールドプロレスリングのエースであるダイスケが、12月2日のガッツワールド新木場1stRING大会で引退する。

2017年はプロレスラーの引退が続く年となった。記憶に新しいところでは大仁田厚が10月31日に“7回目”の引退。そして先日ニコプロでも引退興行を放送したが、豊田真奈美が11月3日に引退。豊田と同じ全日本女子プロレスで活躍した吉田万里子も引退するし、我闘雲舞の「ことり」も年内での“プロレス卒業”を発表した。
豊田のように長い現役生活で体中ボロボロになり、引退試合で1日51試合やってまさしく完全燃焼して引退していくケースもあれば、「ことり」のようにまだ若いし、大きなケガをしたわけではないが、様々な理由によりプロレスから離れることを決めたケースもある。

ダイスケの場合はヒザと腰の状態が芳しくないのが、まずひとつ。ケガは欠場して治療すれば良くなる可能性が高いが、「休んでもう1回」よりも今が第二の人生に進めるいいチャンスと考えて引退を決意したという。
キャリア13年、34歳でひとつの団体のエースというポジションまで築いたのだから、ここから更なる飛躍を期待してもおかしくないのだが……。

インディー団体だとどうしてもデスマッチファイターが注目を浴びがちだ。木高イサミ、宮本裕向、正岡大介、竹田誠志……エース級の選手は通常ルールのプロレスがデキるのはもちろん、デスマッチもこなす選手が多い。
ダイスケはデスマッチはやらないし、他団体のビッグネームと対戦するようなこともほとんどない。だが、ガッツワールドに観戦に行った人はもちろん、ニコプロでガッツワールドの中継を見た方なら、ダイスケが“プロレスがデキる”選手なのは分かるはず。自分の団体で地道にいい試合を積み重ねてきたタイプのレスラーだ。

まだダイスケの試合を見たことがないという方は、ガッツワールド10.17新木場大会のタイムシフトが17日の23時59分まで見られるので、ぜひセミファイナルのダイスケvsミスター雁之助の一戦をご覧いただきたい。この一戦を見るだけでも十分わかるだろう。


そんなダイスケと切磋琢磨してきたライバルの一人が、プロレスリングHEAT-UPの田村和宏だ。HEAT-UPは無謀だと言われながらもとどろきアリーナでビッグマッチを開催したり、藤波辰爾や鈴木みのるといったビッグネームを招聘。さらに田村は団体の代表でありながら、そんなビッグマッチが赤字だったか黒字だったかをニコプロ内で赤裸々に発表してしまうような陽のキャラクターだけに、ダイスケと比べると派手な印象はあるが、彼もまたデスマッチファイターではないインディー団体のエースだ。
ニコプロでは今月、そのダイスケと田村がシングルマッチをおこなったHEAT-UPの11.5新木場大会を、21日の21時から放送する。“ネタバレ”になってしまうが、この試合は15分時間切れで決着がつかなかった。だが結果を分かった上で見ても、十分見応えのある一戦だ。


藤波辰爾vs長州力、ジャンボ鶴田vs天龍源一郎、三沢光晴vs小橋建太、棚橋弘至vs中邑真輔……日本プロレス史には数々の名勝負数え唄があった。団体の規模や注目度の違いは確かにあるが、ダイスケvs田村和宏も名勝負数え唄と言っていい激闘の歴史がある。
HEAT-UPの11.5新木場大会で決着がつかなかった両者は、ガッツワールドの11.1新木場大会で再戦している。しかも時間無制限1本勝負。最後のシングルマッチは名勝負数え唄の集大成に相応しい熱戦となった(放送日未定)。手前味噌になってしまうが、この2連戦が見られるだけでも540円払うだけの価値は十分にあるだろう。

さらにニコプロでは30日の20時から、暗黒プロレス組織666の10.28新木場大会を放送するのだが、この大会に宮本裕向の助っ人としてダイスケが登場し、忍のチームと対戦している。ここ数年、666と新宿二丁目プロレスにはよく参戦してきたダイスケだが、ニチョプロをプロデュースする忍にとっては信頼出来る仲間であり、良きライバルだった。現在は大日本プロレスのジュニア王者としても活躍する忍と、引退してしまうダイスケの絡みもぜひ見ておいてほしい。


奇しくも11月のニコプロは「ダイスケスペシャル」と言ってもいいくらいダイスケの試合を見ることが出来る。ガッツワールドはもちろんだが、HEAT-UPや666、ニチョプロにとってもダイスケというレスラーは大きな存在だった。
あるとき、ダイスケに「辞めないでほしいという声もあるし、ファンからのダイスケコールを聞いて気持ちが揺らいだりしないか?」と聞いたことがある。ダイスケは苦笑いしながら「僕はリングから潔く降りたいなって心に決めている。揺らぐことはないですけど、本当に申し訳ないなと思いつつ嬉しい気持ちです」と答えた。ダイスケというプロレスラーの試合が見られるチャンスは、残りわずかだ。

文●佐瀬順一