そう簡単に買い替えのきかないものを買う時、おばあちゃんになっても傍らにあるものを見つけたいと思います。月並みな表現ですが、「一生モノ」......そう呼べるものが理想です。
国産木材で表現された機能美ああ、これは一生モノだな、と感じたのが、ワイス・ワイス「KURIKOMA(クリコマ)」の椅子。宮城県栗駒山産スギの美しい木目、体にフィットするよう設計された座面のカーブ、どこを触っても角のない丁寧に磨かれたアーム。その機能美に目を奪われました。
KURIKOMAループアームチェア 42,000円(税抜)
「本当の良さを実感するためには、座ってみないと。」
ワイス・ワイス代表佐藤岳利さんに促され、腰かけてみたところ、ふわりと包まれるように柔かい......木なのに!座面のカーブが優しく体重を受け止めてくれています。また、すべての角が丸く削られているので、当たっても痛くありません。
柔らかさと軽さを魅力にさらに驚いたのが、片手で簡単に持ち上げられるほどの軽さ。スギは本来柔らかく、家具にする場合は圧縮して強度を上げていたため、重くなってしまうことが難点でした。
しかし、この椅子は、フレームを3層構造にし、繊維を直角に交わらせ組み立てることで、圧縮せずにJIS規格の3倍の強度を実現。スギの軽さや柔らかさは、椅子の魅力のひとつとして存在しています。
雇用を生み出し、復興へとつながるクリコマは、今年の3月に発表されたソーシャルプロダクツアワードで、「特別賞 東北復興」に選ばれました。その受賞理由は、この椅子の誕生秘話に紐づいています。
東日本大震災から1ヶ月後の2011年4月、被災地に入った佐藤さんは、宮城県栗原市で、ある製材所と出会います。そこで、「製材所に働く、職人のおじいさんに仕事を作ってくれないか」と依頼されたと言います。
宮城県栗原市・栗駒木材株式会社の製作風景
職人の技と心意気が感じられます
多くの雇用を生み出すのは難しくても、一人だけならなんとかなるかもしれない。その思いから国産スギの椅子づくりがはじまりました。とはいえ、製材の仕事と、家具づくりはまったくの別もの。製品化に至るまでは、1年半の時を要し、発売から約3年たった今、雇用は4名に。木材の角をすべて丸く削る作業は、地域の授産施設で働く方々にお願いしているのだそう。
「この椅子が1脚売れるたびに、社内があったかい気持ちに包まれます。これから、5人、10人と雇用が増えるようがんばりたい。」(佐藤さん)
たくさんの人々の手と想いによって、形を成した国産スギの美しい椅子。長い時間を共にし、色味が増した椅子は、ついた傷さえも愛おしい。そんな風に感じるのではないかと、ウン十年後を想像しています。
[KURIKOMA]