曹洞宗の僧であり臨床心理士でもある吉村 昇洋さんの著書『心が疲れたらお粥を食べなさい』では、曹洞宗の宗祖である道元禅師の記された『興座教訓』の三心という考え方を教えてくれています。
三心とは「喜心」「老心」「大心」のことです。
「喜心」とは、他人の利益のために尽くし、その人が苦を離れて楽を得るのを見て、己の喜びとする心。「老心」とは、我が身を顧みず、深い慈しみから親身になって他者に関わる心。「大心」とは、山のようにどっしりと構え、海のように広々とさせて、いっぽうに偏ったり固執したりすることのない心を指します。
損得で生きると心が疲れる料理を作る側の心構えとして書かれた、この三心。ですが料理を作るときだけでなく、生きかたとしても参考になります。
たとえば喜心は、心を込めてつくった料理を相手が喜んで食べてくれるのを見ると、こちらも嬉しくなるといったことです。老心は、見返りを期待しない姿勢のことですから、電車で誰かに席を譲る行為もそのひとつかもしれません。そして大心は、惑わされたり色眼鏡で物ごとを判断しないという姿勢ですから、相手の地位によって態度を変えないとか、また周りが見えない状態のときこそ一歩退いて、大きな視点で考えてみるということになります。
これらをほんのすこし意識して行動するだけで、その瞬間は損得を忘れている自分に気づきます。そして「損得で生きると心が疲れるのだな」ということが、しみじみわかりました。
[心が疲れたらお粥を食べなさい。 豊かに食べ、丁寧に生きる禅の教え]
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