週刊『夏野総研』

週刊『夏野総研』vol.号外【夏野剛×中島聡 特別対談の書き起こし】

2022/04/19 07:55 投稿

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▼号外
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                             2022/04/19

    夏野剛メールマガジン 週刊『夏野総研』
                号外
      【夏野剛×中島聡 特別対談の書き起こし】
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《目次》
■プーチンと日本企業、嫌な情報は上がってこない「忖度」の構図
■忖度が生み出している独裁者
■中島聡も参戦?ソフトウェアが戦争の形を変えた
■情報網が戦争の抑止力になる時代がやってきた
■戦争も企業も忖度が組織を滅ぼす
■実は官僚から忖度されていない政治家たち
■千載一遇のチャンス!字幕付き映画を見るようになったアメリカ
■Facebookのメタバースがまったくイケていない理由
■自動運転技術の進化でエンターテインメントは変わるのか?
■日本は後進国!?異常な円安状態に陥っている

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◆【対談】夏野剛×中島聡「ジャパン・テクノロジーの復活への道」
https://live.nicovideo.jp/watch/lv336385309

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■プーチンと日本企業、嫌な情報は上がってこない「忖度」の構図

内田(MC):お二方はシンギュラリティソサエティ(https://www.singularitysociety.org/)を立ち上げられた二人ということで、久しぶりの対談らしいですね。昨年の8月以来だそうですよ。

夏野:まじ?

内田:スタッフ情報ではそうなっています。なので、話したいこともたくさんあるんじゃないかなと思いますので、今日は色んなことで話してもらいたいと思いますが、今回のテーマは「ジャパンテクノロジー復活への道」という事でございます。

夏野:僕は思うんですけど、そんなことを話している場合じゃないんじゃない。だって、本当にウクライナの状況は、日本の企業の未来がどうとか、そんなのんきなことを言ってる場合じゃないことになっていますよね。この21世紀の今、こういう状況を目にしなきゃいけないことになるとは、想像もしなかった。しかもこれが、企業経営にめちゃくちゃ関係があるんです。

明らかにプーチンは忖度の結果、情報があがってないじゃないですか。でも多くの日本企業もそうかもしれないし、もしかしたら海外企業もそうなんだけど、多くの経営者も疑似プーチン状態にあるんじゃないかと思うんです。だって、忖度している人は多いと思いますよ。という感じから始めたらどうでしょうか?中島さん。

中島:いいと思います。現実味がないのも確かだけど、でも例えばチェチェンが攻められた時とか、あまり気にしなかったじゃないですか。西側メディアは。

夏野:それは、今回こそインターネットの力が、大きかったなと思っていて、チェチェンの時は全然情報があがってこなかったわけです。それに対して今回は、ゼレンスキーがすごいっていうのもあるんだけど、4000万人の国家だと、いきなりインターネット回線を全部閉じるみたいなことができないし、またここでイーロン・マスクがかっこいいよね。スターリンクをいきなり提供しちゃって、しかもいきなり通信機が全部届くみたいなことをやっちゃうわけなんだけど、この時代の違いもあると思うんです。だから、チェチェンの時との大きな違いは情報量。そこが今回面白いって言ったら、失礼なんだけど恐ろしい違いがここに生まれているなって感じはするんです。

中島:そうですよね。Twitterとかが出てきた時に最初の頃は、自分がやってることを実況中継できるっていうことを発見して、みんな喜んでやったじゃないですか。それが、まさか戦争で起こるとは思わなかったですよね。

夏野:そう。ただ、今回きつかったのは、ロシア軍が撤退した後の地域とかで、本当にリアルな死体の画像などが、どんどんソーシャルメディアにあがっているわけです。こういうことをプーチンは全く意識がなかったんでしょうね。プーチンが、SNSの威力を分かっているとはとても思えない。この裸の王さま的なことが、ものすごく今回起こっているなって感じがするんです。

中島:そうですよね。気持ちが悪いのが、この後どうなっていくかっていうのを考えた時に、かなりの可能性で、どのぐらいかかるか分かんないけど、プーチンがクーデターなりで倒れてっていうのが、多分7~8割はあるじゃないですか。

