東京の営業女子がアメリカでエンジニアに転身する、というのが前回までのお話。
じつは、話をさかのぼると、プログラミングの学校に通っている間に、もうひとつおもしろいことが起こりました。
学校の枠を超えて、ローカルのエンジニア達と挑戦それは、Y Combinatorが初めて主催したハッカソンに参加しないか、と誘われたことがきっかけでした。Y Combinatorは、スタートアップに投資するベンチャー・キャピタルです。
ハッカソンというのは、制限時間内でエンジニア、デザイナー、プランナーが力を合わせてサービスを作り、他チームと競い合うテクノロジーのマラソン大会みたいなもの。
2014年のハッカソンは、Y Combinatorにとって初めての開催でした。
参加者は200名限定。ラッキーなことに、私の通っていた学校の生徒は、優先的にエントリーを通してくれるということでした。もちろん、断る理由がないので、進んで立候補しました。
経営者、投資家の言葉で気付かされたこと同じように立候補した学校の仲間とチームを組み、ハッカソンにのぞんだ2日間。それはまさに世界のエンジニアの最高峰を見た気分でした。
日頃の業務に力を持て余したシリコンバレー中のハッカーが集まるなか、私のチームは当時リリースしたばかりの人気のウェアラブルのAPIを使い、身体とスマホがインタラクティブに連動する、シンプルかつ斬新なゲームアプリを作り上げました。そして、まさかの入賞を果たし、会場で登壇まですることに!
あのときの会場のワクワク感は今でも色褪せずに覚えています。
すべてのハッカーが次々とおもしろいプロダクトを生み出していきました。それはまるで素敵な力を持つ魔法使いのように見えたのです。そしてその快感は、プログラミングを知る者だけに与えられる「ご褒美」でした。
ところで、そんな夢のような世界のなか、私が確信してしまったこと。それは、自分がエンジニアとして、いかに世界に通用しないか、がわかってしまったということ(笑)。
そのハッカソンのピッチと学校の最終日のピッチで、優秀なエンジニアを採用しにやってきた経営者や投資家たちに会う機会がありました。
そこで彼らが私にたずねてきたのは、私が書いたプログラムそのものではなく、デザインプロセスやプロダクト設計についてでした。
「このプロダクトはどういうプロセスでデザインしたの?」「どこからインスピレーションを得たの?」などなど。
それもそのはず。ハッカソンでも学校のプログラムでも、 私はひとつ心に決めていたことがありました。
それはいかにシンプルなロジックで、効率的に注目を集めるプロダクトを作るかだけに注力する、ということでした。
背伸びして複雑なロジックを組んだために制限時間内でプロダクトができあがらないのでは、そもそも話にならないからです。
逆にいえば、そのわずかな時間でも複雑なプログラムを書けるエンジニアがそれだけ多かった、ということになりますが...。
このできごとは海外に出て初めて味わった挫折感であり、新しい自分への発見でもありました。
あれ? もしかして。私ってエンジニアと協力しながら課題解決、プロダクト設計を行っていくデザイナーとしてやっていく方が向いているのかも、と。
ハッカソンで入賞、8週間のカリキュラムを終えて8週間の全カリキュラムを終えると、クラスメートのアメリカ人の多くはFacebookやGoogleといった大企業から、SnapchatやSlackのようなスタートアップにインターン、就職を決めていきました。外国人の生徒はそれぞれ自分の国に帰って就職したり、会社を起こした人もいたり。
私はというと、カナダで働くビザと受注した小さな仕事が残っていたので、ひとまずカナダに帰国。アメリカのゲーム会社の日本市場での立ち上げや、カナダ系企業、日系企業からオファーをもらうこともありました。
うーん、これからどうしようかなぁ...。いま思えばこの時期が一番悩んだ時期かもしれません。
知り合いの少ないカナダにこのまま居続けるのか。日本に戻って立ち上げにジョインするのがいいんじゃないか。そもそもエンジニアとして道を進んでいくのか。
考えるだけ考えて、私は結局カナダに残ることにしました。モバイルの実装とUI設計を得意とするデザイナーとしてのキャリアを進むことに決めたのです。
いまよりちょっと上の選択を海外に出るとひとつひとつ、すべての瞬間が自分の選択で決まることになる。ときには周囲の反応に敏感になるのも悪くない。
そして迷ったときは、いちばん自分らしいと思える選択を。
いまの自分よりちょっぴり上の選択を。
なんだかむずかしい話ばかり続きましたが、次回は、シンプルに楽しい! って思える話もしていきたいな。
続く。
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