2年前に公開されたフランス映画『最強のふたり』は、フランス国民の3人に1人が鑑賞し、ハリウッドでのリメイクも決定している大ヒット作品。この監督と主演が再びタッグを組んだ作品『サンバ』が、12月26日(金)、ついに日本でも公開になります。
どんな状況でも明るいサンバ本作の主人公は、フランスに暮らす移民の青年サンバ。ビザの失効により、彼に国外退去命令がくだります。窮地に陥った彼が出会ったのは、大企業を休職し、移民を支援するボランティア団体で働く女性アリスや、陽気なブラジル移民ウィルソン。彼らはサンバを救おうと奮闘しますが、ある日、サンバの身に思いもよらない出来事が起こります。
©2014 SPLENDIDO - QUAD CINEMA / TEN FILMS / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / KOROKORO
はっきり言って、本作でのサンバの境遇は絶体絶命。それでも彼は、次々と新しいことに挑戦し、フランスで生きていこうとします。彼の「転んでもただでは起きない精神」と「どんなときにも失われないユーモア精神」は、周囲の人たちをも温かく前向きな気持ちにさせていきます。そんなサンバに興味を持ちはじめるアリス。移民と大企業のキャリアという、立場の違うふたりの関係の行方にも注目です。
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フランスの「今」を映し出す「生粋のパリジャン・パリジェンヌを見つけるのは難しいのでは......」と思うくらい、実は移民の多いパリ。本作には、テレビや雑誌で紹介されるようなおしゃれスポットではなく、実際に移民が多く暮らすエリアが登場します。独自のコミュニティを作り、切磋琢磨しながら暮らす移民たちが、実に生き生きと描き出されているのです。
観光ではなかなか訪れることのないエリアですが、そんな姿こそ、リアルなパリ。パリの中にある「プチ・アフリカ」や「プチ・アラブ」を垣間見ることができます。
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エンドロールのころには、元気になった自分に気づくアリス役を演じるのは、フランスを代表する女優シャルロット・ゲンズブール。最近では、ラース・フォン・トリアー監督作品などで少しエキセントリックなイメージもありますが、『サンバ』では、私たちのすぐそばにいそうな知的で繊細な女性を見事に演じています。
意外にも、「コメディは怖かった。アドリブでは観客を笑わせる自信がなかったの」という彼女ですが、これがまたはまり役。キレやすい燃え尽き症候群のキャリア役とあって、そのキレっぷりが、いつものシャルロットのイメージを覆します。
仕事に邁進するあまりにバランスを崩し、休職をしているアリス。その姿は私たちにも重なる部分がたくさんあります。「人生において、本当に大切なものって何だろう」。国籍も境遇も異なるさまざまな人たちの姿が、そんな本質的なことを思い出させてくれる作品です。
『最強のふたり』同様、涙あり、笑いありの『サンバ』。エンドロールが流れるころには、人生へのモチベーションが上がっていることに気がつくのではないでしょうか。1年のスタートを切る、お正月に観たい1本です。
[サンバ]
12月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ
出演:オマール・シー、シャルロット・ゲンズブール、タハール・ラヒムほか
配給:ギャガ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本