夏野:ただ、それだと怖いですよね。核戦争っていう話が出てくる可能性もある。

中島:倒れる前に核戦争に走る可能性が、少なくとも1~2%はあるような気がするわけです。

夏野:ありますね。

中島:その気持ち悪さと言ったらないですよね。

夏野:本当に。

中島:それで、こんなことしてる場合じゃないっていう話ですよね。

夏野:ということで、フェーズが変わっちゃったなって。この一年半ぐらいの間に、コロナで一旦フェーズが変わって、さらにこのウクライナ戦争でまたフェーズが一個変わったような感じがするんです。

中島:ウクライナって全く閉じてないですからね。

夏野:いや、恐ろしいことが起こっちゃったなっていう感じなんです。

■忖度が生み出している独裁者

中島:やっぱり独裁者は怖いですね、本当に。

夏野:ただ、独裁者も別に望んでなってるわけじゃなくて、周りの忖度でこうなってるっていうのが凄いなって思って。

中島:でも、そうしたら忖度をみんなでしてくれれば、プーチンは自分がやばいことに気がつかずに、ポンと殺されちゃうかもしれないです。それはいいんじゃないですか?

夏野:殺されるんですかね。

中島:忖度しなかったら、やばい、やばいっていう情報がもっとあがってきて、プーチンは危機感を持つわけじゃないですか。

夏野:そう。忖度する方がプーチンの死期を早めるみたい。

中島:ですよね。要は、危機感に煽られると窮鼠猫を噛むで核のボタン押しちゃうかもしれないから。

夏野:そういうことか。

中島:だから、忖度も悪くないかもしれないです。

夏野:悪くないんだ。でも、すごい話してますよね、本当に。

夏野:いや、恐ろしいことが起こってます。やっぱり、これは会員限定放送になってからやろうかな。今話すと、また炎上しそうだから。忖度については後で会員限定になった後にじっくり、「プーチンになっちゃいけない」っていう話をします。

中島:でも、そうですよね。忖度されちゃう立場じゃないですか、今。

夏野:だから、それが見える時の見えない時の違いをどうやって、見分けるかみたいなことを考えています。相手によって見えやすいやつと、見えにくいやつがいるんですよ。

中島:人じゃないですか、結局。

夏野:そう。しかも、忖度する奴って信用できない奴がいるんです。

■コロナとウクライナ…連続して起きる世界史的事件

内田:でも私、今聞いてて思ったんですけど、コロナが出て、ウクライナ問題が起きたじゃないですか。こんなすごいことが、二回も立て続けにきたことなんて、今までなかったんじゃないですか?

夏野:歴史上はあるんです。

内田:そうなんですか。

夏野:歴史上は、山ほどあるんです。

内田:こんなに続けてくるもんなんだなと思って、それが時代なのかなって。

夏野:それは単なる確率論。

内田:偶然?

夏野:確率論の話です。

内田:そうなんですね。そこに不思議はないんですね。

夏野:ない。

内田:無い。わかりました。バッサリ。

夏野:戦争の間に大地震がくるだの、火山が噴火するだの、火山が噴火したから戦争が起こるだの、世界の歴史上は山ほどある。

内田:偶然?

夏野:偶然じゃないです。必然だったりします。火山で気候変動があって、地球が冷寒化したがゆえに、戦争が起こりやすくなって、食べ物が取れないようなことは、過去に山ほどある。

■中島聡も参戦?ソフトウェアが戦争の形を変えた

内田:ウクライナ戦争の話をするんですけど、今回みたいな、戦争は本当に情報がすごく重要になっているじゃないですか。エンジニアにできることって、すごく多いのかなと思ったりしたんですけど、その辺お二人から見たらどうなんですか?

中島:今一個、ボランティアのエンジニアがロシアのサーバーを攻撃するっていうのが始まってます。あれは結構面白いかも。僕もやろうかなと思って、一応グループには入ったんですけど、とりあえずそのグループには、このサーバーを叩けみたいな。ただ単にサーバーのURLと、IPアドレスだけが送られてくる非常に不思議なグループがあるんです。

内田:送られてきて、それでみんなで攻めていくんですか?

