おせち料理のルーツはとても古く、弥生時代までさかのぼります。農業を盛んにおこなっていた日本人は、季節の変わり目に収穫を感謝する「節句」という行事を行っていました。その中でも、お正月は最も特別なハレの日。「御節供(おせちく)」と呼んでいた供え物の料理を、いつしか「おせち」と略すようになりました。
お重に詰めるのは、めでたいことが「重なるように」との意味をこめて。最近では核家族化も影響し、お重も二段に省略する家庭が多いですが、本来は五段重もしくは四段重が正式なものと言われています。中身は地域や家風によって違いがあるものの、「黒豆・数の子・ごまめ(関西ではたたきごぼう)」は祝い肴三種と呼ばれ、おせちには欠かせない食材です。それに加え、焼き物や酢の物、煮物などを奇数分用意し、重に詰めていきます。
一の重の一例
(祝い肴)
・数の子 たくさん卵を産むので子孫繁栄を願って
・黒豆 まめまめしく勤勉に働く。黒の魔除けの意味もこめて
・ごまめ イワシは畑の肥料として使われていたことから、豊作を願って
・たたきごぼう 豊作のときに飛ぶと言われる鳥に似ていることから
(口取り)
・伊達巻き 巻物の形から、知識を増えるという願いをこめて
・栗金団(きんとん) 金の小判が増えるように
・昆布巻き 喜ぶにかけて、昆布料理を
・紅白かまぼこ 赤は魔除け、白は清浄を意味する
おせちを作る場合に気を配りたいのは、美しさや味だけでなく、日持ちの良さ。
黒豆を戻すのはおせち作りの中でも一番最初に取りかかる作業です。黒豆は煮ているときには手間暇のかかる料理ですが、なんども火をいれて瓶に詰めて密閉しておけば、冷蔵庫の中なら一年中でも持つ保存食になります。(略)逆に、いたみやすいいも類を含むきんとんや煮しめ等は、お重に詰め込むぎりぎり直前まで火をいれるので、最後の仕込みになります。
(『池波正太郎に届ける「おせち」』30ページより引用)
おせち料理は品数が多いだけでなく、どれも手間のかかるものばかり。今年はどうしようかと、つい尻込みもしたくなります。自分でつくったものでなくとも、家族で囲むおせちは日本人であることをしみじみと思い出させる行事。先祖から受け継いだ味と縁起をかみしめて、感謝しながら有り難くいただきたいものですね。
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