もともとはスタイリッシュなカーゴバイクで鎌倉の街中に現れる移動型ケーキショップとして評判を呼んでいたのですが、今年の4月についに路面店をオープン。
そして店内でケーキの製造から接客までこなしているのが、この店のオーナー、立道嶺央(たてみち・れお)さんです。
オーガニックでジャンキーな、おいしいケーキ
大学で建築デザインを学んだ立道さん。自分の手でものをつくる仕事をしようと茅葺屋根補修の仕事で2年半、京都で修行していました。
その後、生まれ育った鎌倉に戻り「地元で何か面白いことができないか?」と考えたとき、欧米旅行で見かけた街中でコーヒーやドーナツを食べる風景を思い出し、小さい頃から食べていたお母さんのケーキを売ろうと思いついたそう。
左:キャロットケーキ(380円)右:サバラン(450円)。定番のフルーツ系タルトも人気。どれも優しく、どこか懐かしい飽きのこない味が魅力です。
テーマは「オーガニックでジャンキー」。自分らしい、毎日パクパク食べられるケーキづくりをモットーに、行商スタイルのケーキ販売を始めるとたちまち噂になり、行く先々ですぐに売り切れる人気ショップになりました。
母から子へ。受け継がれるレシピ
厨房で一緒にケーキをつくるのは、師匠であり、母である有為子(ういこ)さん。じつは有為子さん、結婚前に住んでいたサンフランシスコでケーキづくりに目覚めたそうです。帰国後、自宅で教室を開くなど、長年の経験を生かしたケーキレシピは信頼厚く、頼もしいパートナー。
「ケーキをつくるのが大好きなので毎日が楽しくて」と語る有為子さんのチャーミングな笑顔は、もうひとつのお店の顔でもあります。
安心して食べてほしいから。やさしい味の秘密
「生産者の気持ちを大切にすることで自分たちも誇りを持ち、気持ちよく料理できます」と見せてくれたのは自然栽培の野菜。
青果ミコト屋さんで定期的に取り寄せているという材料は、どれも新鮮で安心して食べられるものばかり。お店まで届けてくれますが、それでも嶺央さんは仕事の合間をぬって、直接農家へ赴き自分の目で野菜を確かめるようにしているのだとか。
お店を構えるようになってケーキの生産数は増えたけれど、人気商品は早い時間に売り切れることも。 人と人をつなぐケーキ屋
「POMPON CAKES」のあるエリアは、鎌倉のなかでもあまり注目されることのない場所。駅から離れたこの場所を選んだ理由として、ケーキ屋としてだけでなく、街や人との繋がりを担う役割もあると考えているそう。
「4年かけて鎌倉でいろいろなことをボチボチとやってきました。ちょっと変化球な感じのこの場所が、あまのじゃくな僕にはちょうどいいかなと思って。この辺りになかった景色を5年、10年と時間をかけてつくっていけたらいいなと考えています。地元の子どもたちが、自分たちの街を誇れるようになってくれたら、うれしいですね」。
人懐っこい笑顔を向けながら、そう教えてくれた立道さん。取材中も次々と常連さんや子どもが訪れ、アットホームな空気に包まれる店内は、そんな立道さんの人柄がつくり出しているのかもしれない。
電話:0467-33-4746
住所:神奈川県鎌倉市梶原4-1-5助川ビル
営業時間: 10:00〜18:00
定休日:火曜日、水曜日
※価格はすべて税抜きです。
(写真・文/石黒美穂子)