茶畑に囲まれたのどかな環境に作業場がある茶箱の製造工場に見学に行ってきました。
その茶葉用の木箱と再会したのはある古道具店。何十年前の大きめのものが、衣装ケースとして売られていたのです。迷わず家に持ち帰り、道具入れに。さらに新しいのを静岡から取り寄せて、台所で食材入れとして使っています。
工場の外には、古い木箱が山積みに。
茶処・静岡には、茶葉を保管するための木箱を作る職人さんがもともと大勢いましたが、今は数えるまでに減っています。国産の杉の木を切るところから全行程を手作業でおこなうため、手間がかかり量産できず、なかなか技術を受け継ぐ人がいないのが現実なのだそう。
茶箱は、杉材を何枚か組み合わせて一枚の面になるため、組み合わせた部分に生じるわずかな隙間や節目に、クラフト紙(目張り)を貼って保護しています。
プラスチックケースなどない時代、茶葉を湿気から守りお茶屋さんを支えてきた、人の手のぬくもりを感じる木箱。もともと業務用茶葉の輸送や保管に使われてきたので、とても丈夫。今も百年以上前の茶箱が残っていたり、現役で使用している店があるように、大切に扱えば何十年と長い年月、愛用できます。
甲斐みのり著『衣・食・住 暮らしの雑貨帖~ずっと愛したい、わたしのお気に入り』(マイナビ)でも紹介している茶箱。台所で、食材入れとして使っています。(写真:加藤新作『衣・食・住 暮らしの雑貨帖~ずっと愛したい、わたしのお気に入り』より)
内張りに亜鉛鉄板を隙間なく貼り、外部から湿気や臭いが侵入するのを防ぐため、お茶・コーヒー豆・お米・お菓子・乾物全般など湿気を嫌う食料品はもちろんのこと、写真フィルム・CD・文庫本など、ちょっとした雑貨類や大切なものを収納しておくのにも便利。
最初は自然の木肌そのものの色ですが、使い込むうちだんだんと、趣ある深い色合いに変化していきます。
フェリシモ「チケッティ×甲斐みのり 日本のふるさと工芸マルクト」で監修して作った、オリジナルサイズの卓上茶箱。
CDが18~19枚程度、収納できます。もちろん、茶葉・米・乾物などちょっとした食材を保管するのにも。
そんな茶箱。通常仕様のCDが18~19枚程度入るオリジナルサイズのものを「日本のふるさと工芸マルクト」という企画で作りました。茶箱のラベルは昔から、銘柄や商店名など一目で分かるように、浮世絵の技術を用いた木版刷りなど凝ったデザインが多くありました。普通に家庭で使いやすいように、シンプルにお茶色の富士山を描いています。
おそらく家の近所のお茶屋さんでも、意識してみると茶箱が並んでいることが多いので、店内をくるりと見回してみてください。
一般の家具などと違って無垢の杉材を塗装せずそのまま使っているので、ひっかきキズや角のカケなどあるけれど、それも手作りの味のひとつ。