「ある状態を良いととらえるか悪いとととらえるかは、すべて自分しだい」。オランダ・アムステルダムで活動する画家「Clementine Oomes」の作品は、そんな大切なことを思い起こさせてくれます。 ひとの弱い部分も優しく愛する作家

キャンバスに広がる不思議な静けさ。そして、その世界に溶けていくようにも解放されていくようにも見える人や動物の姿。Clementineは自らの作品で「誰にもある二面性と、それらが生む悩みや苦しみ、悲しみ。そしてそんなさまざまな感情を手放していくときの美しさ」を表現しているといいます。

それはまるで、彼女の心のなかを描いているよう。実際に会った彼女はとても明るくおおらかな印象ですが、キャンバスに映し出されるのは、心の奥にそっとたたずむ自らのデリケートな部分や静かな悲しみ。これらを美しく昇華させて描き出します。「例えば、つらく悲しいイメージのある『鬱』にも、実は美しさがある」と語る彼女には、自らの弱く繊細な部分をも「美しいもの」として、優しく愛する力があるのかもしれません。

良いことも悪いことも、捉え方しだい。Clementineの作品は、自分のさまざまな部分を受け入れ、肯定することの大切さを教えてくれます。

マイナスの出来事を乗り越えるちから

また、最近、彼女の絵には、工場の跡地のような人の気配が感じられない建物を描いた作品が見られるようになりました。

その理由をClementineはこう語ります。「動物の絵や女の子の絵は魂を持っているの。だから、私も気持ちが入り過ぎてしまう。もしもそんな絵の前をさっと通り過ぎてしまわれたり、何も感じてもらえなかったりしたら、作品のなかの彼女がとても悲しがるし、私もつらくなるわ。その点、魂のない建物はまた違った気持ちで描ける。こうすることで自分の気持ちを入れ替えているの」。

誰の生活の中にも失敗や悲しい出来事は当たり前のようにあって、落ち込むことは少なくありません。ですが、Clementineのように、自分なりの乗り越え方を見つけることも、誰にでもできるはずです。

「何度もマイナスな出来事に出会った」ことばかりに目を向けず、「何度もそれを乗り越えた」と考えてみると、マイナスの出来事もプラスに変わります。落ち込んで、立ち直って、前に進む。この繰り返しが、自分自身の価値になっていく。彼女の作品はそんなことも感じさせてくれます。

最近、北京や韓国でも展示会が増えている彼女。日本で展示会が開催される日も近いかもしれません。これからの活躍がとても楽しみなアーティストです。

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