前回、我が家で飼育した蝶の事を書きましたが、今回はその後の話です。
娘が描いた絵の中にあるヒントは、葉っぱにあります。よーく見ると葉の中に丸いものがありますが、実はその後、羽化した蝶が産卵をしたのでした。そして、また今度は卵から飼育する事になったのです。
蝶がちょうど羽化した週は雨続きだったので、数日、晴れる日までケージで飼育していたのですが、その時に蝶が後尾らしき事をしているのを発見したのです。調べてみると、羽化した翌日から後尾可能で、産卵はその数日後だという事が分かったのです。そして蝶は、その幼虫が餌にする植物にしか産卵をしないのだそう。
ヒメアカタテハはヨモギやゴボウなどのキク科を食用にするらしいのですが、ちょうど昨年、庭にヨモギの種を蒔いて育てていたのでケージの中に入れてみました。すると、蝶はさっそくそのヨモギに産卵したのです! 調べた時に、蝶を産卵させるのは結構難しそうだったので、こんなに簡単にいって驚きました。
娘の幼稚園の先生にその話をしたところ、毎年同じキットを使って蝶を飼っているけれども、一度もそんな経験はないと驚かれたのです。
本当に偶然というかタイミングがちょうど良かったのかもしれません。
その卵は1ミリにも満たないほどの大きさで、薄いグリーンに白い縦縞が入っていて、まるで宝石のように美しいと思いました。人間が創り出す美の源は、こういうところからきているのではないかと感じます。
そして数日後、そのきれいな卵から小さな小さな幼虫達が生まれてきたのでした。
これには娘も私も再び感動です。そのベイビー達は毎日、すごい食欲でヨモギを食べるので、あっという間に庭のヨモギはなくなってしまいそう。そこで同じキク科というレタスを与えてみましたが、あまり食べてくれません。さてどうしようかと考えながら道を歩いると、道脇にヨモギのような雑草が生えているではありませんか。
ちぎって香りを嗅いでみると、それはやはりヨモギそのものです。そこで家に帰り、その草を与えてみると、レタスをそっちのけで再びモグモグと元気にそれを食べだしたのでした。それ以来、道ばたや公園などをよく見ていると、NYのいたるところにヨモギが生えているのが分かりました。もう餌は安心です。
そうして無事に幼虫達は立派に成長し、そしてサナギになって、1週間後にまた美しい蝶へと変身したのでした。実はこの蝶がサナギになった頃、娘が偶然、窓際で育てているディルに付いた青虫を発見したのです。
どうやらそれはまた違う、キアゲハという種類の蝶でした。私は窓際からその成長を見届けようと思っていたのですが、ある日その青虫が植木鉢の下に落ちているのを見つけたのをきっかけに、また家で飼うことになったのです。
この蝶の飼育もとても興味深くて、サナギがカメレオンのように環境に合わせて擬態化するなど、話は沢山出来る感じなのですが、またそれはいつか機会があったらお話しますね。
そんなことを繰り返しているうちに、娘と私は蝶の生育にいつのまにかとても詳しくなってしまいました。夫は、ある日私がサラダを作っていると思ったら、蝶の幼虫の世話だったと友人に話して笑っています。このまま蝶のブリーダーになったら面白いんじゃないかとか......。
私自身、まさかこんなに本格的なことになるとは思わず、まるでちょっとした研究をしたような達成感で、しばらく蝶の飼育はいいかなと思っていますが、いつか娘がこの経験を忘れた頃にもし機会があったら、また育ててみたいなと思っています。
本当に素晴らしい経験でした。生命の不思議や食物連鎖など、いつも本で読んだりしていた事を体感出来たように思います。
今日そんな事を考えながらふと夕方の庭を見ると、薄暗い草間から小さな黄色い光がふわふわと飛んでいました。大都会のNYは今、静かな蛍の季節です。