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これからの季節に読みたい『コーヒーの絵本』。甲斐みのり「コンフォート雑貨のある暮らし」

2014/10/30 22:00 投稿

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朝の窓から吹きこむとがった風。急きたてられるすばやい日暮れ。夏眠から目覚めた厚手の洋服に袖を通すとき。寒がりの猫がふとんにもぐりこんできたら。毎日のなにげない情景に、もうすぐそこまでやってきている、冬の足踏みを感じるようになりました。夏のあいだは休止していた、温かいコーヒーを飲む朝の習慣も、衣替えと同時に元通り。シュンシュンとポットからたちのぼる湯気が、1日のはじまりの合図です。

作・庄野雄治 絵・平澤まりこ『コーヒーの絵本』(ミルブックス)。カバーをめくると現れる、赤色の表紙も端麗。

家で飲むコーヒーを、ペーパードリップでいれるようになったのはここ数年。それ以前も道具は持っていたけれど、長らく眠らせたまま、味が安定するからとコーヒーメーカーを常用。(いまでも忙しい日は、機械にお世話になっていますが)それが、徳島でコーヒー焙煎所「aalto coffee(アアルトコーヒー)」を営むコーヒー焙煎人・庄野雄治さんのコーヒー教室に参加したのをきっかけに、家ではできるだけ自分の手でコーヒーをいれるようになりました。

庄野さんは、鎌倉の「café vivement dimanche(カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ)」店主・堀内隆志さんとの共著で『はじめてのコーヒー』(ミルブックス)という本も出されています。

「おいしいコーヒーってなに?」庄野さんのコーヒー教室は、そんな問いからはじまりました。コーヒーだけでなく、ワインやチョコレートや食全般、専門家やマニアによって「おいしい」の定義がさまざまな分析や統計で語られています。

けれども、庄野さんの答えはごくシンプル。「おいしいコーヒーは、自分好みのコーヒー」。自分がどんなコーヒーが好きか知ること。それこそおいしいに近づく1歩目だと気がついたとき、目からウロコが落ちました。何度かコーヒー専門書を開いては挫折して、自分でコーヒーをいれるのをあきらめてしまっていたので。

文に添えられているのは、黒と赤の2色だけのシンプルな絵。分かりやすくするすると、庄野さんの言葉が身に付く感覚を得られます。

コーヒー豆の焙煎度合、ストレートかブレンドか、豆の挽き具合。コーヒー教室の中盤では、ちょっとした違いで変わる風味と自分の嗜好を重ねあわせ、「私のおいしいコーヒー」を紐解く作業。「じっくり慎重派」か、「せっかち」か、自分の性格に合わせて選ぶ道具選びの話しにも納得。せっかちな私には、ペーパードリップのフィルターは台形のひとつ穴が向いているとわかったので。そして最後に、実践という流れ。

私の好きなページのひとつ。家で、店で、外で。コーヒーは味わう場所ひとつでも違って感じるから不思議。

難しい言葉や厳しい縛りは一切なく、楽しく心地よくコーヒーをいれて味わう、愛おしい時間にあらためて気がつかせてくれた庄野さん。

先日、『コーヒーの絵本』というコーヒー初心者のための本を上梓されたので、庄野さんの教えにならってハンドドリップしたコーヒーを片手に、ページをめくりはじめました。「おいしいコーヒーのいれ方がよくわかる 世界でいちばんやさしいコーヒーの絵本」と帯文にあったけれど、本に書かれていたことは、庄野さんのコーヒー教室そのもの。あのとき聞いた話しの全てが、1冊にぎゅっと詰まっていました。

この秋にオープンした「aalto coffe」の新店舗「14g」。aalto coffeは自家焙煎コーヒー豆の販売のみですが、14gではコーヒーとパンとワインが店内で味わえます。14g×『コーヒーの絵本』のコラボレーション・コーヒー豆の保存缶。豆が200g入るサイズで、1000円+税。14g、アアルトコーヒー、恵文社一乗寺店で12月上旬から100個限定で発売予定。

庄野さんの言葉や思いが、シンプルな線でくっきりと表された平澤まりこさんの絵も、繰り返し読みたくなる理由のひとつ。絵本というと、まず子どものための本を想像してしまうけれど、『コーヒーの絵本』は、普段なにげなくコーヒーを口にするおとなも、コーヒーの味わいに気持ちを傾けはじめた少年少女も、ともに楽しめる1冊。

コーヒーの温かさがじんわり体に沁みいる秋から冬にかけての贈りものとしてもおすすめです。 

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