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金継ぎで修繕。甲斐みのり「コンフォート雑貨のある暮らし」

2014/09/04 22:00 投稿

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金継ぎしてもらった「都をどり」の皿。こちらは裏側。

カチャン。空気をぴりりと震わす甲高い音を耳にするたび、激しく胸が痛む。ほんの一瞬前の自分の不注意が悔やまれ、体の底から深いため息がこぼれる。

月に1度、食器棚から食器を取り出し、ほこり落としをしている。季節の変わり目はとりわけ念入りで、夏はガラスのものを、秋には木製をというふうに、よく使う器の置き場所を取り出しやすいように入れ替える。そんなふうに、がちゃがちゃ器を出し入れする中、手をすべらせたのは1度や2度では済まない。その都度、陶磁器用の強力接着剤でそーっと割れ目をつなぐ。遠目から見たら元の姿に戻ったようでも、自分ではその皿や碗を手に取るたび、うっすら浮かぶ割れ跡が気になり、次第にその器を遠ざけてしまう。

またやってしまった。大事にしていた、京都の「都をどり」のお皿を。落ち込むあまり台所にぺたんとうずくまり、しばらく動けず途方に暮れた。こればかりは自らの手による接着剤の緊急措置でなく、きちんと直したい。そこで、器に詳しい知人に相談してみることに。

「都をどり」の皿の表側。金の線も趣ある風景に。

西荻窪の「FALL」は、作家ものの道具や、国内外の雑貨、音楽家たちのCD、書籍やアンティークなどを扱う店。週がわりで自主企画の展示会を催すギャラリーでもある。砥部焼の産地・愛媛生まれの店主の三品さんは、焼きものに造詣が深いので、なにかと知りたいことを教えてもらっていた。

西荻窪の「FALL」。九谷焼の猪口をひきとりに伺うと、ちょうど「石川県立九谷焼技術研修所」で作陶を学んだ菊川ゆうこさんの陶展が開催中でした。

小さなアクセサリーから、暮らしの器まで並ぶ「FALL」。宝探しをするように、店の隅々までじっくりと目で追い触れて、買いものを楽しみます。

かけてしまった皿を持って店を訪ねると、金継ぎでの修繕を受け付けてもらえることに。どんなも器でも受け付けているわけでなく、店で買ってもらった器や常連さんに限っているとのことだった。急ぎではないので、のんびりでいいですと器を預けた。それから1月ほどたって、金色のつなぎ目の入った皿が、我が家へと帰ってきた。

九谷焼のそば猪口。こちらも大事にしていたものだったので、再び修繕をお願いしました。こちらは銀継ぎ。

金継ぎは、欠けり割れた陶磁器を、漆で接着する日本独自の器の修理法。金や銀の粉を蒔いた継ぎ目は、破損前と異なる「景色」として楽しめる。新たに加わった金の線。木の年輪のように時の経過の表れだと思うと、ぐっと愛着が増す。

割ってしまった器。求めた店に相談する以外、インターネットで金継ぎの専門家も探せるので、諦めず修繕を続けていこう。季節は夏から秋へと移り、また器の衣替えをおこなう時期。なによりまずは、手からすべり落とさぬように、ぐっと気を引き締めなければ。

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