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夏の終わりと、秋のはじまり。甲斐みのり「コンフォート雑貨のある暮らし」

2015/08/27 23:30 投稿

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夏の間の手みやげの定番は、近所の和菓子屋の店先に涼しげに並ぶ「きんぎょ」。ちいさな金魚鉢型のいれものに、小石に見立てた小豆、水草と金魚のかたちの羊羹を浮かべた寒天菓子で、ひとつずつ金魚すくい用の小袋に入っています。

夏になると近所の和菓子屋で販売がはじまる水菓子「きんぎょ」。

訪問先で手渡すと、わあっとあがる感嘆の声。スプーンですくって口へ運べば、清涼とした風が体の中を通り抜けていくよう。つるっとした喉越しも、蒸し蒸しとした暑さを忘れさせてくれるので、ときどきは自分のおやつ用にも求めていました。

数日前、いつものように手土産を買いにでかけたときのこと。

「きんぎょ、4つください」。

「はーい、今年は今日で終わりです」。

思いがけない言葉でした。その翌日、我が家へ立ち寄るお客さま用にも、また買いに出かけようと思っていたので。たしかに数日前から、朝晩の風にせっかちな秋の気配がじんわりにじむようになり、次の月まであと幾日と指折り数えたばかり。なんだか「夏はもうすぐおしまいです」と、金魚の景色が足早に駆けていってしまったようで、少しばかり淋しい気持ちに。 

その夕方です。静岡から、贈りものが届いたのは。送り主は実家の母。荷物を受け取り「ああ、そうか。やっぱりもう秋なのか」と思ったのは、箱の「なし」という文字を見て。生まれた家を離れて20年。毎年かかさず夏と秋の境目に、母から届く地元の梨。それは、私にとって、秋への扉のようなもの。「さあ、あなたの生まれた秋は、もうすぐそこまできていますよ」と、知らせる季節の便りです。

母が毎年、かかさず送ってくれる梨は、静岡県富士市「ときた梨園」の梨。みずみずしくて、しゃきしゃきの歯ごたえ。

そんなわけで今年はちょうど同じ日に、過ぎゆく夏と秋の気配を感じることに。昨日までは冷たく冷やして飲んでいたのに、ふと温かいコーヒーを選ぶ朝。蚊取り線香の香りが消えかけた部屋。麦わら帽子を置いて外出する日。この頃は、夏から秋へと季節はか変わりつつあるのだと気がつく瞬間が、1日のうちでたびたびあります。

ふとんにもぐりこみ、すやすや眠る我が家の猫。

ふとんから、手足としっぽが。夏には見られない風景。

そういえば、暑い間は冷たい床に吸い付くように眠る猫が、ふとんにもぐりこんできたときも。季節の変わり目を、しみじみと感じるとき。

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