アメリカはピッツバーグ、ダウンタウン。ここに「コンフリクト・キッチン」と呼ばれるテイクアウト専門のレストランがあります。このレストランは現在「アフガニスタン・デー」と題してアフガン料理を出しています。
いちばんの人気メニューはライスの上にラム肉の炒め物をのせ、その上にキャラメリゼしてある甘いニンジンサラダと、トッピングとしてレーズンとナッツがかかったもの。しかしこれだけではなく、このレストランのメニューはそれ以外にもとてもバラエティーに富んでおり、ときに北朝鮮料理、またあるときにはキューバ、イラン、ベネズエラなどとその姿・コンセプト・料理内容を変えていくところが非常にユニークな点。
このレストランは「コンフリクト(紛争)」地域の料理を出すことで、人びとがその国の文化・歴史・政治などに興味を持つことを願って出されたレストランなのです。
紛争地の郷土料理を食べるここでテイクアウトをすると、料理の入った包装紙がその国の詳細な情報、例えば現在の政や女性の権利について書かれた冊子となっています。おいしい料理をきっかけに、政治や文化のことについて誰かと話すことができる、非常に優れたアイディアです。
通常ならば、行ったことのない国の文化について、また政治などの重いテーマについて語ることは心苦しく、タブーとまでされがち。しかし料理の力は偉大で、人は新しい料理を試すことに興味を持ちながら、いつの間にかその国についてもっと知りたいと思うのです。これがまさに、レストランのオーナーであるジョン・ルビンさんの狙いなのです。
味はオリジナルに近づけて彼自身、その土地の家庭料理をオリジナルに近い形で出すのがこだわり。そのために自ら足をはこび、現地で、昔からの伝統料理・家庭料理を習いに行っているといいます。ただ北朝鮮にだけはまだ行けておらず、韓国を旅した際に受けたインスピレーションをもとに、その経験と現地料理をアレンジしたものを「北朝鮮料理」としてレストランで出しているのだそうです。
現在、ピッツバーグにはアフガニスタン出身の家族はわずか5世帯しかないそうですが、そのひとり、タミナさんはこのレストランによく利用しているそうで、彼女の母親の味とまったく同じだと太鼓判を押します(ちなみに料理を作っているのはすべてアメリカ人シェフたちです)。
また、加えてこう言いました。
アフガニスタンというと、皆がテロリストのようにみられがち。特に9月11日のテロ攻撃の後はそう。でも私の国だって本当はどんどんといい方向へ変わってきているの。だから料理を通じて、皆が先入観を捨て、少しでも興味を持ってくれたらうれしいの。
紛争を解決する第一歩は、その地域への関心を持つことかもしれません。
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