見知らぬ他人どうしが、ひとつ屋根の下で暮らすことによって家族になっていく。

そんなテーマの物語は、映画でもドラマでも見たことがあります。『砂漠のわが家』(美奈子アルケトビ著)もそんな、血のつながりの無い者たちがともに暮らすことを描いたフォトエッセイです。ただし、場所はアラブ首長国連邦(UAE)の内陸にある砂漠。そこで暮らすのは日本人女性と、彼女の夫のUAE人男性、ガゼル、ラクダ、ハト、馬、猫、犬、ウサギ......。

大事なことは、言葉がなくてもわかりあえる

「動物を飼わずに気ままに暮らそう」と決めて結婚生活を始めた著者は、ひょんなことから産まれたばかりのガゼルを育てることになり、怪我をしたハトを拾い、猫が産まれ......と、いつのまにか家族が増えていきます。

人と動物も、動物どうしも最初は戸惑うばかり。でも、ともに暮らすことで少しずつ相手の気持ちを発見していきます。

同じ言葉はもたないけれど、大事なことは、わかりあえます。

(『砂漠のわが家』P13より引用)

厳しいばかりに見える砂漠にも花は咲き虫は生き、互いが必要なことがわかってきます。

何もないように見える砂漠にも、たくさんの命が、たくましく、忙しく、生きています。

(『砂漠のわが家』P36より引用)

ときに家族の一部が去っても、また新しい命を迎えて家族の歴史がつむがれていきます。

毎朝たくさん足跡を残し、夕方に吹く風が、それをまた風紋に変えていきます。

(『砂漠のわが家』P38より引用)

共通の言葉をもたない異種どうしが暮らす「わが家」を見ていると、家族というものがいかに「思い」で繋がり合っているかを感じさせられます。

また、砂漠という風景と一体になったかのような動物たちの写真は、大地と動物、そして人が寄り添って生きることの当たり前さを教えてくれるようです。

[砂漠のわが家]

girl with the Sun via Shutterstock

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