中島:それなりに自分で考えた方式で、サーバーにアタックする。

内田:そういうやり方があるんですね。私からだと、全然訳わかんない感じなんですけど。

夏野:僕は今までの歴史上、ソフトウェアのエンジニア、つまり、エンジニアっていうと、今はシステムエンジニアとか、コードを書ける人をエンジニアって言うイメージが強いんだけど、そもそもはハードエンジニアが主体で、特に戦争においては、ハードエンジニアが重要だったんですけど、今回の戦争は完全にソフトウェアエンジニアがものすごく重要になっている戦争だなという風に思います。

特に、兵器の種類も、ハードエンジニアが得意な戦車とか、こういうものが、どちらかというとソフトウェア的な、つまり画像認識に基づいて、上から落ちて攻撃するジャベリンとかって、どちらかというとソフトの勝利だと思うんです。そういうソフトウェアエンジニアが主力になってしまった戦争が今回起きていて、それは今の現代兵器ではソフトウェアが重要だということもあるんです。

もう一つすごいのは、エンジニアだけじゃなく情報戦に関しても、例えばウクライナコントロールマップっていうのがあるんですけど、これはSNSに発信された情報に基づいて、今、戦況がどうなっているのかっていうのを、Googleマップ上に落としているマップなんですけど、きわめて正確に、今現在ウクライナの戦闘状況がどうなっているのかっていうのを、世界中に公表しちゃっているわけです。

情報機関でも何でもない人達が、こういう情報を提供できる戦争っていうのが、僕は初めてだったので、そういう意味では、これからの戦争のあり方を、本当に塗り替えてしまうような衝撃的な戦争に、このウクライナ戦争はなっているなという感じがします。

中島:そもそも、一企業であるスペースXが片側に協力するとか、あり得ない話ですよね。

夏野:びっくりします。

中島:Twitterで依頼が来たんですよね。

夏野:いきなりTwitterで依頼が来た後に、何日か後にいきなりウクライナ政府に通信機が届くっていうのがすごいですよね。

中島:あり得ないですよね。

夏野:あり得ないこと。ただこの回線が維持できているということで、経由地は分からないけども、例えばマリウポリから上がってくる映像って大部分がスターリンクなんじゃないですかね。インターネット回線は落ちているはずだからね。

中島:周りを塞がれちゃったらダメですもんね。

夏野:恐ろしい時代の進化が、しかもこのロシア軍のついていけなさ感が、ものすごい日本企業に通じるものがあって、時代が変わっているのに、いまだに戦車でやっているの?みたいな感じが、やばいです。

内田:本当に軍事大国なのかなって思っちゃいましたけどね、映像とか見て。

夏野:でも、今までの軍事力っていうのは、戦車の台数とか、持ってる飛行機の機数とか、核弾頭の数とか、兵士の人数とか、そういったもので測っていたので、ロシア軍は強大なんです。

内田:数だけなら。

夏野:ただ、占領戦と、守る方、攻防戦っていうか、防戦って全然違うので、そういう意味では、そこの違いは勿論あると思います。

内田:世界中から個人が参加できる戦争って感じのイメージがあって、戦争のイメージが変わります。色んな所で多発してもおかしくないんじゃないかって、怖さを感じますけどね。色んな形の争い。

■情報網が戦争の抑止力になる時代がやってきた

夏野:いや、逆じゃないですかね。この情報網が抑止力になる時代が来てる感じが僕はしますけどね。つまり、偽旗作戦もそうだし、それから残虐な行為とかもそうなんですけど、今まではバレないから前線でやったことは相手のせいにして、またさらに攻め込むみたいな、20世紀の戦い方が、まだ通用すると思ってたロシア軍に対して、情報がどんどん伝わることによって、彼らも窮地に追い込まれるわけです。

しかも、電波が通じなくなっちゃったから、携帯電話で自分の母親との会話が傍受されるみたいな、めちゃくちゃ。第二次大戦かこれは、みたいな事が結構起っちゃっていて、要はこれって完全に情報戦争にロシアがついていけてないっていうことですよね。そういう通信機器も整備してないし、この新しい時代に全く対応できてない。だから、本当に敗戦直前の日本軍みたいな状況に、今のロシア軍は陥っている感じがすごくします。

