なかでも注目なのが、3月19日(土)からBunkamuraザ・ミュージアム開催される『ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞』。
この展示では、これまでほとんど一般公開されることのなかった作品を一挙に見ることができます。
浮世絵は現代でいうファッション誌
(左)歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」(黄腰壁) 弘化5(1848)年頃 William Sturgis Bigelow Collection, 11.27004 Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston
(右)歌川国貞「当世三十弐相 よくうれ相」文政4,5 (1821,22)年頃Nellie Parney Carter Collection―Bequest of Nellie Parney Carter, 34.489
Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston
この展示の面白いところは、その斬新な切り口。江戸時代に一世を風靡した歌川国芳と歌川国貞、このふたりの天才浮世絵師の作品を通して、江戸の人々の世界を疑似体験できるというもの。
浮世絵というと、"江戸時代の日本のアート"と、なんとなく敷居高く感じている人もいるかもしれません。しかし、そもそもは江戸の町人文化として花開いた大衆文化なんです。
テレビやグラビア雑誌がない時代、浮世絵は人々にとってのブロマイドやポスターであり、エンターティンメントや流行を知るための大切なメディアでした。
歌川国芳「初雪の戯遊」弘化4-嘉永5 (1847-52)年 William Sturgis Bigelow Collection, 11.16077-9 Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston
そこに描かれている歌舞伎俳優は、いまでたとえるなら人気NO.1の売れっ子俳優。美人画に登場する美しい着物をまとった女性は、モード誌の表紙を飾るファッションアイコン。
現代に生きる私たちが憧れの俳優や好きなアイドルに夢中になるのと同じように、昔の人々もまた、"追っかけ"の心理で浮世絵を楽しんだり、その表情やコーディネイトを真似し、おしゃれやメイクのお手本にしていたのです。
日本のポップカルチャーの原点
つまり浮世絵は、その当時の江戸が生んだポップカルチャー。次々と進化を遂げる日本のポップアートカルチャーの原点とも呼べるのです。そんな浮世絵の生まれた背景を理解できると、きっとぐんと身近に感じるようになるはず。
今回の展示では武者絵(武者の姿や合戦のありさまを描いたもの)で江戸の男衆の気持ちをわしづかみにした国芳と、美人画を描かせたら当世NO.1と謳われた国貞の、作品170件(約350枚)を出展。
(左)歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」弘化2(1845)年頃 William Sturgis Bigelow Collection, 11.28900 Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston
(右)歌川国貞「大当狂言ノ内 八百屋お七」五代目岩井半四郎 文化11,12 (1814,15)年 William Sturgis Bigelow Collection, 11.15096 Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston
これだけの作品を一度に見るのは、またとないチャンスで、一度貸し出されると美術館の規定により、今後5年間は見られないくらい貴重なんだとか。
構図や色づかいの斬新さにも目を見張る浮世絵は、絵としてだけでなくグラフィックアートとして見るのも面白いもの。そのポップでモダンなアプローチがマンガをはじめとする、日本のカルチャーに大きく影響していることがわかります。
これがいまから150年以上も昔に描かれたと聞けば、ふたりの天才浮世絵師のそのセンスに思わず唸らずにはいられません。
日本人の感性ってすごい!を体感する、刺激的な展覧会。見終わったあとは、きっと日本の文化を改めて誇りに感じるはず。
開催期間:2016年3月19日(土)~6月5日(日)※会期中無休
開館時間:10:00~19:00(入館〜18:30)、毎週金・土曜日は21:00まで(入館〜20:30)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
画像一番上:歌川国貞「踊形容楽屋之図 踊形容新開入之図」安政3(1856)年 William Sturgis Bigelow Collection, 11.28578-80 & 11.28581-3 Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston