キリストが死後3日目にして甦ったことを祝う、春のお祭り「イースター」。色とりどりの美しい模様が施されたイースターエッグは、日本でも目にすることが多くなりました。
ひとつとして同じものはないイースターエッグなかでも、ろうけつ染めで作られた「ピサンキ(Pysanky)」は、最も古い伝統をもつもののひとつ。「書くもの」という意味をもち、ウクライナなど東欧各国に伝わるイースターエッグです。古来より卵は自然の神々の命の象徴であり、ピサンキの歴史はキリスト教より古く、太陽信仰の時代にまで遡るといわれています。
キスカというペン状の道具に蜜蝋を入れて溶かして線を書き、染色を繰り返す。こうすることで、卵の殻に精密な模様を染めつけていきます。卵によって異なった染まり方になるので、ひとつとして同じものはありません。
色や模様に込められた想いウクライナのピサンキはひとつひとつの模様や色に意味があり、それを繋げていくことできれいな柄をつくり出しています。
生命の木は「子孫繁栄」、太陽と星は「生命、成長、冨」。麦の穂は「豊穣」を、白は「清浄、誕生」。赤は「幸福、希望、情熱、太陽」、青は「空、健康」。このようにそれぞれに意味が込められているのです。
生命の木
見て美しいのはもちろん、贈る人を想って描かれた模様にはつくり手の祈りが込められています。
ウクライナ出身のピサンキアーティスト、テチャーナ・ソロツカさん。彼女の講座では、ウクライナの伝統も一緒に学ぶことができます。ひとつの伝統が、どんな歴史的背景を旅してきたかを知ることも豊かな経験になるはず。
その上で、自分や誰か大切な人のために世界でひとつのピサンキをつくるのも楽しそうです。
[ピサンキの旅]