そんな細胞のような建築素材がある、といっても想像するのは難しいかもしれません。ご存じのように人間のカラダは、そのおよそ60~65パーセントが水だと言われています。「細胞のような」というのは、それが細胞のような袋状のもので、なかには水が入っていて、その袋同士がつながりあい、熱を交換しあって、建物をつくりあげることができるからです。
その名も、water block(水ブロック)。
部屋を温めたり、災害時の生活水にWater Branch House
MOMA Home Delivery Fabricating the Modern Dwelling
2008.7.20~2008.107.20 NY近代美術館
建築家の隈研吾さんが発案したこのブロックは、ポリエステル樹脂製で、直方体のふくろに水をいれて、それを積みかさねて使うそうです。ブロックだから、棚やベッドもできるし、もちろん家もつくることができます。積みかさねたブロック同士を「弁」でつなげば、水を循環させることができて、たとえば家だったら建物内部を温めることができます。
災害時であれば、その水の一部を飲料水や生活用水として使うこともできるでしょう。
人とともに生きていく建築そんな実用性もさることながら、わたしが惹かれたのはその美しさでした。積みかさねられた、半透明の水たち。その水たちが循環する壁。太陽光があたれば光を吸収してふくらみ、曇り空では少ししょんぼりしてみえるかもしれません。
呼吸をしているようにも見える家は、まさに生きもののようです。
実用的であり、美しい。
この水ブロックを眺めていたら、わたしたちが当たりまえに思っているこのからだが、いかに美しい仕組みで機能しているのか。そして建築というものが、「ともに生きていくもの」なのだ、と思うことができました。
[隈研吾建築都市設計事務所]
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