今、汚れた水をきれいにする浄水器のなかで最も安価で使い方もシンプル、そして、啓蒙的な役割を果たすのが、「The drinkable book(ドリンカブル・ブック/飲める本)」です。
アメリカ国内の水道水に相当するものをカーネギー・メロン大学(アメリカ・ペンシルベニア州)のテレザ・ダンコビッチ化学博士が開発した浄水フィルター「The drinkable book」。コーヒーフィルターのような茶色の見た目の紙が、本のように綴られています。
硝酸銀を使用して作られたこの茶色の濾紙は、バクテリアやその他病原菌などを99.9%除去するそう。博士によると、この濾紙で水を漉すことで、汚れた水もアメリカ国内の水道水に相当するきれいな飲み水になると言います。
使い方も簡単です。本の入っているプラスチックのボックスを上下に重ね合わせ、1枚破りとったページを上の段にセット。水を注ぎ入れると、下のトレイには濾過された水が出てきます。
1枚は30日間使用可能。本1冊で約4年間キレイな水を提供できると言います。そしてコストも非常に安価。1枚あたりなんと1ペニー(2015年4月18日現在で1.77円)です。
「意識」から変えていこうとするチャレンジ
世界保健機関の調査によると、年間3万〜4万人以上が、水のせい――その衛生設備や衛生管理にかかわることで命を落としているという。この99%、死亡率のほとんどが発展途上国で起きている。
(The Drinkable Bookより引用)
1年間で400万人もの人が不衛生な環境下にある水が原因で病気にかかり、命を落とす。この原因には、水が病気の原因になることもあり得るということを知らない人たちがいる、という現実があります。
そのため、まずは人々の意識を変える必要があると考えたダンコビッチ博士は、あるアイディアを製品に盛り込みました。それは子供でも読めるよう、フィルターとなるThe drinkable bookのページ1枚1枚に、きれいな飲み水の大切さや、きれいな水を作るための習慣を啓蒙する文章を記載すること。フィルターを使うたびに「飲み水の元となる川に生ごみを投げ入れないようにしよう」などの文章が目に入り、人々に気づきをうながします。
たくさんの人が安価にきれいな水を手に入れられるThe drinkable book。すばらしい製品ですが、実はまだ商品化に至っていません。商品化にこぎつけるにはまだまだ資金が必要とのことで、The drinkable bookのチームは現在、NGO「Water is Life」と協力して基金を募っています。
世界の多くの人が、一日でも早くきれいな水を飲めるようになることを願ってやみません。