旧集成館。石造りの建物に当時の雰囲気が残ります。
鹿児島をはじめ、日本の産業化に大きく貢献した街、九州・山口。現在、これらの地域に残る文化遺産を「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」と銘打ち、世界文化遺産に登録しようとする取り組みが行われています。登録の可否がわかるのは今年の夏頃ですが、鹿児島市はその市内に3つの構成資産(世界文化遺産となりうる資産)を有しています。
そのひとつである「旧集成館」は、薩摩藩主、島津斉彬が西洋と薩摩藩の技術を融合させ、作り上げた東洋最大の近代工業コンビナート。日本初の洋式紡績工場を稼働させるなど、日本の近代化に大きく寄与しました。
旧集成館のすぐ近くには、日本の建築史の中でも最も初期に建てられた本格的洋風建築があり、見学も可能。まるでタイムスリップしたかのようです!
また、旧集成館の近隣にある「仙巌園」は、島津光久によって築かれた島津家の別邸です。徳川将軍家に嫁いだ篤姫や勝海舟なども訪れたとのこと。そんな時代を想像しながら風情ある庭園を散歩するのもおすすめです。
趣のある仙厳園。
そして、なんと言っても、ここからの桜島の眺めは絶景! そのほかにも、この一帯には薩摩切子工場や、島津家歴代の当主と家族を祀り、女性の美しさを守るとされる「鶴嶺神社」なども。女性ならぜひ訪れたい場所です。
クリエイティブな街、鹿児島!また、次々と新しい動きをみせる鹿児島は、クリエイティブな土地でもあります。鹿児島らしさを大切にしながら、独自のセンスを追求するお店が点在します。
鹿児島市役所に近くにある「レトロフト千歳ビル」は、築50年ほどのレトロなビル。リノベーションを施し、1階と2階がテナントで、3階からがアパートになっています。
レトロなのに新しい、レトロフト千歳ビル。
外観はレトロですが、ビルの中はとてもモダン。一歩足を踏み入れれば、たちまち虜になってしまいます。
まず、目に入るのは、天井まで続く本棚にびっしりと並んだ古書。本棚の迷路のような廊下を進むと、自家焙煎の豆をつかったコーヒーショップ、自家製無添加ソーセージを使ったホットドック専門店、日常使いのアイテムが並ぶ着物屋、農園レストランなどが軒を連ねます。
有機農業ひとすじ35年の園山農園による農園レストラン「森のかぞく」では、野菜たっぷりのおかずがうれしい「農園ごはん」をいただきました。「にんじんがこんなに甘いなんて!」と大感動。お野菜も売っていて、年代問わず、街の青果店としても親しまれています。
おなかも心も満足する農園ごはん。
半地下にはライブやトークショーなど様々なイベントが行われる半地下の「リゼット広場」が。この日は、デザイナーの花田理絵子さんが自家製のジャムやスコーンを販売していました。
手作りのジャムがずらり。
1階と半地下のお店は、それぞれ独立しながらも、扉がなく繋がっています。そのため、本を選んでいるときにもコーヒーの香りを感じたり、お店の人同士が交流をはかっていたりと、常にほどよく人の気配を感じることができます。それはまるで、ひとつの共同体のよう。店主と気軽に話ができる距離感にも、古き良き日本のコミュニティーのような温かさを感じました。
2階の「FUKU+RE(フクレ)」は、鹿児島県の郷土菓子である「ふくれ菓子」を地元に伝わる手法と素材を活かしながら、新しいスタイルの蒸菓子に発展させたお菓子を販売するお店。
同じく2階のギャラリー「レトロフトMuseo」。国内外問わず、若い作家が鹿児島を気軽に訪れて作品を発表できるように、簡単な宿泊スペースも併設している。
出会いが、レトロフトを作る「震災の後、鹿児島に戻って来る人がいたり、移住してくる人たちもいて、鹿児島の街もだいぶ変わりました。それまではアートも音楽もなかなか鹿児島まで届かなかったのですが、今では、行くところも増えて、鹿児島のカルチャーシーンが盛り上がっているのがわかります」と話してくれたのは、レトロフトオーナーの永井友美恵さん。
年代関係なく、人と人とが繋がり、新しいことが生まれる。レトロフトはその発信基地といえます。ですが、今後の展開はとくに決めていないとか。
「最初から明確なコンセプトを決めたり、こうしよう! と思って進んでいるのではなく、自分たちが楽しいことをしているだけです。予想がつかないのが、レトロフト。一番大事なのは、人との出会いだと思っています。これからの出会いが、より中身の濃いレトロフトをつくる、という予感がするんです」(永井さん)。
レトロフトに足を運んだ人や入居した人がそれぞれ得意とすることを発表し、人が人を呼んで、新しいムーブメントが生まれる。ここに来れば、いつでも面白いことに出会える――。「レトロフト千歳ビル」は、そんなパワーにあふれていました。