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富士山への旅。甲斐みのり「コンフォート雑貨のある暮らし」

2014/11/27 22:00 投稿

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私が生まれ育ったのは、富士山のお膝元・静岡県富士宮市です。子ども部屋の窓の向こうに、いつでも気高くそばだつ富士山は、日々の暮らしにあまりにあたりまえに馴染む景色のひとつでした。

甲斐みのり著『電車でめぐる富士山の旅~御殿場・富士宮・富士吉田・清水へ』(ウェッジ)表紙の写真は、地元・富士宮より。初宮参りから通い続ける、富士山本宮浅間大社の絵馬です。

天に近い富士山は、登れば険しく厳しい山です。古くから信仰の対象であった霊峰への登山は、聖地への参詣や修行にはじまり、行楽として登られるようになったのは、ごく最近のこと。登拝と遥拝、ふたつの歴史を抱く富士山は、日本だけでなく世界の宝ものに認められました。

富士吉田側の「富士山五合目」では、簡易郵便局で富士山の風景印を押してもらうことができます。

富士山は、姿をとらえ、近くに感じることで、静かに前に進む力を得られる不思議な山。私はいつしか、気持ちや体が重くなると、富士宮の実家へ帰省がてら、御殿場や富士吉田や清水を巡り、富士山の周辺を旅をするようになりました。

富士宮、御殿場、富士吉田は富士山の登山口があり、清水は古来より富士山を美しく望める地と知られる町。これら4つの町にはちょうど、身延線、御殿場線、富士急行、東海道線と、別々の鉄道が通っているため、駅を起点に富士山の旅の記録を記した本『電車でめぐる富士山の旅~御殿場・富士宮・富士吉田・清水へ』(ウェッジ)を11月20日に刊行しました。

河口湖近くで撮影した写真。晴れていれば、富士山アイスキャンディーの背景に、壮麗な富士山がそびえて見えます。

富士山駅や、河口湖駅で味わえる富士山ソフトクリーム。富士山周辺には、富士山をかたどった甘いものや食事がさまざまあるのです。

日本人の心のよりどころとして、畏敬を集めながらも優麗にそびえる富士山は、もとは海の底だった地で数十万年前に噴火がはじまり、火山灰や溶岩の堆積で山が形成されていきました。現在のような円錐形に至ったのはおよそ1万年前で、その後も噴火を繰り返し、ふたつの大きな湖がせき止められ、富士五湖や忍野八海が誕生しています。

旅の途中、工事現場で見たポールも、富士山の形をしていました。

神の怒りでおこるものと信じられていた噴火を鎮めるため麓に浅間神社が建てられ、平安時代末期に登山道が修行僧たちの修験道の場として開削されたり、江戸時代には富士山を信仰する集団「富士講」による登拝が普及したり、神が宿る山への崇拝や巡礼は、日本の伝統的な文化のひとつと言えるでしょう。さらに美しく末に広がる形姿は、万葉集の時代から歌に詠まれ、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵にも描かれ、幾多の芸術を生み出しています。

河口湖畔のクラシックホテル「富士レイクホテル」。創業当時は、モボ・モガが集う、憧れのホテルだったとか。

歴史や文化的価値を語るのに、山そのものとともに、周囲の神社や登山道、湖、洞穴、樹型、遺跡なども外すことができません。2013年に「信仰の対象と芸術の源泉」として登録された世界文化遺産も、静岡県と山梨県に散在する全25件の構成資産から成り立っています。

富士山の周辺には、歴史あるたてものがいろいろあり、一般公開されています。こちらは御殿場にある、秩父宮雍仁親王と勢津子妃の、富士山を見晴らす別邸。古い映画のワンシーンのような部屋。

おもしろいほど富士山が普段の暮らしにとけこんでいる、御殿場・富士宮・富士吉田・清水。食文化、日用品、あたりまえの町の景色、お菓子や雑貨類のおみやげと、富士山にまつわる歴史や意匠がそこかしこに。たとえば富士吉田名物「吉田のうどん」がつくられるようになったのも、富士山に関係しているのです。

冬は、富士山がもっとも美しく見える季節。登らず楽しむ富士山への旅は、実はこれからがふさわしい季節です。

『電車でめぐる富士山の旅~御殿場・富士宮・富士吉田・清水へ』では、富士山みやげのページも。こちらは富士山ハンカチ。

富士山みやげのページより。こちらは富士山マドレーヌ。

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