中島:そうですよね。それで思うのは、じゃあロシアでよかったなとは思います。この後、中国がこういうことになったら大変ですよね。彼らはどんどんソフトウェアが強くなってるじゃないですか。

僕、少し前にアメリカのシンクタンクが対中国の防衛の話をまじめにしている会議に出たことがあるんですけど、その時にその人達が、要はアメリカ政府の要人とか、そこから雇われたシンクタンクの人達が、本気で、アメリカ各地にいる中国人が、例えば、Googleで働いている中国人だったり、スタンフォードで教授をしている中国人とかが、いざとなったらアメリカを裏切る可能性があるから、準備した方が良いって本気で言ってるんです。

怖いでしょう? それって、普通ありえないじゃないですか。中国からアメリカにほぼ帰化して、Googleで働いてる人は幸せなんだから、中国を応援するはずがないですよね。多分、大半の人がそんなことはないんだけど、でも今何十万人といるわけで、そのうちの5%でも実はスパイだったとか、あとからスパイになりましたとかなると、アメリカ国内はグタグタになりますから、それは結構本気で心配しているみたいです、彼らは。

夏野:だから、そこがまたアメリカの弱さですよ。だって、本当にスパイにするんだったら、そんな判りやすい中国系の人をスパイにする訳ないじゃないですか。それって第二次大戦中に日系の移民を強制収容所にやったのと同じ。むしろ、全然関係ないWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)の人間を金で買収した方が絶対いいですよね。バレないから。

それはトランプ以来の馬鹿さ加減なんだけど、それってどこの国にもありますよね。日本の政治家でも、本当に馬鹿じゃないのっていう発言を、大真面目にしてる人がやっぱりいっぱいいるから、それはロールプレイな感じがします。アホな選挙民に向けてのロールプレイな感じがします。そんなわかりやすいことしないでしょう。

中島:ちなみに、イーロン・マスク、今度テスラ側でもやったんです。ウクライナってソフトウェアエンジニアでいい人たちがいて、テスラで働いているウクライナ人が国のために戦うんだったら三ヶ月間有給休暇をあげるっていうアナウンスをしたんですよ。

夏野:でも、三ヶ月は短いですね。

中島:確かに三ヶ月は短いです。三ヶ月で勝てるかっていう問題はある。

夏野:行くのに二週間くらいかかるし、帰ってくるのに二週間ぐらいかかる。正味二ヶ月か。

中島:でも、戦争休暇を出すっていう。

夏野:ちょっといいですね。

中島:いいですよね。だから、やっぱり決断の速さはすごいですよね、あの会社は。

■戦争も企業も忖度が組織を滅ぼす

夏野:中国の話なんですけど、やっぱり中国はそういうエンジニア力もあるから怖いんですけど、でも中国ほど忖度の国はどこにもないんです。だからやっぱり、本当の事が本当の形で伝わらない時にリーダーが謝るって、これは戦争中の日本もそうじゃないですか。前線はボロボロに負けてんのに、いい情報しか言わないとか、今回のロシアもそうだけど。

でもよくよく考えると、昔の戦争って全部それで負けるんです。だから中国は、中国の怖さっていうのはやっぱり忖度。この忖度っていうのが、組織を滅ぼすっていうのが、この日本の低い忖度のレベルから、この高度な軍事的な忖度まで至る、この人間の忖度が組織力を壊すっていう、これを見てるような感じがしていて、今めちゃめちゃ習近平は学んでる感じがするんです。

中島:でも、面白いですよね。じゃあ、忖度をできない、もしくは忖度しようとしたら分かってしまうような組織作りはどうしたらいいのかっていうのは、会社でも国でも大事な話になってきますよね。

夏野:そう、そこですよ。まだ、会員限定じゃないからまだ言わないですけど(笑)。

内田:なので、ここからは有料にしようと思います。その方が、より深い話が出てくるんじゃないかと思います。皆さん、ここからは会員限定ということになります。

夏野:やっぱり、日本の企業に限らず、その後のマイクロソフトなんて忖度の塊みたいな会社じゃないですか。 

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