そのひとつひとつはどれも生き生きとしていて、まるで命が吹き込まれたよう。赤地さんは石に何を感じ、何を伝えようとしているのでしょうか。宝石好きになったきっかけから現在の活動にいたるまで、素敵なお話を伺いました。
世界を旅して見つけたもの
宝石が好きだった祖母からの影響が大きいですね。本棚には、宝石や鉱物の本が並んでいて、幼いときからよく眺めてました。祖母はもう亡くなってしまったのですが、節目の年にプレゼントされたジュエリーは今でも大切にしています。
大学卒業後はOLをしていたという赤地さん。やりがいのある仕事に就き、毎日が充実していたものの、大好きな宝石を生業にできないかと模索しはじめます。アメリカ留学という道を選んだのは、日本国内には宝石鑑定士などの国家資格が存在しておらず、欧米の資格が代用されていることを知ったからだそう。
より実践的な資格が身につけられる、アメリカの鑑定機関がおこなうGIA(Gemological Institute of America)というプログラムを受けることにしました。日本にも分校がありましたが、せっかくなら本場アメリカで宝石学を学びたいと、留学を決意しました。
宝石学とは、地球上にある4400種ほどある鉱物のうち、宝石と呼ばれる150種ほどの石を対象に鑑別し評価する学問のことです。宝石には天然石のほかに、人工でつくった合成石やイミテーションがあり、それらを科学的に分析して判別する方法を学びました。ダイヤモンドのグレーディング方法も勉強しました。
宝石を扱うデザイナーという枠におさまらず、旅をしながら石を集めるという、ともすると無謀とも思われそうな大胆なスタイル。そのきっかけになったのは夫婦での世界旅行だったといいます。
石はひとつひとつ違うから魅力的わたしが宝石の資格を取得し帰国した後、夫に世界旅行に誘われました。夫は映像作家で、世界中の人びとを記録して作品をつくりたいという夢が。わたしにも各地の宝石鉱山やマーケットなどを直接訪れたいという思いがあり、ふたりで旅をすることになりました。
勉強はしたものの、鉱山にツテがあるわけではありません。旅先ではとにかく街の人びとに情報を聞き回り、まるでドラクエのよう。臆せず行動していくことでなんとか次の道がひらけていきました。鉱山やマーケットのことはアメリカの学校でも学んではいたのですが、実際に行ってみて分かることがたくさんありました。
鉱山のオーナーや現地のディーラー達と実際に会うことで信頼関係も築くことができ、このときにつくったコネクションが今の商売にもつながっています。
bororoのアクセサリーの特徴は、ごろっとした原石の形を生かしたデザイン。それにはこんなエピソードが隠されていました。
旅の後半でスリランカへ行ったときに、旅をしながら買い集めた石をここで初めてカットに出しました。どんなに素敵になるかとワクワクしていたものの、カットされた石を見てがっかり。原石だったときに感じていた愛おしさや個性が感じられず、魅力が半減してしまったような気持ちになりました。
このときに、石はひとつひとつ違うからこそ魅力的なんだ、と改めて気づかされました。そのときから、原石のままでなんとか身につけられるようにデザインできないか、と考えはじめたことが、bororoで原石のジュエリーをつくるようになった原点です。
赤地さんにとって、天然石の魅力とはどんなところにあるのでしょうか。自分自身で旅をして石を見つけるということの面白さについてもお聞きしました。
地球の中で途方もない時間をかけてつくられた天然石は、ふたつとして同じものがなく個性溢れるところが魅力だと思います。宝石の学校では40倍の顕微鏡で石を観察するのですが、一見すると同じように見える石でも、顕微鏡で覗いてみると、まったく異なる世界が広がっています。石のなかに広がる時間の軌跡や、天然ならではの特徴を見つけると胸がときめきます。
どんなところで石が採れるのか興味があります。実際に行くことで、土壌の質や、その土地の石の色や形の特徴など、分かることもたくさんあります。鉱夫やディーラーや、買い付けにきている他国のバイヤー達との交流も楽しいです。bororoの活動の中で石を買い付けに行っているときがいちばんワクワクするところなので、旅をしながら石を集めることはずっと続けていきたいです。
石の魅力を伝えるための活動として、ワークショップも不定期におこなっているという赤地さん。一緒に商品作りをしている伝統工芸士の詫間宝石彫刻さんと共催し、原石を研磨してオリジナルアクセサリーを制作することができるそうです。
近く3月14日(土)にも伊勢丹新宿店で宝石研磨のワークショップが開催されます。
bororoの原石ストックの中から、お好きな石を選び、研磨して、アクセサリーを制作します。石の特徴や産地のことをお話しして、石のセレクトをお手伝いしています。磨くことで変わっていく石の表情の変化も楽しんでください。
[bororo]